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Case Study 駒澤大学

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実際に大学が実践している障害のある学生支援の事例を紹介します。私立大学の中でも、早い段階から障害学生支援に取り組み、学生によるピアサポーターも活躍する駒澤大学。
同大学で障害学生支援の窓口である学生支援センターに、具体的に行っている支援内容や、合意形成のプロセス、今後の課題についてのお話を伺いました。

写真提供:駒澤大学 
編集:プレジデント社

お話を伺った方
駒澤大学 学生支援センター 学生支援相談課

※「合意形成」が大前提性

本学ではこれまでに聴覚障害や視覚障害、肢体不自由、発達・精神障害の学生を受け入れており、2023年度は過去最多となる47名の障害のある学生が支援を受けています。
障害ごとに支援内容は変わりますが、原則はほかの学生と同等の体験を提供するために、不足する部分をサポートする「合理的配慮」という考え方。ほかの学生と同じ場所で授業を受けますが、視覚障害があり小さな文字が読みづらい学生には文字サイズを拡大した資料を用意し、全盲の学生には、点字に変換した資料を渡せるよう点字プリンターを導入したこともあります。
身体に関わる障害は、必要とされる支援が比較的わかりやすいのですが、発達・精神障害は、事前にその人の症状を周りに理解してもらうことが基本です。そして、困りごととコミュニケーションなどについてフォローします。その中でも典型的な症状については、対処法をあらかじめ教員にお伝えし、対応をお願いしています。
障害学生支援の前提として、学生が求める支援と、サポートの主体となる教員が提供できるものを一致させるための「合意形成」があります。学生本人から支援を求める申し出があったら、障害学生支援コーディネーターが面談し、状況の聞き取りを行います。支援が必要だとなれば、学部長や学科主任を含めた面談で、どういった支援を要するかを話し合う。その後、「障がい学生支援委員会」の承認を経て、具体的な支援内容が書かれた支援決定通知書を各科目の教員にお渡しし、それに沿った支援をお願いしています。

※ 学生ピアサポーターも活躍

教員による支援だけではなく、在学生による、登録制で有償のピアサポーター制度も実施しています。現在約110名が登録しており、主な活動は、聴覚障害がある学生向けの「PCノートテイク」。2人のピアサポーターがペアになり聴覚障害学生とともに授業に出席し、講義内容をリアルタイムで伝えます。講義だけでなく、チャイムなどすべての音情報を文字に起こすことで、ほかの学生と同等の情報が得られるようにすること(情報保障)が目的です。機械による音声認識を使えばいいのではと思われがちですが、指示語や専門用語を正しく認識することは難しく、文意をわかりやすく伝えるには、ノートテイカーの協力が不可欠です。
実際にサポートを受けた学生からは、講義の聞き漏らしがないことに大変満足しているといった声が届いています。ピアサポーターの学生からも、「多様性を学ぶきっかけになった」「タイピングスキルの向上にもつながった」とポジティブな意見が寄せられました。

BILANC33Case Study 駒澤大学
ピアサポーターに応募した学生向けの説明会。ノートテイクの体験会も実施している。

※ 支援のクオリティを維持

障害学生支援に、限られた人的リソースをどう配分していくかが今後の課題です。近年、発達・精神障害のある受験生は目立って増えています。カウンセリングで支障を一つひとつ拾い上げ、日常的に細かくサポートすることが必要となるため、支援に人と時間を要するのが事実です。さきほど紹介したピアサポーター110名でも、現在4名の聴覚障害学生に対して、ぎりぎりでまわっている状態。さらに支援を求める学生が増えた場合のことを考え、アプリや機械を併用することも検討しているところです。
障害学生支援の基本的な考え方は「学びの本質を変えない」こと。本質を変えずに障害に応じて具体的な支援を提供することが必要であり、かつ、そのクオリティを維持することも必要です。そのためにどんな工夫ができるのかが、次の大きな課題だと認識しています。

BILANC33Case Study 駒澤大学
入学式などの学校行事では、聴覚障害がある学生に、ピアサポーターが音声情報をパソコンで提供する。

ワンポイント復習講座
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