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ラジオDJ流、相手を乗せる「接し方」

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構成:田之上 信 
編集:プレジデント社

「ファースト・アイコンタクト」で、お互いの傾聴態勢が整えられる

BILANC28「「傾聴」大全」秀島先生 ラジオDJ
秀島 史香氏(ひでしま・ふみか)
慶応義塾大学在学中にラジオDJデビュー。現在のレギュラー番組は、FMヨコハマ『SHONAN by the Sea』、JFN系列局『Pleaseテルミー!マニアックさん。いらっしゃ~い!』、NHK Eテレ『高校講座 現代の国語』など。ニッポン放送『文豪ROCK!~眠らせない読み聴かせ 宮沢賢治編』で令和元年度(第74回)文化庁芸術祭ラジオ部門・放送個人賞受賞。近著『なぜか聴きたくなる人の話し方』(朝日新聞出版)。

~緊張をほぐすことが傾聴の第一歩

ラジオ番組では、ゲストをお迎えしてトークすることが多くあります。私がラジオDJ駆け出しのころから心がけてきたのは、ゲストの方にリラックスして話していただける空気をつくること。ラジオ局というアウェーな場所では、誰でも少なからず緊張してしまうと思ったからです。
相手の緊張をほぐし、「歓迎されているな」「この人となら楽しく話ができそうだな」とゲストに思ってもらえるかが重要です。そのため私の傾聴は、相手が話し始める前の「ファースト・アイコンタクト」の瞬間を大切にしています。
自分の顔って、意外に強ばっているものです。気分をほぐして、目と目が合った時に、にっこりと「笑顔」を見せる。相手に対してきちんと向き合い、「あなたとお話がしたい」という気持ちを、言葉だけではなく態度で伝える。それが、私のファースト・アイコンタクトです。態度が伴わなくては、人は信頼を寄せてくれないと、私は常に思っています。
逆に、目も合わせず、形だけ「こんにちは」とあいさつされても、寂しいですよね。意識して笑顔をつくるのは、相手への敬意から。それに、自分の気持ちをほぐす意味もあります。身につけると役に立つ習慣だと思います。
ゲストの方のファースト・アイコンタクトが素晴らしいと、私もスムーズに傾聴態勢に入ることができます。いわゆる“大物”といわれるキャリアの長い方ほど、その傾向にあります。相手を緊張させるだろうなという意識が、より強いのだと思います。
強く印象に残っているおひとりが矢沢永吉さんです。とてもジェントルマンで、番組のスタッフ側はみな緊張して直立不動といった感じでしたが、「よろしくね~」「何でも聞いてくださいね~」と、気さくな雰囲気で接してくださり、感激しました。まず自分から柔らかく話しかけることは、大人としてのたしなみなのかもしれません。それができる人は素敵ですよね。

~「間」を詰めすぎると相手は話しにくくなる

職場でも同じではないでしょうか。いつも笑顔というのは難しいかもしれませんが、自分で意識して、話の取っ掛かりだとか、ちょっとくだけた雑談などを一つ二つあいさつに盛り込むと、相手の表情や態度はずいぶん違ってくると思います。それができれば、その後の傾聴もうまくいくことでしょう。
ひと言目としておすすめなのが、汎用性の高い季節の話題。「おはよう」というだけでなく、「朝から真夏みたいな暑さだね、半袖で正解だったよ」といったひと言があると、お互いの表情も緩みます。相手も「ほんと疲れちゃいますね~」といった感じで、何かしら会話のきっかけになりますよ。私自身、そんな相手のほうが話しやすく感じますし、そういう人の周りには人が集まってきます。
たとえば上司の方が部下や若手社員から話を聞き出したいとき。相手は緊張しているでしょうから、上から目線にならず、かといって媚びるわけでもなく、同じような立場から、フラットな形で声をかけると、相手も話しやすくなると思います。
「ファースト・アイコンタクト」「くだけた雑談」と並んで、私が傾聴で意識しているのが「間」です。ラジオDJのあるあるですが、私の質問に対して、ゲストの方が少し考え込んでしまうと、間が不安になることがあります。変な質問をしたかなとか、わかりにくい質問だったかなと、こちらが不安になるのです。そして、よかれと思って説明を付け足したりすると、相手の声とかぶってしまったりします。相手を尊重して話を遮らず、聴ききることが大事です。

BILANC28「「傾聴」大全」秀島先生

これは逆もしかりで、何でも即答すればいいというものではないと思っています。自分の質問に対し「そうですね」と即答されると、「本当にそう思っているのかな」と不安になったりしませんか? 急かされていると感じるかもしれません。時間感覚はみな違うので、前のめりになりすぎず、しっかり聴いて、一拍うなずくくらいの1、2秒があるといいでしょうね。
実際ラジオ番組で、自分の中でちょっと間が空きすぎたな、変な間だったなと思っても、あとで聞き直すと、むしろ「いい間だな」と感じることが多いものです。話している最中は「この会話をきちんと回さなくちゃ」と精一杯になりますが、客観視すると、少しの間は気にならず、むしろ会話のリズムを整えてくれる効果があるように感じます。

長い話は、相手の息継ぎのタイミングで「なるほど!」とカットイン

~長い話は息継ぎのタイミングで軌道修正

傾聴では、「自分の聞きたいことがきちんと伝わっていない」「相手の発言がズレている」と感じることもあるでしょう。そんなときは、こちらの指示が不明確だった可能性を、まず疑ってみましょう。「何で理解してくれないんだろう」と思わず、「うまく伝わらなかったかな」というように、謙虚に受け止めたいものです。
「聞く」というのは、ある意味とても簡単なことです。でも楽をしないで、「あなたの意見を聴きたいのです」といった思いを伝えるようにしていきましょう(図表②参照)。

BILANC28「「傾聴」大全」秀島先生

「いちいち言わなくてもわかるだろう」と思うのも間違いです。以心伝心とは都合のいい言葉で、そんなことは起きないというのが私の考え。声に出して話さない限り、相手がこちらの心理や願望をくみ取ってはくれないと思っています。
また、相手の話が長かったり、本題からズレたりしたときにどう中断させるかは、難しい問題です。ラジオの収録中にも、よくあることです。そんな時は、相手が息継ぎをするタイミングで「なるほど!」と入っていき、「大変わかりやすいお話なんですけど……」「そういえば……」と、やんわり軌道修正をすることがあります。
職場で上司がとうとうと話しているケースであれば、「なるほど!」とうなずきながら、「そういえば一つ思い出しました!」といった感じで入っていくのも手ではないでしょうか。「中断するのは失礼だろう」と思って、うんうん、はいはい、とうなずいているだけでは、いつまで経っても話が終わらず、仕事もはかどりません。
相手に気持ちよく話してもらうためには、こちらの態度、姿勢が大切になります。まずは「笑顔」から。ぜひ実践してみてください。

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