広報活動

無口&説明下手は「対話」で制御!

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構成:田之上 信 
撮影:石橋素幸 
編集:プレジデント社

「聴く」が疎かだと、対話はドッジボールになってしまう

BILANC28「「傾聴」大全」辻口先生 コミュニケーション・コンサルタント
辻口 寛一氏(つじぐち・ひろかず)
クロスロード株式会社代表取締役。立教大学卒業後、日本旅行、リクルート、大和証券グループを経て独立。2008年より、多様化・複雑化・グローバル化の時代に求められるビジネスコミュニケーション(対話)のあり方と方法論について研究。その成果は、自ら主宰する「対話力強化講座」にて提供している。

~「話す」から「聴く」、そして「対話」の時代へ

コミュニケーションの基本となる「対話」。よく「対話はキャッチボール」と言われますが、現実には「ドッジボールのような対話」がほとんどです。ビジネスでもみな「伝える」ことには一生懸命ですが、「聴く」ことはあまり意識していない。これではうまくいきません。
まずは「聴く」ことについての誤解を解いておきたいと思います。「聴く」は一見、「伝える」に比べて受動的に感じますが、実は多くの効果が得られる行為です。そう考えると、ただ「受け身」でいるのとは違うように思えます。
聴く際には、相手の話に丁寧に耳を傾けることで好意をもたれるし、質問にも聞く耳をもってもらうことができます。今の時代、こうした配慮が非常に重要になってきているのですが、ここで大まかに歴史を振り返ってみましょう。
昭和は「話す時代」でした。マスメディアの影響が強く、価値観は今ほど多様ではなかったため、基本的な話し方に気をつけていれば、あとは熱意を示すとか、接待や飲みニケーションで仲良くなれば何とかなったのです。
平成の30年間は、インターネットの発達で情報ソースが増えたことなどもあり、人の考え方や価値観が多様化しました。ビジネスコミュニケーションでは、相手のことをよく理解しないといけないので、「聴く時代」になったといえるでしょう。質問力やコーチング、傾聴力、カウンセリングなどが盛んに取り上げられるようになったのも、平成になってからです。
では、令和はどんな時代なのか。私は、「対話の時代」だと考えています。ジェンダー問題をはじめ、平成よりもさらに多様性が重視される時代になりました。したがって、「聴く力」がこれまで以上に大事になっているのです。

~相手が無口なほど「対話」が効果的

私の研修で最も多い質問が、「無口な人や気難しい人に、どうすればうまく話してもらえますか」というものです。
大前提として、人には多かれ少なかれ、「自分の考えや思いを他人にわかってもらいたい」という欲求があります。これは、無口な人や気難しい人でも同じ。そうした人に話してもらうには、正面で向き合うのではなく、肩を並べるようにして聴く姿勢が大事になります。相手がどういう風景を見ているのか、何を求めているのか、肩を並べて理解しようとすると、相手は親近感や信頼感を抱き、話しやすくなるのです。
職場では上下関係があるので、肩を並べるのは難しいと思いますが、だからこそ意識して行うことが大事です。もしもあなたが部下や後輩に向き合うなら、相手を下に見てはいけません。「これくらいの若さで世の中に接しながら、どんな思いを抱いているのかな」と想像しながら接すれば、心を開いてくれるはずです。
仮にあなたが上司や先輩に向き合うのなら、「上司の指示だから」と何も考えずに従うよりも、どんな背景でこの指示が出されているのか、上司の立場になって考えることが大切です。この対話によって、説明不足や説明下手によるトラブル、コミュニケーション・エラーを防ぐことができます。
このように「対話」では肩を並べるようにして話し合うことが大切になりますが、それに加えて、「対話とは言葉のやり取りを回していくこと」という点にも注意しましょう。その手順はこうです。
まず、相手に働きかけます。問いかけをすることで、相手の考えを述べてもらうのです。それを踏まえ、こちらからまた話をして、相手がどう受け取ったかを聞き出す。違和感があったら指摘をして、修正案を出してもらう。このやり取りを何回も回すと、次第に齟齬がなくなっていきます(図表①参照)。

BILANC28「「傾聴」大全」辻口先生

たった一度のやり取りで理解することはできません。相手の話を聴く時も同じです。1回ですべてを理解するのは難しいのです。

対話は1往復で終わらない。何度も回してこそ、相手の本質に気づく

~入念な事前準備が説明下手を制する

「無口」と並んで多くの人を悩ませるのが「説明下手」。私は、説明がうまくできない人には、大きく三つの特徴があると考えています。
一つが、相手の視点に立てていない。聞き手が何を求めているのか理解できていないため、本題からかけ離れた説明を長々としてしまうのです。
二つ目が、具体・抽象のいずれかにかたよっている。中でも、具体的な説明に終始して聞き手を困惑させるケースが多いように思います。「抽象から具体へ」が、説明のセオリーです。
そして三つ目が、思い出しながら話す。時系列も因果関係もバラバラになってしまうため、聞き手はとても疲弊します。
このような説明下手を制御するには、事前に話す内容やテーマをすり合わせておくことが大切です。そうすれば内容がズレたり、いきなり各論を話されたりしても、「すみません、いま伺いたいのはそういうことではなくて……」と、正直に切り出しやすくなりますし、そこから対話の流れが生まれます。聞き手が説明下手のペースにのまれてしまうのは、たいてい、テーマがぼやけていて、うまく対話できないことが原因なのです。
また、対話を円滑に進める上であいづちは効果的ですが、話が長い相手も、あいづちでコントロールできます。「そういえば」「そうすると」などは、話題を変えるときに使えますし、「ちなみに」も便利な言葉で、話を別の方向にもっていくことができます。
長い話を止めるには、質問もうまい方法です。相手の話に無理に割り込むと角が立ちますが、「すみません、ちょっといいですか?」と断ってから、「先ほどの○○について伺いたいのですが」と言ってしまう。そして、「というのも……」と続け、自分が話し始めるのです。
目上の人の話をさえぎりたい時は、配慮の言葉が有効です。「ここ少しまぶしくないですか」「飲み物は足りてますか」などの言葉をかけると、相手の気分を害すことなく話を中断できます(図表②参照)。
令和は対話の時代です。職場のコミュニケーション活性化のために、このことをぜひ認識しておいてください。

BILANC28「「傾聴」大全」辻口先生

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