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今の20代に共通する〝心理的特徴〞とは?(山名裕子氏)

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特集企画

Date: 2025.08.20

構成:秋山真由美 
撮影:森本真哉  
編集:プレジデント社

BILANC37“リソースフル”な職場の創出 山名裕子先生 公認心理師
山名 裕子氏(やまな・ゆうこ)
1986年生まれ、静岡県浜松市出身。
「やまなmental care office」を東京・青山に01開設。心の専門家としてストレスケアからビジネス、恋愛などあらゆる悩みへのカウンセリングを行っている。日本でカウンセリングの大切さを伝えるため、メディア出演をはじめ幅広く活動中。著書に『読むと心がラクになるめんどくさい女子の説明書』(サンマーク出版)など。

カウンセリングを通じて、多くのZ世代の方々と関わってきましたが、リーマンショック、東日本大震災、そしてコロナ禍という不安定な社会環境の中で育った彼ら・彼女らの価値観や生き方は、上の世代とは大きく異なっていると感じます。特に顕著な違いは、現実思考で個人主義的傾向が強く、不安を感じやすいということです。
ワークライフバランスを重視し、「自分らしく働ける環境」を求める人も多く、例えば推し活(図表①参照)などのプライベートな時間を捻出するため、残業や会社の集まりに時間を使いたくない傾向にあります。興味があることはとことん深掘りしますが、一方、興味がないことはスルーするスキルを持っているのです。

BILANC37“リソースフル”な職場の創出 山名裕子先生

小さい頃からインターネットやSNSに囲まれて育ったデジタルネイティブであるがゆえ、効率的に情報を選び取る能力が高い世代。リアルとオンラインの世界を自由に行き来しながら、居心地の良い場所や共感できるコミュニティーを自ら選択しています。気が合う人とつながることができれば、そうでない人とはつながらなくてもいいという感覚を持っている人も多い印象です。

~情報過多社会で“本音”を瞬時に見抜く

一方で、オンライン上と現実の自分とのギャップに悩んだり、他者の評価に振り回されて自己評価が低くなったりして、精神的に不安定な状態になりやすい世代でもあります。居心地の良い“ありのままの自分”でいられる場所を求めているものの、自分軸が確立できていないと、他者からの評価や「いいね!」の数に影響を受けやすいのです。
加えて、日常的に膨大な情報に触れ、取捨選択するのが当たり前なので、“情報疲れ”になっている人も多いでしょう。過剰な広告やPR、フェイクニュースなどに惑わされたくないという意識が強く、「信用できるかどうか」「本音を語っているかどうか」を瞬時に見極めます。さらに、何かを深く考えるよりも短時間で答えを得ることに慣れており、コストパフォーマンスやタイムパフォーマンスを重視しがちです。ショート動画に親しみがあるため、テンポが良くスピード感があるものを好み、結果をすぐに求める傾向があります。
このように彼ら・彼女らが他者との関わりの中で重要視するのは、「信頼できるか」「本音で対話ができるか」です。たとえ、芸能人や著名人が言ったことだとしても、表面的で誠実さのない発言は信用しません。言い換えれば、信頼できる相手であれば積極的に耳を傾け、素直に聞き入れることができる世代。それは、職場の上司や先輩との関係においても同様です。

~対等、誠実、率直に。お互い伝えられるように

Z世代は個人主義と言いましたが、孤高を求めているわけではありません。また、空気を読むことに長けているので、「安心できる関係性」のなかでこそ、自分らしさや能力を発揮できます。職場でも、部下と上司という上下の関係性より、一人の人間として“対等”に、“誠実”に、“率直”に向き合える、心理学でいう「アサーティブ」な関係を求めています。お互いの気持ち・意見・主張をきちんと伝えられるようになることが大切です。
そのために重要なのは、まず心の距離を縮めること。Z世代に響くのは結果ではなく、共感できる“ ストーリー” です。「上司としての威厳を保たねば」と考えるよりも、自分が過去にどんな失敗をして、どうやってリカバリーしたかなど、上辺だけではないリアルな体験談を伝える方が効果的です。
さらに警戒心や猜さい疑ぎ 心も強いので、日頃から肯定的かつ受容的な態度で接することも大切。心理的安全性を保ち、風通しの良い環境づくりをしていくことで、少しずつ意見を主張し、自分らしさを出せるようになるでしょう。
Z世代は多様性を尊重し、「みんな違って、みんな良い」という価値観を持つ一方で、叱られることや理不尽なことに慣れていないので、感情的な人を避ける傾向があります。また、上司が何を考えているのかわからないと不安になるため、基準が明確で一貫性のある評価を求めているのです。彼ら・彼女らのモチベーションの源泉は、「居心地の良さ」と「自己成長」だと言えるかもしれません。

~簡潔でテンポ良く具体的な指示を

人は無意識のうちに、言葉だけでなく、表情や声のトーン、態度といった非言語的な要素からさまざまなことを読み取っています。Z世代は、この非言語コミュニケーションに非常に敏感です。不安が強いため、特に、自分の発言や提案に対して、上司がどのように反応するか、その“ファーストリアクション”に注目しています。
たとえ、口では良いことを言っていても、口調や表情と一致していなければ、本音を話していないと見なすでしょう。まずは肯定的に応答することが重要です。また、曖昧なことに耐性がなく、物事を「良いか悪いか」といったように二極化して捉える傾向もあります。そのため、ネガティブなフィードバックをする場合も、「なぜダメなのか」具体的なエピソードを交えて伝えれば、心を閉ざされてしまうことを回避できるはずです。
また、ショート動画に脳が慣れてしまっているので、指示や連絡は長文ではなく、“簡潔でテンポ良く”を意識しましょう。上司から返信が来ない状況をストレスに感じるので、すぐに返信ができない場合は、「この時間帯は連絡ができなそう」などと、事前に伝えておくだけでも不安が解消されるはずです。
不安が強いZ世代は、職場で放置されたり、強く叱責されたりすれば、「自分は必要とされていないのではないか」という自己否定につながってしまいます。こまめなフィードバックと、小さな成功体験を一緒に振り返ってあげることが、彼ら・彼女らのモチベーション維持には欠かせません。行動を具体的に褒めるだけでも外発的モチベーションは高まりますが、それだけでなく、適切な役割を与え、仕事で感じた「やりがい」や「楽しさ」を一緒に喜んであげることで内発的モチベーションが引き出され、よりやる気が継続するようになっていきます(図表②参照)。

BILANC37“リソースフル”な職場の創出 山名裕子先生

Z世代は、組織を変革していくうえでも重要な、エッジの効いたアイデアをもたらす貴重な存在です。彼ら・彼女らが持つ潜在能力を引き出し、活かせるかどうかは、上の世代の対応にかかっています。人間はどこかで無意識に、相手を変えようとしてしまうものです。相手を変えようとすれば反発を生みますが、ほんの少し伝え方を工夫するだけで関係性は変わります。相手の心に寄り添い、ポジティブなコミュニケーションを心がけることで、お互いが輝ける関係性を築きましょう。

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