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時代を超えた “楽器の世界旅行”(武蔵野音楽大学)

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学食・博物館特集

Date: 2025.03.21

大学ミュージアム図鑑 [第4回]
楽器ミュージアム(武蔵野音楽大学)

bilanc36大学ミュージアム図鑑「武蔵野音楽大学」
鍵盤楽器展示室。16~17世紀の小型チェンバロから、18~19世紀に鍵盤数の拡大や
弦の張力強化など大きな発展を遂げたピアノを眺めるだけで学びがある。

※2025年3月発行BILANC vol.36に掲載
構成:八色裕次 
撮影:加々美義人 
編集:プレジデント社

時代を超えた“楽器の世界旅行”

~5900点以上にのぼる日本最大規模の所蔵点数

楽器とは、その一つひとつを鑑賞す るだけで楽しいものです。素材やつくり手によって音色の変化や、施された装飾から地域性や時代性などをうかがい知ることができます。
例えば、ナポレオンⅢ世の結婚祝いとして英国のビクトリア女王が贈った「ナポレオン帽子型ピアノ」。その名の通り皇帝ナポレオン・ボナパルトの帽子をかたどった形状で、各所には手の込んだ彫刻が施されています。また、まだ電灯がなかった時代、楽譜を見やすくするため譜面台の横に燭台が付いていましたが、そのデザインにも作り手の工夫が感じられます。
このように、武蔵野音楽大学楽器ミュージアムでは、時代を感じながら多くの楽器を鑑賞することができます。

bilanc36大学ミュージアム図鑑「武蔵野音楽大学」
中央がナポレオン帽子型ピアノ(アップライトピアノ)。
 

「当館では、鍵盤楽器、管弦打楽器、日本の楽器、世界の民族楽器の4つの展示室で世界各国の楽器を幅広く紹介しています」
こう語るのは、主任学芸員を務める脇谷真弓さん。前身となった楽器陳列室は1960(昭和35)年に開設されました。

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ヴァイオリンやヴィオラ、チェロの銘器のほか、木管楽器の体系的コレクションなどもある管弦打楽器展示室。

bilanc36大学ミュージアム図鑑「武蔵野音楽大学」 

bilanc36大学ミュージアム図鑑「武蔵野音楽大学」

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bilanc36大学ミュージアム図鑑「武蔵野音楽大学」
鍵盤楽器、管弦打楽器、日本の楽器、世界の民族楽器の4つの展示室がある。

「所蔵数約5900点のうち、1700点ほどを展示しています。邦楽器研究家である水野佐平氏が収集した歴史的な筝や、作曲家シューマンの妻で、自身も高名なピアニストであり作曲家であったクララ・シューマンに献呈されたピアノなど、希少な楽器の数々を鑑賞することができます。特に鍵盤楽器、管弦打楽器の展示室では、楽器の歴史的変遷が感じられるような展示となっているのも特徴の1つです」

bilanc36大学ミュージアム図鑑「武蔵野音楽大学」 

bilanc36大学ミュージアム図鑑「武蔵野音楽大学」
雅楽に用いられる琵琶ほか、さまざまな種類の琵琶が見られる日本の楽器展示室。
歌舞伎の舞台を模した展示台に、演奏時の楽器の配置順がわかる展示となっている。

異なるテーマで設計された、独立した4つの展示空間

~国や歴史によって変わる形状や味わいを楽しんで

楽器の歴史的変遷が感じられる展示とはどういうことなのでしょうか。
「例えば、ピアノ誕生以前からあったチェンバロやクラヴィコードに始まり、発展期や普及期のピアノへと動線をつくることで、ピアノの歴史がわかるようにしています。また、木管楽器のコーナーでは、進化の過程が一目でわかるよう時代順に展示しています」

bilanc36大学ミュージアム図鑑「武蔵野音楽大学」 

bilanc36大学ミュージアム図鑑「武蔵野音楽大学」
左の世界の民族楽器展示室に展示されている「バラフォン」は、西アフリカで使われていた木琴。ヒョウタンを共鳴器に用いているのが特徴だ。これがアメリカへ渡り現地の自然環境や文化と融合しながら発展したのが、右のマリンバ。中南米産のヒョウタンは細長いため、共鳴器も長くなっ ているのがポイント。

一方、世界の民族楽器展示室では、各地の地域的な特徴が感じられる展示になっていると脇谷さんは話します。
「例えば、孔雀や虎など、各国でシンボルとして崇められている動物が楽器のモチーフになっていることもありますし、また、国から国へ伝わる過程で、それぞれの地域に合うよう変化した楽器もあります」
こうした楽器の移り変わりや地域を越えた広がりを知ることで、地域的な特徴を深く味わうこともできるミュージアムなのです

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国でシンボルとして崇められている動物がモチーフになっている楽器
bilanc36大学ミュージアム図鑑「武蔵野音楽大学」
世界の指揮棒のコレクション。
bilanc36大学ミュージアム図鑑「武蔵野音楽大学」
讃岐地方特産の石「サヌカイト」を使って創られた楽器「そう」。
柔らかく長い余韻が魅力で、学内のコンサートホールでホール・チャイムとして使われている。

前回までの博物館ご紹介の記事はこちら
「食と農」の博物館(東京農業大学)
恐竜学博物館(岡山理科大学)
大阪青山歴史文学博物館(大阪青山大学)

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