恐竜学博物館(岡山理科大学)
学食・博物館特集Date: 2024.03.18
大学ミュージアム図鑑 [第1回]
C2号館1階のメイン展示室でひときわ目を引く、肉食恐竜タルボサウルスの頭骨標本。
※2024年3月発行BILANC vol.33に掲載
構成:八色祐次
撮影:梅田雄一
編集:プレジデント社
※前回のインタビュー(学食・ゼロイチ食堂)はこちら(BILANC vol.16)
「学生と歩み、成長する博物館」
日本でここだけ貴重な化石コレクション
恐竜化石の宝庫といわれるモンゴルのゴビ砂漠で発掘された貴重な化石標本やレプリカなどを、岡山理科大学のキャンパスで楽しむことができます。
岡山理科大学とモンゴル科学アカデミー古生物学研究所は、長年にわたりゴビ砂漠で、恐竜化石の発掘や地質調査を行ってきました。その成果の一部を、C2号館1階にある恐竜学博物館メイン展示エリアを中心に、キャンパス内の4館7カ所に展示しています。例えば、日本ではこの場所でしか見られないゴビハドロスの亜成体標本。この恐竜は白亜紀に大?栄したハドロサウルス類の原始的な種で、発掘された良好な化石を研究することによって、ハドロサウルス類の初期進化が解明されつつあるといいます。
C2号館1階には貴重なコレクションがずらり。
化石処理室・研究室もあり、化石をクリーニングする様子をガラス越しに見学できる。
「ほかにも、ここでしか見られない標本はいくつもあります。A1号館1階には、モンゴルを代表する大型肉食恐竜タルボサウルスの全身骨格も。訪れた方は、その迫力から足を止めて写真を撮ることが少なくありません」
こう語るのは、館長であり、恐竜の足跡研究を行っている石垣忍教授。ゴビ砂漠の白亜紀末期の地層で竜脚類の足跡化石を発見するなど、これまでに1万5000点を超える足跡化石を発見・研究し、恐竜の生態解明につながる発見をした、実績のある研究者です。
A1号館4階では、石垣教授のモンゴルでの発掘調査を再現。
実際に使用したテントや発掘道具、発掘2 現場の実物大写真なども展示している。
レイアウトから音声解説まで学生が積極的に参加
化石標本だけでなく、キャンパス内の数カ所に恐竜時代の植物(シダ植物や裸子植物)が植えられ、恐竜の食物が見られるのも、岡山理科大学ならでは。
ほかにも、ゴビ砂漠の発掘現場をパネルや写真で再現したスペースや、化石クリーニングの実演など、趣向を凝らした展示を通じて、恐竜研究のすべての過程を知ることができます。
加えてこの博物館で特筆すべきは、標本や展示づくりに学生が深く関わっていることでしょう。
ゴビ砂漠の発掘現場をパネルや写真で再現したスペース
「タルボサウルスの全身骨格は、教職員も協力していますが、学生が卒業研究として組み立てたものです。どこにどのような展示物を置くべきか、館内のレイアウトを決めるときも学生が参加していますし、標本や恐竜植物園の植物のことを知ってもらおうと、二次元コードを読み取って聞く音声解説をつくったのも学生です。」
A1号館1階にあるタルボサウルスの全身骨格。学生が組み上げたものだ
C2号館3階では各分類群の代表的な恐竜を展示しており、恐竜学・古生物学を系統的に学ぶことができる。化石の保存などのため、展示の多くはレプリカだが、ここではコリトサウルスの全身骨格の実物を展示しているのも特徴。写真は、アロサウルスの全身骨格
「つまり、学生と一緒になってつくり上げている博物館ということになりますね。そこが、教員にとっても新鮮で楽しいところです」
取材時には一般の見学者も来館しており、入館無料で気軽に楽しめる博物館として、地域で親しまれています。
左:50周年記念館前の地面には、足跡化石を実物大でペイント。同館には竜脚類の足跡化石のレプリカなどを展示している。右:C2号館博物館入り口付近。