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執着を手放す「断捨離®」テクニック(やましたひでこ氏)

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特集企画

Date: 2024.11.29

構成:江頭紀子 
撮影:加々美義人  
編集:プレジデント社

BILANC35とっておきの「幸せ」習慣 やましたひでこ先生 断捨離提唱者
やました ひでこ氏(やました・ひでこ)
一般財団法人断捨離代表。学生時代に出合ったヨガの行法哲学「断行・捨行・離行」をもとにした「断捨離」を日常の片づけに落とし込み、誰もが実践可能な「自己探訪メソッド」を構築。2009年の著書『新・片付け術「断捨離」』(マガジンハウス)をはじめとするシリーズ書籍は世界各国で20言語以上に翻訳され、国内外累計700万部を超えるミリオンセラーになっている。

皆さんは「断捨離」という言葉を聞いて、どのようなイメージを持たれますか?おそらく大半の方が、モノを捨てる“ 片づけ術”だとお考えになるのではないでしょうか。しかし実は、断捨離とは単なる片づけ術ではなく、「過剰」を引き算していく考え方や行為のことなのです。
私は人が感じる豊かさとは、「ゆとり」だと考えています。それなのに空間や時間、エネルギーが不足している状態に対して、多くの人は不安を感じてしまい、モノで隙間を埋めようとする。しかし、その行為こそがゆとりをなくし、人から豊かさを奪ってしまうのです。
もっといえば、多すぎるモノや情報、人間関係に振り回されて疲弊してしまっているのに、「過剰」がそのストレスフルな状態を引き起こしていることに、多くの人が気づけていません。そんな不幸なことはあるでしょうか?
片づけ術は、いわば断捨離という登山道の入り口。なだれこむ情報を断ち切り、いらないモノを捨て、不必要な執着から離れる(図表①参照)。

BILANC35とっておきの「幸せ」習慣 やましたひでこ先生

毎断捨離という行為を本来の意味で理解して実践し、心身のゆとりを獲得するために、まずはトレーニングとして身の回りの片づけから始めてみませんか?

~空間や時間の自由度を高めるために

ですが、その片づけができず悩む人は多いでしょう。その最たる理由は、モノが多すぎることです。
自分の空間や時間、そしてエネルギーに対して、モノが多くなりすぎてしまうと、圧迫感や閉塞感にじわじわとストレスを感じるようになっていきます。自分自身でフラストレーションを増殖させていることに気づかず、いつの間にか満身創痍の状態となり、心身ともに健康を損なってしまうケースは多いでしょう。
断捨離を提唱し始めた頃、私のもとを訪れる人は「家の中で片づけをするのは私だけ」「整理しても一向に片づかない!」とイライラしていることが多かったのですが、最近は“ 鬱々”としている人が多いように感じています。感情を外に出せず内に込めてしまい、どんよりとした重い空気をまとってしまう。そして、その鬱々とした雰囲気を家族全体に波及させてしまうケースをよく見かけます。
だからこそ、私は引き算の思考や行動を提唱しているのです。モノを増やすのではなく、減らしていく視点を持つことで、本当に大切なモノや実は不足しているモノを見つけることができます。

~「とりあえず」残したモノから捨ててみる

同じ部屋でも、「狭い」「広い」といった感覚は、そこに存在するモノの量や人数で変化するもの。本来は空間に対しモノが過剰だから狭いと感じているのに、多くの人は場所が原因だと錯覚してしまうのです。そして、その空間が狭いと“ 勘違い”した人は、収納グッズや家具をそろえます。ですが、それらの道具はモノを“ 寄せる”だけ。モノが増えたことで、かえって空間を閉塞させてしまうでしょう。
空間とはそこに住む人が身を置く環境であり、私たちは絶えずそこから影響を受けています。ですから、そこが「見苦しい・重苦しい・息苦しい」という三重苦の場所になってしまうと、その負の感情をいつも身にまとっていることになるのです。これでは居心地が良くなるはずはありません。適度な量で自分の好きなモノがあり、そこに開放感や爽快感があるのが「居心地がいい空間」で、そうした空間をクリエイトしていくのが断捨離なのです。
ただ居心地の良さは、変化していくものでしょう。好みだと思って買った服が似合わなくても、買い物に失敗したと自分を責めるのではなくて、今は不要だったのだと現状を認識する。それを繰り返していくことで、今の自分に必要なモノがわかっていくはずです。
しかし、実際にモノを取捨選択していくとなると、過去への未練と未来への淡い期待に縛られてしまう人は少なくありません。例えば、定年後使わないのにネクタイをずっと保管してしまうのは典型例でしょう。さらに、「めんどくさい」「もったいない」「心許ない」という3つの感情が邪魔をして、人を“捨てられない状態”にしてしまう(図表②参照)。

BILANC35とっておきの「幸せ」習慣 やましたひでこ先生

そうして捨てることを保留してきた品々が、家の中にあふれているのです。これらの「とりあえず」残してあるモノは、いったん捨ててみましょう。意外となくても困らないものですよ。
捨てられない状態でいることは、真夏に冬の厚いコートを着ていて、思うように動けないのと同じ。引き算をして身軽になりましょう。

~負の原因を引き算して“ごきげんの種”へ

ではモノへの執着を断ち、「断捨離」を実現するためには、具体的にどうしたらよいのか?まずは「いる」「いらない」を見極め、不要なモノを判断していくことが大切です。
モノがあることで安心するからと、不要なモノを保管し続けてしまう人は多いでしょう。しかし、そこに希望はありますか? なくなることがリスクだという考えは、完全な思い込みなのです。いらないモノを抱えているということは、空間や時間、エネルギーを過剰に使っていることになります。
例えば、旅先で入手したパンフレットがどうしても捨てられない場合。その存在によって励まされるのであれば捨てなくてもいいと思いますが、量が過ぎるのは考えものです。情報が古くなっている可能性もありますから、本当に必要なのか確認したほうがいいでしょう。
さらに、家族にモノを整理してほしいとき、しかめっ面で「あなたのモノが邪魔」と言うのは、逆効果です。居住空間がきれいにならないだけではなく、その不機嫌を家族に波及させてしまうでしょう断捨離を実践するためには、まず自分自身がモノや情報の取捨選択を行い“ごきげん”になることが大切。閉塞感から解き放たれ、スッキリとした空間は感情をポジティブな方向へ促してくれます。そうすると、その晴れ晴れした気持ちは、家族にも伝わるでしょう。
加えてオススメなのが、「最近どうしてごきげんなの?」と家族が聞いてきたときに、「片づけをしたから」とすぐ打ち明けるのではなく、「内緒」と言うこと。楽しそうなことを秘密にされたら、相手はもっと聞きたくなります。そうやって家族の心を開いたときに、断捨離を促すような言葉をかけることが大切なのです。
断捨離をすることで、ネガティブな感情の原因である“ 負の要素”を洗い出し、少しずつ引き算していく。そうすることで、「過剰」から解き放たれ、負の要素に隠れていた“ ごきげんの種” に気づくことができるはずです。ぜひ、心豊かな人生を歩むために、断捨離を始めてみてください。

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