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感情を整える2通りのメソッド

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構成:野澤正毅
撮影:石橋素幸 
編集:プレジデント社

90秒間、激しく湧き上がる感情を客観的に観察する

BILANC29「大人の“イライラ”管理術」柊りおん先生 メンタルトレーナー
柊 りおん氏(ひいらぎ・りおん)
中央大学総合政策学部卒。通訳業務などを担当後、東日本大震災で被災し「今」を大切に生きるため転身を決意。日本感情心理学会に所属し、感情マネジメントの執筆活動を行う。著書に『欲しい未来が手に入る怒りのコントロール術「感情美人」になれる7つの扉』(光文社)。キャリアカレッジ「アンガーコントロール実践講座」監修など。

~キレる原因は、自分自身にある

誰しも、職場や家庭で“イライラ”し、時には怒ってしまう瞬間があるでしょう。では、“怒り”の原因とは何なのでしょうか?
例えば、「部下が指示通りに仕事をしない」「子どもがいうことを聞かない」といったケースなら、「部下や子どもが原因」と考えるのが普通。昔の私もそうでした。しかし、実は怒りの原因は「自分自身」にあるのです。部下や子どもがどのように行動しようが、本人が気にしなければ、イライラすることはありません。怒りは「二次感情」であるといわれており、自分のことを「わかってくれない」「構ってくれない」といった不安や不満、焦り、虚しさなど、自分自身の「一次感情」が発端となり、そこから発生するのです。

BILANC29「大人の“イライラ”管理術」柊りおん先生

私には、様々な事情が重なり、一人で乳飲み子の育児と親の介護、両方をこなさなければならなくなった時期がありました。幼い娘も認知症の父も、思い通りには行動してくれません。まさに毎日がイライラの連続で、カウントしてみたら、私は1日に約80回も“キレて”いました。
そのとき、私は「こんなことを続けていたら、自分も家族も崩壊してしまう。何とかしなければ」と悟り、「自分の感情や行動の結果に、自分で責任を取る」と決意したのです。そこで自分自身と向き合ったので、変わることができたのだと思います。
乳飲み子が泣いたり、認知症の父がいうことを聞かないのも、仕方のないこと。娘も父も、私を怒らせようと行動していたわけではありません。にもかかわらず、私はイライラを「娘や父のせい」にしていました。人間は自分事を正当化するためには原因を「他責」に帰したほうが、楽だからです。しかし、自分自身が考え方を変えて、怒りの感情を抑えない限り、イライラは止まりません。しかも、「怒りの炎」はいったん燃えあがると、自分でも制御できなくなってしまいます。
結果、怒りに任せて行動したために他人を傷つけて恨みを買ったり、社会的評価が下がったりして、自身を傷つけかねません。アンガーコントロールは、自分の人生を守る「リスクマネジメント」として、とても重要だといえます。

~「怒りに反射」は子ども。対応するのが大人

アンガーコントロールには、怒りをその場で鎮める方法と、怒りを客観的に分析する方法、2通りのメソッドがあります。まずは即効性のある「怒りを鎮める」メソッドとして、二つの方法をご紹介します。
一つ目が、出来事への「反射を抑えること」。怒りは突発的に、激しく湧き上がる感情なので、最初にリアクションしないことが肝心なのです。怒りの感情を覚えたら、90秒を目安に、自分自身を客観的に観察しましょう。90秒間はノルアドレナリンやアドレナリンなど「怒りのホルモン」のホルモンが体に満ち、理性的な対応が困難だからです。古代ローマの哲学者・セネカも「遅延こそ、怒りをコントロールする最善の方法である」といっています。また、1分間に4、5回、深呼吸するのもいいでしょう。精神を落ち着かせるセロトニンというホルモンが分泌されます。
どうしても怒りが抑えきれない場合は、「タイムアウト」を取るのが良いでしょう。「今、自分は冷静に話ができないので、1時間後に戻ります」など、相手に行動の理由をしっかり伝えた上で、その場を離れます。アンガーコントロールで「逃げるは上策」なのです。
二つ目が、心の中に高ぶった感情を抑える「おまじない」を携帯すること。私の場合、「ここで怒ることに、人生を賭ける価値があるの?」と、自問自答する習慣を持っています。精神を安定させる、そうした「おまじない」のフレーズを自分で決めておき、怒りを覚えたときに思い出すと効果的です。怒りの感情を司っているのは、脳の「扁桃体」という部位なのですが、怒りの対象から意識をそらし、理性を司っている「前頭前野」という部位を働かせることで、怒りを鎮めるわけです。家族の顔を思い浮かべたり、数を数えたりしてもいいでしょう。スマートフォンの待ち受け画面の愛犬などを見るという手もありです。

BILANC29「大人の“イライラ”管理術」柊りおん先生

原因である一次感情を見極めた上で、しっかりと相手に伝える

~自分の価値観を把握、冷静さを保つ

次に、「怒りやすい体質」を改善するメソッドとして、二つの方法をご紹介しましょう。
一つ目が、「怒りのトリガーポイント」をリストアップしておくこと。自分の価値観(「べき」思考)を具体的に把握することができます。仕事やプライベートにおいて、例えば、「待ち合わせは時間厳守」など、自分の価値観を各20項目ほど洗い出します。また、「どうして怒りを覚えるのか」という理由も考えてみましょう。そして、可能であれば職場や家庭でリストを公開します。情報共有すると、お互いに価値観や立場の違いが理解できるので、相手の言葉や行動に過剰反応しなくなり、怒りが芽生えにくくなるのです。
また、子どもに怒る場合も、その理由を示すことは大切。怒りをぶつけるだけでは、相手が反発するだけです。子どもの学校の成績が悪くてイライラしたら「あなたの将来が心配だから」と伝える。「なぜ怒るのか」という“アイ・メッセージ(I message)”が有効です。
二つ目の方法が、「怒りの日記」をつけること。その日どんなことで怒ったのか、簡単にメモするだけでもかまいません。一緒に、その日の怒りのレベルも、10段階評価してみましょう。2~3週間ほど続けていると、最初は評価が高かった怒りのレベルが、だんだん下がってくるのがわかります。日記をつける行為によって、自分は、どんな一次感情が溜まってくることによって怒りっぽくなるのかもわかり、イライラの予防にもつながります。
紹介したメソッドを実践すれば、イライラを自然にセルフコントロールできるようになるでしょう。皆さんもぜひ試してみてください。

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