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目覚めが変わる「入眠」大革命

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特集企画

Date: 2024.03.18

構成:江頭紀子 
撮影:加々美義人  
編集:プレジデント社

BILANC33疲労回復のスキル 友野なお先生 睡眠コンサルタント
友野 なお氏(ともの・なお)
順天堂大学 大学院スポーツ健康科学研究科博士前期課程にて睡眠を研究し、修士号を取得。株式会社SEA Trinity 代表取締役。自身の睡眠改善により、ダイエットや重度のパニック障害の克服などに成功した経験から、行動療法からの睡眠改善に関する講演や執筆活動を行う。著書は『ぐっすり眠れる不思議なぬり絵』(西東社)シリーズなど。

睡眠は、心身の健康維持のために欠かせないもの。上手に睡眠がとれれば、病気になりにくくなる、仕事や勉強のパフォーマンスが上がる、気持ちが前向きになる……と、いいこと尽くめ。
逆にうまく睡眠がとれないと、あらゆる病気のリスクが高まるばかりか、ストレスや不安感が増え、仕事・人間関係にも悪影響を及ぼしかねません。
睡眠の良し悪しは、「量」(時間)と「質」のかけ算で決まります。睡眠時間は7時間確保できるのが理想ですが、日本では、5~6時間程度の方が多いようです。睡眠時間の確保が難しい場合、まずは「質」を高めることを目指していきましょう。

~良質な睡眠のカギはスムーズな「寝つき」

質の高い睡眠をとるためには、スムーズな「寝つき」がポイント。
睡眠中は、ノンレム睡眠(深い睡眠)とレム睡眠(浅い睡眠)が交互に繰り返されています。ノンレム睡眠が最も深くなるのは、就寝して最初の3時間ほど。このとき成長ホルモンがたくさん分泌され、疲労回復を助けます。レム睡眠は、睡眠の後半に増える眠りで、脳に感情や記憶の整理を促します。嫌なことがあっても、翌朝にはニュートラルな状態で一日を迎えることができるのは、レム睡眠とノンレム睡眠がいいリズムで繰り返されるおかげです。
布団に入ってから5~10分程度で眠りに入るのが、理想的な寝つきです。逆に、布団に入ってすぐ“ バタンキュー” と寝てしまうのは、疲れすぎている証拠。少しまどろみ、リラックスした状態で寝つくと、スムーズに深い眠りへ入ることができます。レム睡眠とノンレム睡眠がバランスよく繰り返されるため、睡眠の総合的な満足度が高まるのです。
ところが、布団に入って30分以上経っても眠れない状態が続くと、その後も眠りのリズムが崩れます。思考もネガティブになって、ますます眠れなくなるという負のループに陥り、結果的に睡眠の質・量ともに低下してしまうのです。この傾向は特に女性に多く、男性では50代によく見られます。危険なのは、寝室を「不安な場所」と潜在的に捉えるようになってしまうこと。不眠傾向を招き、長期的に眠りの質が悪化してしまいます。
「眠れない」と感じたら、一度寝室から出て、塗り絵や編み物、靴磨きなど単調な作業をしてみましょう。その際に大事なのは、光の刺激を受けないことと、時計を見ないこと。「○時までには寝る」と決めるのではなく、自分の感覚で眠くなったときに眠ることが大切です。ただ、「あと1時間で起きなきゃ」という場合は、思い切って徹夜をしても大丈夫。眠れないことを、ストレスになるほど思い詰める必要はありません。

~安心して眠れる自分だけの「入眠儀式」を

スムーズな寝つきや快眠を導く、具体的な習慣を2つ紹介します。
1つ目が、「パジャマを着て眠る」こと
パジャマを着ることで寝返りが打ちやすくなり、睡眠の質向上につながります。おすすめは、綿やシルクなど自然素材のもの。
スウェットやジャージは本来外着で、厚めの素材でつくられているため、寝具との相性が悪く、うまく寝返りを打てません。吸水性にも乏しいので避けましょう。寝返りは、就寝中に行う無意識の運動。血液や体液の循環を促し、からだにかかる圧を分散させてくれます。寝返りがスムーズにできないと、睡眠の途中で目が覚めてしまい、熟睡感も得られません。
もう1つ、試してほしい習慣が「寝る前の6分間読書」です
英国の研究で、「6分間の読書」を継続することでストレスレベルが下がることがわかりました。どきどきするような本ではなく、結末を知っているお気に入りの本がいいでしょう。絵本や子ども向けの書籍、「いつか行きたい場所」のガイドブックもおすすめ。日常生活と切り離された内容の本を読むことで、ストレスから無意識に距離をとることができ、心穏やかな状態で眠りにつくことができます。
こうした習慣を取り入れてスムーズに眠れることができれば、それは自分だけの「入眠儀式」となります。私の入眠儀式はパジャマを着ることですが、ほかにも、深呼吸する、白湯を飲む、好きな香りをかぐ……などが考えられます。
簡単なことでいいので、「自分はこうすれば穏やかに眠れる」という行動習慣を見つけられれば、「眠れる自分」をつくることができます。

BILANC33疲労回復のスキル 友野なお先生

~朝日、バナナ、昼寝……日中にできる快眠対策

寝つきの改善以外にも、睡眠の質を高めるために日常で実践できることはたくさんあります。ここでは3つ紹介しましょう。
1つ目は、起床したらすぐに窓際に立ち、15 秒間空を見上げること
幸せホルモンといわれるセロトニンの分泌が後押しされて、日中意欲的に活動できます。人間は、太陽の光が目に入ってから14~16時間後に、睡眠ホルモンのメラトニンの分泌が始まる予約のスイッチが入るため、夜のスムーズな寝つきにもつながります。
2つ目は朝食
起床後1時間以内に、アミノ酸の一種トリプトファンが含まれる食品を摂りましょう。手軽なのはバナナです。トリプトファンはセロトニンの原料になるのですが、セロトニンがうまく分泌されればメラトニンも促進され、オン・オフのリズムが整います。
3つ目が昼寝(パワーナップ)
ビジネスパーソンにぜひ取り入れてもらいたい習慣です。昼寝は、認知症や心臓病のリスクを低下させることが期待でき、脳の疲労を回復させて午後のパフォーマンスアップにもつながります。効果的な昼寝のためには簡単な3つのルールがあるので、参考にしてみてください。(図表②参照)

BILANC33疲労回復のスキル 友野なお先生

逆に、避けたほうがいい習慣もあります。ついやってしまいがちなのは、就寝前にスマートフォンを使うこと。寝る30分前にはスマホは見ないようにしましょう。SNSやニュースを見ることで“共感性疲労”も溜まってしまいます。
また、21時以降は、コンビニエンスストアに行くのを避けましょう。コンビニの白くて強い照明を、からだが太陽の光と錯覚してしまい、活動スイッチが入ってしまいます。
入浴を「シャワーだけ」で済ますのもおすすめしません。理想は就寝1時間前、38~40℃の浴槽に15分程度じっくり入ること。難しければ、43℃のお湯で10分間、足湯をしてみましょう。それもできないという日には、レッグウォーマーを履き、ドライヤーの温風を上から当てることで、足首をあたためるのも眠りに効果的です。
快眠のためにできることは、起きた瞬間からあります。「全部できなくても大丈夫!」というおおらかな気持ちで、できることから続けてみてくださいね。

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