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脳を正しく休ませる3つの方法

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特集企画

Date: 2024.03.18

構成:江頭紀子 
撮影:加々美義人  
編集:プレジデント社

BILANC33疲労回復のスキル 菅原洋平先生 作業療法士
菅原 洋平氏(すがわら・ようへい)
ユークロニア代表。国際医療福祉大学卒業後、国立病院機構にて脳のリハビリテーションに従事。東京都千代田区のベスリクリニックで外来を担当しながら、ビジネスパーソンのメンタルケアを専門に、生体リズムや脳の仕組みを活用した企業研修を全国で行う。著書に『「疲れない」が毎日続く! 休み方マネジメント』(河出書房新社)、『「めんどくさい」が消える脳の使い方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。

「休み」のとき、皆さんはどう過ごしていますか?
仕事の休憩時間にスマホをいじったり、休日にはつい動画を見続けたり……こうした休み方では脳の疲労を回復させることはできません。逆に、スマホなどの画面を見続けることは、脳のリソースをかなり使用してしまいます。
脳は、どんな些細なことでもエネルギーを消費し、その消費は「認知コスト」と呼ばれます。エネルギーは有限ですから、お金と同じように無駄なコストは減らして、本当にやりたいことにつぎ込まなくてはなりません。疲労を避けるためには、無駄な認知コストを減らし、脳が働きやすい作業環境・休息環境をつくって、脳の負荷を減らす必要があるのです。
また、「活動中(オン)」と「休み(オフ)」の差をなるべくつけず、「急ブレーキ・急発進」を避けるのが、脳にとっては好ましい働き方。なぜなら、人間の体は、オン・オフのギャップが少ないほど、スムーズに次の行動に移れる仕組みになっているからです。
今回は、私の推奨する「働きながら休息できる習慣づくり」について紹介します。

~無駄な認知コストを減らすコツとは

脳は、「記憶する」という性質をもっています。脳が過去の記憶に基づいて予測した行動と、実際の行動とがマッチしていれば、新たに認知コストはかからないので、疲労にはつながりません。逆に、予定外の行動をとると、脳には大きな負担となってしまうのです。この特性を踏まえ、認知コストを減らす方法を3つお伝えします。
1つ目は、デスクではお茶を飲まないなど、「1スペース1作業の法則」
デスクは本来仕事をする場所です。脳は、記憶から同じ場所で同じ行動を再現します。いつも仕事をしている場所で「お茶を飲む」「休憩する」といった予定外の行動をとると、新たに認知コストがかかってしまいます。作業をする場所はなるべく1か所に固定して、脳を集中に導くようにしましょう。
2つ目は、作業を終えたら、次の工程に「少しだけ着手する」
これは「先延ばしを防ぐ」ともいえます。作業が完全に区切られて、新たに別の作業を始めることは脳にとって負担です。それがやりたい作業でないときには「面倒くさい」という気持ちが強まります。例えば、会議終了後に議事録を1行だけ書いておく。夕食後にお皿を1枚だけ洗ってみる。そうすると、作業を再開するときに脳は「さっきの作業の続きをする」と認識するため、すんなりと体に命令することができます。「面倒くさい」は、脳が次の行動を負担に感じることから出てくる気持ちなのです。
3つ目は、「○○しなければならない」ではなく、「○○する」と言い切ること
脳は、口に出した言葉をもとに次の行動の準備をします。「○○しなければ」という言葉は、脳にとっては「する」か「しない」かがわからないため、判断に負担がかかります。なるべく具体的に、やるべきことを言語化して口に出してみましょう。

BILANC33疲労回復のスキル 菅原洋平先生

~朝イチはメールを見ない!脳の働き方改革

続いて、ビジネスパーソンが陥りがちな、疲労につながる習慣を3つ紹介します。
1つ目は「朝イチのメールチェック」
出勤前に「今日はこれとあれをやろう」と、自分の仕事に向けて脳が準備をしているのに、朝イチでメールを見ると、他人からの要求に応じる必要が出てきます。他人に合わせる行動は、脳が疲れます。10分でもいいので、まずは自分がその日に予定していた仕事に着手しましょう。
本当に緊急なことがあれば電話がくるでしょうし、まずは自分で仕事の主導権を握ることが大事です。もしも困ったらすぐに戻せばいいので、1日だけでも試してみてはいかがでしょうか。
2つ目は「予定を立てないで場当たり的に動くこと」
目的に対して、どのくらいの時間、どういったテンションで臨めばいいかがわからないため、認知コストがかかります。脳にとって、下準備は疲れないための重要なポイントです。スマホがあるとすぐに調べられるので、つい場当たり的に動いてしまいますが、脳に「下見」をさせるつもりで準備に取り組むといいでしょう。
例えば、何か作業を始めるときには「今から10分間、この作業をしよう」と自分で時間を区切り予定を立てるのも効果的。脳は過去10分間でどんな作業をしたかを検索し、その時と同じテンションになってくれます。自分がその作業をするのにどのくらいかかるのか、認識することも重要です。自分の業務にはそれぞれどのくらいの時間がかかるのか、作業時間を測ってみるのもおすすめです。
3つ目は「休憩をとらない」こと
何時間でも働き続ける人がいますが、ハイパフォーマンスを維持できるはずがありません。脳は臓器であり、しっかり機能させるためには休みは不可欠。同じ臓器の胃で考えれば、たくさん食べ続けたら胃もたれすることはわかりますよね。休憩には、「5分・15分・30分・90分」という4つのタイミングがあるので、参考にしてみてください(図表②参照)。

BILANC33疲労回復のスキル 菅原洋平先生

~どんな意識で働くかは自分で変えられる

職場で休憩をとるときに意識してほしいポイントがあります。まずは、モニターやスマホの画面などから「目線を外す」こと
1カ所に焦点を合わせてじっと見る行動は、いわば情報を“食べている”状態。遠くの景色をぼんやり眺めて、情報を消化するモードに切り替えましょう。脳の働きが活発になり、アイデアがひらめきやすくなるというメリットもあります。
「体を動かす」ことも大事です。
休憩のついでに少し歩いたり、その場に立って足踏みしたりするだけでも、股関節が動いて血流を良くする(=疲労回復しやすくなる)ことにつながります。
休日の過ごし方としては、「何もしない」「寝溜め」はNG。平日とのギャップを出さないためにも「何かする」のが正解です。特に推奨したいのは、他人と感情を共有すること。誰かと一緒に何かをやって「楽しかった」という気持ちを共有することは、脳を“競争モード”にする交感神経を休ませることにつながります。
また、「五感を使う活動」もおすすめ。
触覚や嗅覚などの感覚に集中しているときは、後ろ側の脳(頭頂葉)が働いて、判断したり悩んだりする前側の脳(前頭葉)を抑制するので、悩みから解放されてすっきりします。靴磨きや、台所のシンク磨きもいいかもしれませんね。
会社が決める「働き方」を変えることは難しくても、仕事に臨む姿勢は自分で変えられます。気軽に“実験感覚”で、疲れない働き方を試してみてください。

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