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大阪青山歴史文学博物館(大阪青山大学)

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大学ミュージアム図鑑 [第2回]
大阪青山歴史文学博物館(大阪青山大学)

bilanc34大学ミュージアム図鑑「大阪青山大学」
4階の「城主の間」。博物館が安土城をモチーフに造られたことから、豪華絢爛な安土桃山時代をイメージ

※2024年7月発行BILANC vol.34に掲載
構成:𠮷川明子 
撮影:梅田雄一 
編集:プレジデント社

「住民との交流続く“文化の天守閣”」

~郷土の歴史を象徴するお城の形の博物館

能勢電鉄「一の鳥居」駅のホームから望める高台に建つ立派なお城。こちらは大阪青山大学北摂キャンパスの大阪青山歴史文学博物館です。
博物館がある兵庫県川西市は、多田神社を擁する清和源氏発祥の地としても知られています。平安時代には源満仲が拠点とし、清和源氏発展の基礎を築きました。戦国時代には、その一派である塩川氏がこの辺りを治め、織田氏や豊臣氏との関係などで再注目されています。同大学の創設者である故・塩川利員(としかず)元理事長・学長も、塩川一族の子孫にあたるそうです。

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博物館の外観。城郭建築ができる職人を集めるのに苦労しつつも、“本物”を目指してつくり上げた。
 

塩川元理事長・学長は歴史や文化への造詣が深く、積極的に古文書や典籍などの収集を行っていました。これらを調査、研究、収蔵、展示するための施設として、1999年に大阪青山歴史文学博物館が開館したのです。
「この場所は、清和源氏発祥の地であるように、歴史的に重要な地域。近くに山下城があったこと、戦国時代に織田信長が来訪したことなどから、外観はお城にしようという話になりました。設計では安土城に代表される近世の天守閣を参考にしています」
そう話すのは、同大学教授で主任学芸員の小倉嘉夫さん。所蔵品の管理のほか、博物館で行われる大学の授業や、一般の人を対象にしたイベント・セミナーの講師役も務めています。

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本格的な城郭を模した博物館の入り口と地域を一望できる展望室

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2階の第1展示室

国宝・重美から、この土地ならではの文化財までを収蔵

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もとは平泉の中尊寺に収められていた「中尊寺経(紺紙金銀字交書一切経)」。
紺色の紙に、お経の文言が一行ごとに金字と銀字で交互に書写されている。
切り取られず、一巻がそのまま残るのは貴重。
奥州藤原氏の初代当主、清衡(きよひら)が奉納したもので、1120年頃に書写されたもの。

~イベントやセミナーで「地元密着」を模索中

約4000点ある収蔵品の中で、特に貴重なのは、国宝「土左日記」。800年近く前に著者自筆本から直接書写されたものです(藤原為家が嘉禎2(1236)年、蓮華王院にあった紀貫之自筆の「土左日記」を一字も違えずに書写したもの。一般的には「土佐日記」の表記で知られるが、この写本では「土左日記」と書かれている。)。

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土左日記。この時代の文学作品で、原著者の自筆本から直接書写したものが現存する例はとても少ない
(写真提供=大阪青山大学)。

ほかにも多数の収蔵品が国の重要美術品に認定されていますが、博物館の見どころは収蔵品にとどまりません。4階には「城主の間」を再現した特別展示室があり、部屋の両側のふすまと天井には、鮮やかな色彩の花鳥画が描かれています。ここでは高松宮家から大学に寄贈されたテーブルセットや箪笥も展示。さらに最上階には地域を一望できる展望室があり、妙見山や阪神間の街並みの眺望を楽しめます。

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高松宮家から大学に寄贈されたテーブルセット

博物館は、新型コロナウイルス感染拡大を境に休館中。しかし地域住民からの「地元の貴重な資料を見たい」という要望を受け、定期的にこの地域の歴史についてのセミナーや公開イベントを行っています。
「敷地内には立派な桜並木があるので、2022年からは地域コミュニティと連携して、『お城桜まつり』も開始しました。維持管理は大変ですが、地域に開かれた施設として継続できればと願っています」(小倉さん)

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川西市は三ツ矢サイダーの発祥地でもある。当時は「平野水」と呼ばれ、宮内省御用達でもあった。
この看板は約100年前のもの。

前回の博物館ご紹介の記事はこちら
恐竜学博物館(岡山理科大学)

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