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「姿勢改善」で健康を手に入れる!

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構成:江頭紀子 
撮影:加々美義人  
編集:プレジデント社  
画像提供:Shutterstock

BILANC33疲労回復のスキル 仲野孝明先生 姿勢治療家®
仲野 孝明氏(なかの・ともあき)
姿勢治療家®創設者、仲野整體東京青山院長。大正15年創業、仲野整體の4代目に生まれ、これまで0歳から108歳までのべ18万人以上の患者を治療する。著著は『一生「疲れない」姿勢のつくり方』(実業之日本社)、『長く健康でいたければ、「背伸び」をしなさい』(サンマーク出版)など。

「なんとなく疲れる」「朝からだるい」「やる気が出ない」それらの体調不良は、もしかすると“姿勢の悪さ”が原因かもしれません。悪い姿勢は、腰痛や肩こりだけでなく、全身の倦怠感や、気分の落ち込み、イライラなど、メンタル面にも影響を及ぼしてしまうのです。
それは、脳につながる「脊髄」が深く関係しています。脊髄とは、脳からつながる太い神経のことで、脳の指令を伝えたり、各器官からの情報を集めたりする重要な神経回路。その脊髄を守るのが背骨です。背骨が曲がると脊髄から出ている脊髄神経が圧迫されて、脳との情報のやりとりに支障が生じます。その結果、からだや心に不調をきたすのです。
肩が内側に入った猫背の姿勢は、見た目が美しくないだけではなく、肺が圧迫されて呼吸が浅くなり、酸素不足の状態を引き起こします。酸素が不足すると、疲労感の高まりやネガティブ思考など、感情面にも大きな影響があります。
からだも心も疲れにくくするためには、まず生活の中で「姿勢を意識してみること」。それから、「正しい姿勢で生活すること」を目指していきましょう。

~「背伸び」をすれば正しい姿勢に

着物を着て正座をする生活だった昔の日本では、帯によって背骨が支えられ、背筋のすっと伸びた人がたくさんいました。ところが、西洋文化が広がり、洋服と椅子の生活に変化するにつれ、だんだん姿勢が悪くなっていきます。さらに近年は、パソコンやスマートフォンの登場で、画面をのぞきこむようにうつむいた姿勢をとることが増えました。これでは、首の骨や筋肉に過度な負担がかかってしまいます。
もしかすると、「姿勢をよくしているよりも、椅子にもたれているほうがラク」という方もいるかもしれません。それは、からだが正しい姿勢をとれないほどに疲れ切っている証拠。「ラク」な姿勢を続けていると、そのまま介護生活へ突入してしまう危険もあります。
長年の癖を直すことは難しいと思われがちですが、今すぐ・誰でも・簡単に、姿勢を改善する方法があります。それは「背伸び」です。背伸びをするだけで背骨のラインが、その人にとっての“正しい位置” に戻るのです。

やり方は、
①足を平行にして肩幅に開き、親指と小指の付け根、かかとの3点を意識して立つ 
②手を正面で組んで手のひらを返し、肘を伸ばして腕を真上に上げていく。可能であれば、手の甲を見ながら顔も上げる 
③からだを上下に引っ張るように、思い切り伸ばす ④あごを引いて顔を正面に戻し、手を左右からゆっくりおろす、
というものです。からだが固くて手を上に伸ばせないという人も、習慣として繰り返すうちに、気持ちよく伸びるようになりますよ。

BILANC33疲労回復のスキル 仲野孝明先生

仕事中であれば、座ったままの背伸びもいいでしょう。背伸びができない環境なら、身長を測るときに背筋を正すようなイメージで、耳の後ろを上に引き上げてみてください。すると、「あごを引く」「胸を張る」「肩甲骨を寄せる」というきれいな姿勢になります。歩くときや走るときも、この姿勢を意識してみてください。
座る姿勢にも要注意。ポイントは、「正しい姿勢で座ること」
椅子に座るとき、背筋を伸ばしたまま股関節からおじぎをし、その体勢で腰を下ろします。背もたれと腰の間に隙間をつくらないこともポイントです。隙間ができてしまうときは、クッションやカバンを置いても大丈夫です。

~デスクワークは「立ってやる」が正解

背伸び以外にも、正しい姿勢づくりにつながる工夫はあります。
ビジネスパーソンにおすすめしたいのは、「立って仕事をする」こと
人間はそもそも二足歩行の動物で、立って生活するからだの構造になっているからです。背伸びが姿勢改善にいいとお伝えしましたが、ただ「立つ」だけでも、座るよりはずっといいです。長時間座りっぱなしでいると、徐々に背中が丸まってしまい、内臓が圧迫されて全身の血行不良につながります。
立って仕事をしていれば、ランチ後に眠くなることもありません。むしろ、集中力が高まり効率的に働けるという人が多いです。ところが、実際は「1日のうち12時間座りっぱなし」という人がほとんど。本当は、立つ・座る・眠るが、それぞれ8時間ずつの状態が理想的です。それは難しくても、座りっぱなしではなく、1 時間に1 回程度は立ち上がるようにしてください。
もう1つ試していただきたいのが、パソコンのモニターの位置を目線の高さまで上げること。高さを調整できるスタンディングデスクや、パソコンスタンドを活用するといいでしょう。特に、ノートパソコンを使うときは、首を傾けて背中を丸め、モニターをのぞきこむ姿勢になってしまいがち。パソコンスタンドと外付けキーボードを使い、モニターの位置を目線と同じにすると疲れにくいです。

BILANC33疲労回復のスキル 仲野孝明先生

姿勢を改善することは、人生を豊かにすることにもつながります。
とある50代の女性患者さんは、頭痛や肩こりがひどく、リンパの流れが滞って足がむくみ、鬱を発症して会社を休職。病院に通っても改善せず、私のところに来ました。姿勢を変えて背骨を正しい位置に戻したところ、まず全身の動きがよくなりました。だんだんと本人の治癒力が高まり、なんと半年後にはテニスをするまでに回復。自分に自信がつき、復職時期を勤務先と相談しているところです。

1つでいいのでていねいに続ける

姿勢の話をご紹介しましたが、健康になるためにまず大事なのは「睡眠」です。「食事」はからだをつくる原材料として、「運動」は全身の血流循環のために必要です。それらの土台が、正しい骨格や姿勢などの「構造」。人間しかコントロールできないといわれている「呼吸」を深くおこなえば、「精神」を安定させることができます。私は、これら6つをバランスよく実践することが、健康寿命を延ばすことにつながると考えています。
ここで紹介した姿勢改善は、すべて完璧にやる必要はありません。最初のハードルは低くして、1つでもいいので、できそうなことを「ゆっくり、ていねいに」続けるのがコツです。毎日繰り返せば、自然にもう1つ試したくなり、やがて疲れにくいからだが手に入ります。
また、自分のからだに対して、劣化のイメージをもたないことも大切。気分はからだに大きく影響します。年齢を重ねることでからだが劣化していくイメージは捨て、「昨日よりも、からだがラクな気がする! 」と、ポジティブに“勘違い”しましょう。人生の中で今日がいちばん若い日なのですから、始めるのに遅すぎることはありません。

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