広報活動

ごみを堆肥に、堆肥を野菜に。 農園&学食一体で循環を!

 一覧に戻る

Campus × SDGs vol.03

SDGs_立命館大学

構成:桑原奈穂子 
写真:立命館大学 
編集:プレジデント社

~処分していた落ち葉を腐葉土にできないか

人文科学・社会科学・自然科学にまたがる16学部、22研究科を持つ立命館大学。
「自由と清新」の建学の精神、「平和と民主主義」の教学理念のもと、確かな学力の上に、豊かな個性を花開かせ、正義と倫理を有した地球市民として活躍できる人間の育成に努めています。同学のSDGs活動は、2018年夏、2030年に向けた学園のビジョン策定にあたって「挑戦をもっと自由に」を掲げたことがきっかけ。さまざまな教育・研究・学生活動をSDGsの視点で見える化し、取り組みを加速するため、立命館SDGs推進本部を設置するとともに、多岐にわたる実践的な取り組みを続け、特設サイト「立命館×SDGs 」で発信しています。
その一つが、2019年末から始まった衣笠キャンパスでの「腐葉土プロジェクト・きぬがさ農園プロジェクト」。その一翼を担う、総務部衣笠キャンパス地域連携課課長の大場茂生さんは、当時をこう振り返ります。
「山に近いこともあって、キャンパス内には大量の落ち葉が積もります。京都市のしまつのこころ条例もあり、一般廃棄物として処分していた落ち葉を腐葉土にできないかと考え、しばらく落ち葉を溜めてみたのですが、ものすごい量で『やっぱり処分しようか』と弱気になっていました(笑)。そんなとき、国際関係学部1回生の阿部桃子さんが地域連携課を訪れ、『大量の落ち葉を活用しないのはもったいないです!』と、必死の様子で訴えてきたのです」
検討の結果、腐葉土を活用できる農園も整備することに。阿部さんが立ち上げた学生団体「きぬがさ農園Kreis(クライス)」と地域連携課が協力しながら、2020年2月より腐葉土づくりを開始し、キャンパス内の遊休地を利用した農園整備にも着手しました。
「新型コロナウイルス感染拡大が始まった時期ですが、屋外のため感染対策を徹底しながら活動を続けることができました。学生や教職員、コロナ禍で休校になった小学校の児童たち、近隣の方々などが楽しみながら畝づくりや野菜の苗植えなどに参加してくれました」
農園は2020年5月に整備が完了し、夏には腐葉土の第1号が完成しました。以降、かぼちゃ、にんじん、ほうれん草など、さまざまな野菜を栽培。近隣の方たちに配布するとともに、キャンパス内の食堂で活用しています。

SDGs_立命館大学
農園で栽培した野菜は学食メニューに

「農園で採れた野菜を使ったメニューができると告知チラシで配信するのですが、学生も教職員も『おいしい!』と喜んでくれます。私たちは落ち葉を腐葉土にし、野菜をつくり、皆さんがその野菜を食べてくれる。衣笠キャンパス全体で、SDGsの実現に向けたサイクルを回しているわけです」
腐葉土にした落ち葉の量は、2020年には1万3000L、翌年には1万6000Lになります。3名からスタートした「きぬがさ農園Kreis」も、総勢33名となりました。活動参加者は、2022年2月15日時点で、近隣住民が延べ620名、学生・教職員を加えると延べ1600名にのぼっています。

SDGs_立命館大学
野菜づくりは地域連携のもと行っている。
SDGs_立命館大学
落ち葉から始まったSDGs活動。現在では食品廃棄物や馬糞も活用。

~「実践と啓発の同時進行」によりSDGsの実現を目指す

衣笠キャンパス地域連携課の取り組みはさらに広がっています。生命科学部4回生の隅田雪乃さんが代表を務める学生団体「Uni-Com(ユニコーン)」と協働しながら、キャンパス内の食堂で消費期限切れになったカット野菜や売れ残った食品など、これまで生ごみとして処分していた食品廃棄物の堆肥化に挑戦しているのです。
 「Uni-Com」は、「大学SDGs ACTION! AWARDS 2021」(朝日新聞社主催)において、地域単位で食品ロスを資源として循環させる、いわゆるサーキュラーエコノミー(循環型経済)構想についてプレゼンし、見事、準グランプリを獲得。しかし、その構想を実現するためのフィールドがなかなか見つからないという課題を抱えていました。
「一方、私たち地域連携課ではごみ排出量のさらなる削減に向け、2020年度後半から食品廃棄物を土壌に埋めて堆肥をつくる取り組みを進めてきましたが、このやり方は病原菌の問題などが残るため、新たな方法を模索していました。そんなとき、SNSで私たちの取り組みを知った『Uni-Com』から連絡をもらったのです」
こう説明するのは、衣笠キャンパス地域連携課の田中真也さん。「Uni-Com」のビジョンに共感するとともに、彼女らが提案する完熟堆肥の作成方法に関心を持った田中さんたちは、「Uni-Com」との協働をスタートさせました。
「専門家の指導を受けながら、2021年8月20日から3カ月をかけて約470kgの食品廃棄物の一次発酵処理を行い、その後二次発酵処理に移行し、毎日60℃を超える高温を維持しながら、滅菌と完熟堆肥化に取り組んできました」
こうした努力の甲斐あって、完熟堆肥は無事完成。こののち成分分析を行い、実用の段階に入るといいます。
「それだけでは飽き足らず、現在は馬糞の堆肥化にも取り組んでいます(笑)」と語るのは、同じく衣笠キャンパス地域連携課課長補佐の櫻井稔也さんです。同学の馬術部で飼育している12頭の馬からは年間84tの馬糞が発生し、その処理は業者に委託しています。
「本学の馬糞は現在でも堆肥化され活用されていますが、自分たちで馬糞堆肥を作成し、きぬがさ農園や近隣の農家に提供するとともに、収穫した野菜をキャンパス内の食堂で使うことで新たなSDGsサイクルを構築したい。その思いから、2021年11月より馬術部員とともに、馬糞の堆肥化に取り組んでいます」
「地域連携課が大切にしているのは、実践と啓発の同時進行」と、大場さんは言います。
「啓発だけではSDGsは前に進みません。持続可能な未来の創造の重要性を共有し、忙しい中で時間を割いて協働した結果、成果の端緒を確認できたときにはじめて活動の方向性が見え、信頼で結ばれたネットワークが構築されます。その継続がさらに強固なネットワークを構築し、SDGsを前に進めていくことにつながるのだと思います」
実践と啓発の同時進行でSDGsを推進する立命館大学衣笠キャンパス―。今後の活動が大いに楽しみです。

Top