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やる気ゼロでも その気になれる秘策集

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撮影:石橋素幸 
編集:プレジデント社

早稲田大学の枝川教授に、脳神経科学の視点から、業務の効率アップにつながる知恵を教えていただきます(脳のカラクリ 第2回)。

BILANC27「脳のカラクリ」 早稲田大学理工学術院教授
枝川 義邦氏(えだがわ・よしくに)
早稲田大学理工学術院教授。脳神経科学者。『「脳が若い人」と「脳が老ける人」の習慣』(明日香出版社)など、著書多数。

~「やりとげ宣言」で、引くに引けない状況に

やる気とは、身近でありながら、なかなか思い通りにいかないものの代表でしょう。前回は、ご自身の「真の欲求」に目を向けることが肝要であるとお話ししました。多くはこれで、「やる気のスイッチ」が入るものです。
自分の内面から湧き出るような「これがしたい!」という対象があるならば、同時にやる気も湧き出ています。
あるいは、あまり気乗りのしない対象であっても、「これをこなしたら、念願のあれをしよう」などと、先の楽しみを想像することも、重い腰にムチ打ってなんとかやり遂げる手段としては有効でしょう。
さらに、まったく気乗りせず、やり遂げる自信がない対象の場合は、宣言してしまうのもひとつの方法です。仕事の場面では、自らが担当することを周囲に伝えるのです。禁酒・禁煙やダイエットなど、甘い誘惑になびいてしまいそうな対象でも、近い人に宣言することで、引くに引かれぬ状況をつくることができます。つまり、自分の内面から湧き出る内発的動機づけや「ご褒美」をぶら下げる外発的動機づけだけでなく、対象にコミットメントを示すことも有効なのです。

~最初の1行を書けば、やる気が湧き出る

しかし、何をしても、何を考えても「やる気が出ない」という対象もあるでしょう。そのときには、先に行動を始めてしまうのです。一般的には、欲求が高まったことでモチベーションのスイッチが入り、行動に移せるようになります。しかし、先に行動を始めることによっても、モチベーションが高まることがあるからです。
気の向かない報告書でも、最初の1~2行だけでも書いてみれば、継続しやすくなるものです。これは、脳の仕組みをうまく活用した方策ともいえます。やる気が高まるときには、脳内の「報酬系神経ネットワーク」の活動性が高まっています。やる気が向く何らかの対象が見つかったときに、この神経ネットワークが働いて、行動に移しやすくなるのですが、先に行動を始めてしまっても、報酬系は活動を始めることが知られています。
つまり、やる気が高まり、行動のスイッチが入って、はじめて重い腰を上げるのではなく、先に「えいやっ」と行動を起こすことで、やる気のスイッチを入れるのです。このときの行動は、小さなステップで構いません。
長い報告書も最初の数行、自宅での食器洗いやアイロンがけも最初の1枚をきれいにこなすことで、次もやってやろうかという気になるものです。そうなれば、しめたもの。やる気のスイッチは入りかけています。すかさず、完成した状態をイメージしたり、「目の前のやっかい事をこなしたらどんなご褒美を用意しようか」と想像したりして、扱いにくいやる気を育てていきましょう。たとえやる気に満ちてこなくとも、「千里の道も一歩から」の境地で、粛々と進められるようになるでしょう。
とはいえ、ここまで仕掛けをしても、もう、どうにもこうにもやる気がでないときもあるでしょう。そんなときは、思い切って立ち上がり、ヒーローが登場するときのように腰に手を当てたり、勝利のガッツポーズを先に取ったりしてしまいましょう。もちろん笑顔で。腹の底から笑い声を出すのもよいのです。ウルトラマンが限られた時間で平和を取り戻すかのように、制限時間を経たあとには、ご自身も達成感に満ちた状態になっていることを想像するのです。
猛々しいポージングやタイムプレッシャーがかかった状態では、体内で戦闘態勢に入る仕組みが働きます。そこにやる気もついてきてくれることを期待しながら、立ち上がったその足でやるべき事に向かってしまうのです。何とか始めて、ハッピーエンドを迎えましょう。

BILANC27「脳のカラクリ」

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