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お部屋でリラックス。「色」と「香り」の魔法

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構成:熨斗秀信 
編集:プレジデント社

大切なのは視覚や嗅覚への意識。思わぬ好みが見つかることも

BILANC23「癒やしの処方箋」高須先生 カラーコーディネーター・アロマコーディネーター
高須 佳美氏(たかす・よしみ)
「オフィスアルモニ」代表。日本ではじめて「色と香りのハーモニーセラピー」を確立。カラーコーディネーターとして、講演多数。ほか景観アドバイザー、イメージコンサルタントなど幅広く活動中。アロマコーディネーターとして南仏で調香を学び、香水や化粧品などの商品開発プロデュースや、心身のセラピストとして公共のリラクゼーション空間をプロデュースしている。

~「騒色」と「香害」の時代にコロナ禍が…

今、新型コロナウイルスの影響で、たくさんの方が経験したことのないようなストレスを感じていると思います。
色と香りについて授業や講演をしていると「どうしたらストレス軽減になるのか」といった相談を受けることが、大変多くなりました。従来とは異なる生活様式を強いられている状況で重要性を増しているのが、視覚でとらえる「色」と嗅覚でとらえる「香り」です。なぜなら人は無意識のうちに多くの色と香りに触れ、そこからさまざまな影響を受けるからです。色と香りは共感性が高いので、うまく掛け合わせれば、心と体への癒やし効果など好影響をもたらします。今回は、色と香りを意識する重要性と、生活の中でうまく取り入れる方法をご紹介します。

BILANC23「癒やしの処方箋」高須先生

コロナ禍は、色と香りの意味が大きく変わるきっかけとなり得るでしょう。従来ではあまり意識されていなかったかもしれませんが、現代人の生活は色と香りが過剰で、ストレスに満ちたものとなっています。私たちの生活は、さまざまな色を発するスマートフォンやパソコンが密接に関わっていますが、多くの色にさらされると、人間は落ち着かず疲れてしまいます。このような状況を私は「騒色」と名付けています。
香りに関しては、たとえば柔軟剤。数百種類と商品がありますが、人工的で過剰な香りのものが多いです。子どもたちに金木犀の香りを嗅がせると、トイレの消臭剤の匂いを思い出してしまう、といった話もあります。私たちは、商品の過剰な香り付けにごまかされ、あるがままの自然の香りを感じる機会を失いつつあるのです。これを「香害」と呼んでいます。
このような、色と香りの供給過多である「騒色」と「香害」の時代に、突然コロナ禍がやってきました。私たちの生活は大きく変わりましたが、マイナス面だけに着目するのではなく、これをひとつの契機として捉えてみてはいかがでしょうか。

~今こそ自分にとっての「心地良さ」を探す機会

コロナ禍において、何が大きく変わるかといえば「自分の五感に意識を向けるようになること」でしょう。
従来、色と香りは外向きのコミュニケーションツールとして使われていた面がありました。服や香水といった、いわゆる「おしゃれ」の一環です。しかし、コロナ禍においては社会や他人との接触が少なくなりました。外の世界が閉ざされがちな今こそ、自分の心身の健康のために、色と香りを意識していくことがストレス軽減につながっていきます。色と香りは人それぞれ好むものや不快に思うものが異なります。自分にとって「何が心地良い色なのか」「どんな香りが落ち着くのか」ということを見つけられたら素晴らしいですね。外の世界では「騒色」「香害」があっても、色や香りの好みや判断基準があれば、必要以上に疲労することなく生活できるはずです。

~色と香りの共感性を重視した掛け合わせを

色は視覚、香りは嗅覚が関係しているため、まったく別のものですが、共感性が高いものを掛け合わせると、心と体により大きく影響します。
共感性の高い色と香りの組み合わせとして、入浴剤を例に出すと、「黄色」で「柚子の香りがするもの」、「紫色」で「ラベンダーの香りがするもの」は相乗効果が高いと考えられます。これが柚子の色ではない青色だったり、ラベンダーの色ではない黄色だったりすると、色や香りのそれぞれの効果が薄れてしまいます。こうした共感性は人間に先天的に備わっているものが多いのです。
また、色や香りの共感性は、年齢や性別に左右されるものではありません。ただし先入観が邪魔して、癒やし効果を損なってしまう場合があります。子どもが感覚的に鋭いのは、知識が無いからなのです。色と香りを楽しむ上では思い込みは不要です。深く考える必要もありません。「海は青いもの」だから落ち着く、「レモンは酸っぱい匂いがするもの」だから苦手といった理性的な認識はひとまず横に置いておいて、感覚に身を浸しましょう。五感を研ぎ澄ませることで、新たな好みに気付いたり、思わぬ癒やしの効果を得られたりすることがあります。

BILANC23「癒やしの処方箋」高須先生

コロナ禍を、新たなストレスケアの方法を生み出すきっかけに

自宅で手軽にできる相乗効果の癒やし術

外出を控えるコロナ禍において、自宅でできる色と香りによる癒やしは重要ですね。歳時記にもあるように、日本人は古くから色と香りを「四季」と深く結びつけてきました。「騒色」「香害」のない時代に生きた先人の知恵にあやかり、季節性を取り入れていきましょう。ここでは具体的な方法を、いくつかピックアップしてみます。
まず食事です。料理の色取りを豊かにしましょう。栄養素を細かく計算しなくても、色彩が豊かな食事には具材が多く使われているものです。香りの面では、旬のものを取り入れると掛け合わせがうまくいくでしょう。これからの寒い季節は、具材豊かな鍋料理に柑橘系(ゆず・かぼすなど)を入れると、見た目が華やかですし、香りも良く大変おすすめです。
あとは入浴時ですね。オレンジや黄色系で、柑橘系の香りがする入浴剤を入れるのは手軽ですし、冬至にゆず湯に入るのは色と香りの面から見ても、理にかなっています。ただのお湯より体が温まるし、素肌に触れるお湯の色と香りに癒やされます。
在宅ワークでも職場でも使える方法としては、温かいハーブティーがおすすめです。ピンク系のローズヒップ、グリーン系のミントなど、こちらも色と香りがリンクしています。湯気が出て香りが拡散すると、より相乗効果が高まります。
また、今では欠かせない外出時のマスクですが、長時間付けていると息がこもって不快です。その場合はマスクに自然のアロマオイルを付けると気分が上がります。
マスクはカラーバリエーションが豊富なので、香りとの共感性を意識して調和させてみると、ストレス軽減の効果は大きくなります。
コロナ禍という環境の変化をきっかけにして、今まで当たり前に見えていた色や気付かなかった香りをしっかりと意識していくと、この先の人生でも応用できるストレスケア術となることでしょう。

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