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令和元年の私立学校法改正を受けた各大学の取り組み及び新型コロナウイルス感染症対応について

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文部科学省高等教育局私学行政課長の松坂浩史氏から、令和元年の私立学校法改正を受けた各大学の取り組みについて、新型コロナウイルス感染症対応を含め、特別寄稿をいただきました

BILANC22特集記事 お話を伺った方
松坂 浩史 氏:
文部科学省高等教育局私学部私学行政課課長

※2020年9月発行BILANC vol.22に掲載
撮影:加々美義人

2019(令和元)年5月、私立学校法の改正を含む「学校教育法等の一部を改正する法律(令和元年法律第11号)」が成立、公布されました(図表①参照)。

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この法律は、学校教育法における認証評価制度の改善や、国立大学法人法における一法人複数大学設置を可能とするもので、私立学校法に関しては、いわゆるガバナンス関連のさまざまな規定が新たに整備されることとなりました。
今回の改正に至る背景や具体的な私立学校法改正の内容とともに、各大学において対応等が必要とされる事柄にはどのようなものがあるのか、具体的にみていきます。
また、新型コロナウイルス感染症を受けて、感染拡大防止のために各大学では事務体制の縮小や在宅勤務などを積極的に進めているところですが、これにより学校運営等に支障をきたす恐れが生じています。そこで文部科学省では、新型コロナ禍における私立学校法の運用について通知や事務連絡を発出しているので、これらについても確認していきます。

~ 法改正の背景

今回の改正は、大学設置・学校法人審議会学校法人分科会のもとに設置された学校法人改善検討小委員会でとりまとめられた報告を基本としたものです。
この小委員会の報告は、冒頭で「戦後、学校法人制度は、財団法人制度を沿革としつつ、学校教育という高い公共性を有する公教育を担う機関として、学校法人にふさわしいガバナンスを強化し、社会からの信頼を受け得る制度として歩んでいる」としています。そして、学校法人制度の意義・役割を述べたうえで、「学校法人制度においては、私立学校の自主・自律を基本として、所轄庁の指導・監督は抑制的であるべきであり、学校法人内で運営上の諸課題が生じた場合、自らの手で解決していくことが基本」との認識を示しています。
そのうえで、「他の法人制度の改革が進む中、(中略)学校法人制度についても社会の変化に対応し、公教育を行う機関としてふさわしいガバナンスに向けた不断の見直しが必要」として、制度改善・運用改善を含め、学校法人制度に係る各種の事項について提言されました。
わが国の教育に大きな役割を担う私立学校が、今後も社会からの信頼と支援を得て重要な役割を果たし続ける―。そのためには、学校法人の自律的で意欲的なガバナンスの改善、経営強化の取り組み、情報公開の充実などにより、学生が安心して学べる環境を整備することが欠かせません。
こうした観点から、法人制度の在り方について提言がなされ、提言に基づく法改正事項の検討を経て、今回の法改正に至りました。

~ 改正の概要

今回の私立学校法改正の改正事項は4つに分類されます(図表②参照)。以下、各項目を概説します。

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(1) 役員の職務及び責任の明確化等に関する規定の整備
まず、学校法人の責務として、自主的に運営基盤の強化を図るとともに、設置する私立学校の教育の質の向上及び運営の透明性の確保を図るよう努めることが新たに規定されました。
次に、役員である理事及び監事にかかる規定として、善管注意義務を負うこと、学校法人及び第三者に対する損害賠償責任を負うこと、学校法人から役員等に対する特別の利益供与が禁止されることが規定され、これまで民法の規定上学校法人の役員に適用されていたことが、私立学校法で明確化されました。
損害賠償責任としては、役員に任務懈怠があった場合の学校法人に対する損害賠償責任とともに、役員が職務を行うにつき悪意又は重大な過失がある場合の第三者に対する損害賠償責任や役員の連帯責任の規定が置かれました。また、学校法人に対する損害賠償責任は、一般社団・財団法人法を準用し、賠償責任の免除・軽減や非常勤理事等について責任限定契約を締結することが可能であると規定されました。
理事に関する規定の整備としては、理事会の議事について特別の利害関係を有する理事の議決権の排除や、競業及び利益相反取引をしようとするときは理事会に重要な事実を開示し承認を受けなければならないものとすること、学校法人に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見したときには監事へ報告しなければならないことが規定されました。
監事に関する規定の整備としては、理事の業務執行の状況を監査することが明確化されました。
加えて、新たに3つの権限が規定されました。それが、学校法人の業務等に関し不正の行為等を発見し、その報告に必要な場合の理事会の招集請求権、理事会又は評議員会の招集の請求があったにもかかわらず一定の期間内に招集しなかった場合の理事会又は評議員会の招集権、理事が学校法人の目的の範囲外の行為等をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合、当該行為によって学校法人に著しい損害が生ずるおそれがあるときの理事の行為に対する差止め請求権です。
評議員会についても、その機能の報酬基準についての意見を聴くこととされました。

(2) 情報公開の充実
今回の改正では、情報公開について、平成16年の私立学校法改正以来の大幅な充実を図ることとしています。まず、寄附行為については、各事務所への備置き及び閲覧に関する規定が新設され、正当な理由がある場合を除いて一般の閲覧に供することが必要となりました。また、役員等名簿(理事、監事及び評議員の氏名及び住所を記載したもの)の作成と一般閲覧(氏名のみ)が規定されました。
次に、役員報酬基準について、民間事業者の役員の報酬等及び従業員の給与、当該学校法人の経理の状況その他の事情を考慮して、不当に高額なものとならないよう、支給の基準を定めなければならないとされました。そのうえで、一般閲覧及び公表が必要とされました。
なお、財務書類等については、これまで利害関係人に対する閲覧のみでしたが、今回の改正で一般閲覧となりました。ただし、都道府県所轄の学校法人にあっては、これまでと同様です。

(3) 中期的な計画等の作成
学校法人は公教育を担う法人として、安定した経営が求められます。特に文部科学大臣所轄法人は、高度人材育成の機関として、求められる教員・施設設備が多く、また、専門分化が進み、専攻により転学が容易ではない状況を踏まえると、中長期的視点に立った計画的な経営が求められます。
このため今回の改正で、文部科学大臣が所轄庁である学校法人は、事業に関する中期的な計画を作成することが義務付けられ、その作成に当たっては、認証評価の結果を踏まえるとともに、評議員会の意見を聴かなければならないこととされました。
中期的な計画は、教学、人事、施設、財務等に関する事項を盛り込むとともに、中長期的視点で経営の計画を立てる必要がある観点から、原則として5年以上の期間とされています。その内容及び期間については、法人規模等に応じて各法人で適切に判断すべきですが、抽象的な目標に留まらず、データやエビデンスに基づく計画とすることが望ましいのは当然です。

(4) 破綻処理手続きの円滑化
現行の私立学校法では、学校法人が法令の規定等に違反し、他の方法により監督の目的を達することができない場合には、当該法人に対して解散命令を発出することとされています。この場合、当該学校法人の理事が清算人となることとされていましたが、理事にも問題があり、清算人に就任させることが適切ではないことも想定されます。そこで、学校法人が所轄庁の解散命令により解散した際、所轄庁は利害関係人の申し立てにより、又は職権で、清算人を選任するものとされました。

~ 学校法人ガバナンスの強化

今回の私立学校法改正や、自主的な取り組みとしての私立大学版ガバナンス・コードをはじめとする取り組みは、学校法人制度上の大きな改革です。制度改正の趣旨を踏まえた運用が各学校法人で行われることが重要であると考えます。
また、小委員会の報告では、今後の検討課題として、会計監査人による監査の根拠規定を私立学校振興助成法から私立学校法に移すことや、学校法人制度会計基準の改善、情報公開の在り方などが提言されています。
さらに、令和元年度の骨太方針では、今後検討される公益法人制度の改革などを踏まえ、学校法人についても制度改正に向けた速やかな検討を行うことが盛り込まれ、文部科学省においても有識者会議を設置して検討を進めているところです。
学校法人では今後も引き続き社会の要請に応じたガバナンス強化に向け、制度の不断の見直しを図っていくことが求められていると考えます。
令和元年の私立学校法改正は、わが国の教育に大きな役割を担う私立学校が、今後も社会から信頼と支援を得て重要な役割を果たし続けるため、学校法人の自律的で意欲的なガバナンスの改善を図り、学生が安心して学べる環境を整備するところに、その目的があります。
この点、私立学校教育に携わる関係者の方々のご尽力なしには実現されないものです。新型コロナ禍の特殊な状況下ではありますが、特段のご理解をいただき、積極的に進めていただきたいと考えています。

~ 新型コロナ対応

今般の新型コロナウイルス感染症の発生により、各学校法人では、設置する学校の休業要請を受けた臨時休業や分散登校などの対応や、いわゆるテレワークを積極的に進めるなどの職員の働き方の見直し、都道府県域を越えた移動に対する自粛要請などを受け、円滑な学校法人業務の遂行に大きな影響が生じています。
このような影響を踏まえ、文部科学省私学行政課では、学校法人の運営に関する理事会の開催方法や決算等の取り扱いについて、必要な事務連絡等を発出しています(図表③参照)。

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