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学生の心をケアする簡単メソッド!

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構成:桑原奈穂子 
撮影:石橋素幸 
編集:プレジデント社

パワーアップクエスチョンで学生の気持ちをポジティブに!

BILANC22「一億総模索時代」加藤先生 米国NLP協会認定トレーナー
加藤 史子氏(かとう・ふみこ)
日常生活で簡単に活用できるメンタルメソッドを開発し、講演や講座、執筆活動で伝えている。現在は「こころ講座オンライン」やオンラインカウンセリングも実施。二児の母。著書は『HEARTTHINKING』(プレジデント社)、『人生を整える「瞑想」の習慣』(日本実業出版社)など多数。

~今、多くの学生が喪失感を抱えている

コロナ禍により多くの大学では休講やオンライン授業への移行を余儀なくされました。同時に、部活動やサークル活動、学園祭、インターカレッジ、学生発表会、留学など、さまざまな活動や行事が延期・中止に追い込まれています。そうした中、多くの学生は心にぽっかり穴が空いたような喪失感を抱えていると考えられます。特にインカレで優勝したい、留学したいなど目標に向かって努力してきた学生は、目標を失った喪失感が大きいでしょう。
喪失感をそのままにすると、「コロナ禍のせいで目標を達成できなかった」というネガティブな意識を持ち続けることになります。そうならないためには自分自身で新たな目標を見つけることが大切であり、教職員の皆さんはそれをサポートしてほしいと思います。
その際に活用できるのが、相手が元気になる質問をさりげなく投げかける手法「パワーアップクエスチョン」です。質問にポジティブな未来を描けるような前提を埋め込みます。「何をしているときが楽しい?」という質問がその一例。この質問には、「何かをして楽しいときがある」(どんなときでも楽しいことはある)という前提が埋め込まれているので、問われた側は楽しいことに意識が向き、気分が明るくなっていくのです。このことを活用した、喪失感を抱えている学生向けのパワーアップクエスチョンが図表①です。

BILANC22「一億総模索時代」加藤先生図表

相手がすぐに答えられなくてもかまいません。学生の中に「自分にできることは何だろう」と、人生における新たな目標を考え始める“種”を植えるのです。問いの答えを探し続けることで、その学生の人生はより豊かなものになっていきます。

~安心できる言葉がけで不安を和らげる

喪失感の他に、強い不安や焦りを感じている学生も多いでしょう。コロナ禍は終息の兆しが見えず、企業の倒産など社会情勢は不安定さを増し、さらにこれから未曽有の就職難が訪れるだろう……。こうしたさまざまな要素が合わさり、心がザワザワするような、言いようのない不安や焦りを感じていると思います。
そうした学生と会話をする際は、さりげなく相手と呼吸を合わせ、相手の話しているスピードに合わせてうなずきや相づちを入れながら話を聞きましょう。人間は自分とテンポを合わせてもらうと無意識のうちに安心感や好感を覚えます。そのため、呼吸を合わせてもらうと安心感に包まれた感覚になり、落ち着くことができるのです。一般的に人間は認められないと不安になります。反対に、受け入れられると安心です。ですから話を聞くときには、否定をしてはいけません。
そして機会があれば、不安を感じたときに心の落ち着きを取り戻せる呼吸法を教えてあげてください(図表②参照)。私たちの呼吸は不安やストレスを感じると浅く速くなり、リラックスすると深くゆっくりになります。このように呼吸と感情は密接につながっているため、呼吸を意識することでストレスの状態をコントロールできるのです。

BILANC22「一億総模索時代」加藤先生図表

あえて「コロナ禍でよかったこと」を聞いてみるのもおすすめ

~明るい未来へのパラダイムシフトを

コロナ禍というように、確かに新型コロナウイルスは危機的な状況を招きました。しかし、学生にはそうしたマイナスの面だけを見るのではなく、困難の中にもプラスの面やチャンスを見つける力を養ってほしいと思います。
こうした考えから、私は講師を務める短期大学で「コロナ禍においてよかったと思うこと」というテーマでレポートを書く課題を出しました。すると、「家でゆっくり過ごすことができた」「家族との時間を楽しめた」「家族で食卓を囲んだ時間がとても豊かだった」など、驚くほどたくさんのよかったことを書いてきてくれたのです。そして、多くの学生が「自分はこれまでネガティブな考えをしがちだったけれど、それをポジティブな考えに変えていく方法がわかった」といった感想をくれました。
私は授業のレポートという形で実施しましたが、「コロナ禍で大変だけど、その中でもよかったことはある?」「これを機に成長できたと思うことはある?」などと問いかけるのもよいでしょう。大切なのは、明るい未来へパラダイムシフトできる言葉がけを行うことです。

~教職員自身の発想転換が不可欠

ここまで、コロナ禍で喪失感や不安を抱えている学生に対する望ましい言葉がけについてご紹介してきました。
しかし、カリキュラムの遅れや先行きの不透明さ、学生の就職難などで、実は教職員の皆さんも大きな不安やストレスを感じているのではないでしょうか。
そうであっても「社会はどうなってしまうのだろうね」「就職も厳しくなるよね」といった否定的な憶伝わります。教職員が不安になると学生も不安になるのです。教職員の皆さんには「Everything OK!何が起きても大丈夫。すべては最善の方向に向かっている!」ぐらいのポジティブな心持ちでいてほしいと思います。すぐには難しいかもしれませんが、ご紹介した呼吸法を取り入れたり、「○○でなければならない」という思考を排除して、「何が起きても大丈夫!」と繰り返し自分に言い聞かせたりすることで不安が和らぎ、ポジティブな考えに切り替えていくことができるでしょう(図表③参照)。

BILANC22「一億総模索時代」加藤先生図表

コロナ禍において、学生の心のケアの鍵は、「ポジティブな未来をどう描けるか」です。まずは教職員の皆さんが希望に満ちた未来を心から信じ、それを全身全霊で伝えてあげてください。

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