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実践! 免疫力アップの食事・運動・睡眠法

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構成:田之上信 
撮影:石橋素幸 
編集:プレジデント社

日光浴は免疫機能を調節する「ビタミンD」の体内合成に効果あり

BILANC22「一億総模索時代」白澤先生 医学博士
白澤 卓二氏(しらさわ・たくじ)
白澤抗加齢医学研究所所長、お茶の水健康長寿クリニック院長、千葉大学予防医学センター客員教授。寿命制御遺伝子の分子遺伝学などを専門とし、『100歳までボケない101の方法』(文春新書)『老いに克つ』(ベスト新書)など著書300冊以上、テレビ出演多数。小誌読者のために厳選した最新情報を配信するメルマガ登録はhttps://shirasawatakuji.com/resitert/bilancから。

~バランスのよい食事を静かに食べる

新型コロナウイルスは10~20 代の感染確認が多く、しかもそのほとんどが無症状であることが報じられています。であれば、若者と接する機会が多い本誌読者の皆さんは、いっそう注意深く感染予防に努めていただきたいものです。そのために採り入れたいのが、コロナウイルスに負けない体力づくりで、特に体の免疫力を高めることが重要です。ここでは「食事・運動・睡眠」の3つの観点から、いくつかの免疫力アップの方法をお伝えします。
感染症予防で最近注目されているのが「ケトン食」です。本来はてんかんの治療食として米国で臨床応用されてきたダイエット法で、体内でつくられるケトン体に注目したものです。糖質(炭水化物)を厳しく制限し、カロリーの大半を脂肪で摂取するものですが、私が推奨する「白澤式ケトン食」はもう少し緩やかで、糖質を控えながら肉・魚・野菜を積極的に食べるように指導しています(図表①参照)。

BILANC22「一億総模索時代」白澤先生図表

まずは、少しずつ糖質の量を減らしていきましょう。肉は脂肪の少ない赤身を選びます。魚は青魚がおすすめ。タンパク質のほか、コレステロールを減らす不飽和脂肪酸のEPAやDHAが豊富に含まれるからです。
野菜は、緑黄色野菜を多く摂るようにしましょう。腸内環境を整える働きのある発酵食品も、免疫力アップに非常に効果的です。多くの種類がありますから、積極的に食事に採り入れましょう。以上のような食材を中心に、バランスよく摂ることが大切です。
なお、コロナウイルス感染予防の観点から、食材のほかにもう一つ大事なことがあります。それは食べる環境です。大学等の教職員の中には、学校の教職員食堂などで昼食をとられる方もいると思います。しかし、食事は「密」でない状態でとることが大切。食堂が閉鎖空間なら避けたほうが望ましいですし、会話は控えめにしましょう。

~日中の運動が有効睡眠は1日7時間以上

適度な運動も、感染症に負けない体づくりに不可欠です。免疫細胞を含む体の機能を高めるためには、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の予防が重要になります。基礎疾患のある人はコロナに感染した場合に悪化しやすいこともわかっています。運動といっても、本格的なスポーツである必要はありません。軽いジョギングや室内でのヨガなど、ゆっくりと深い呼吸をしながらできる運動がおすすめです。
昼食後に、大学内の庭や学外周辺を散歩するのもいいと思います。その場合、階段の上り下りなどをコースに入れるといいでしょう。階段は、段差が不規則であったり、傾斜がイレギュラーであるほうが体のためになります。郊外型キャンパスなどで傾斜地があるのなら、そうしたエリアを歩くようにしましょう。
日中の散歩は、もう一つ大きな効果があります。日光(紫外線)を浴びることでビタミンDが体内で合成されることです。近年、ビタミンDには免疫機能を調節する効果があることがわかってきました。インフルエンザの予防に有効で、新型コロナの予防や悪化防止にも効果が期待されます。理想は1日30分の日光浴ですが、10~15分程度でもかまいません。できるだけ肌の露出を増やして紫外線のあたる面積を広くするのがポイントです。昼休みに散歩やウォーキングをすれば、運動と日光浴ができ一石二鳥です。
もしも「日焼けしたくない」ということであれば、無理にとは言いません。その代わりに、サプリメントなどでビタミンDを補給することをおすすめします。
睡眠も免疫力アップに大きく関係します。1日7時間以上の睡眠で、ウイルス感染率が抑えられる効果があることが米カリフォルニア大学の研究で示されています。睡眠不足と睡眠の質の低下を招く理由はさまざまですが、現代人に大きな障害の一つがスマートフォンを寝る寸前まで見ることです。スマホでコロナ予防の健康情報などを集めながら、免疫力が低下したのでは本末転倒です。

ストレスは耐えてもなくならない。原因を「除去」することが唯一の解決法

~コロナ時代に不可欠なストレスコントロール

このように食事・運動・睡眠は免疫力アップにとても大事なものですが、注意していただきたいのがストレスです。人はストレスを受けると、コルチゾールというホルモンが副腎皮質から分泌されます。これは、肝臓で糖をつくったり、脂肪組織で脂肪の分解などの代謝を促進したりする生体に必須のホルモンですが、強いストレスを受け過剰に分泌されると、血圧や血糖値が上昇しすぎてしまい、かえって免疫力の低下を招きます。食事や運動で免疫力を高めても、ストレスでコルチゾールが多量に分泌されては無意味ですから、ストレスコントロール力が大事になります。
コロナ禍で、私たちはストレス負荷の強い環境に置かれています。ストレスを減らすためには、ストレスに耐えるのではなく、原因を除去することが原則です。仕事や人間関係など原因はさまざまでしょうが、解決できるものが多いはずです。
たとえば紙に原因を書き出し、ストレス度合いの高いものから、除去できるかどうかチェックし、解決法を探しましょう(図表②参照)。

BILANC22「一億総模索時代」白澤先生図表

~不確かな情報には惑わされないこと

コロナウイルスとの戦いは長く続くことが予想されます。となれば、ストレス負荷も継続します。そうした中で不確かな情報に振り回されないことも重要です。さまざまな情報が飛び交う中、うがい薬に予防効果があると聞いて買いに走っていては、ストレスは減りません。ウソの情報にだまされないようにするには、まずは疑うこと。そして論文など基となるデータで確認することが大事です。加工、編集された情報を鵜呑みにしてはいけません。新聞の見出しや行政の発表する情報ですら疑ってかかる必要があります。
食事・運動・睡眠で生活習慣を見直し、できるだけストレスを受けない環境を整えながら、免疫力の高い体をつくり、自分の身は自分で守るという「セルフメディケーション」の意識を持つことが大切です。

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