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世界が広がり発想が豊かに!ことば「二刀流」のススメ

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“海外の人々とダイレクトなコミュニケーションが取れること”以外に、複数の言語を操ることのメリットはあるのでしょうか?
現在はバイリンガル英会話講師として活躍する神林サリーさんが実体験を踏まえて、その意外なメリットを教えてくれました。
さらには、目からウロコの効果的な英語の習得方法もうかがいます。

構成:秋山真由美 
撮影:石橋素幸 
編集:プレジデント社

英語を学べば意識が変わる。そして行動が変わり、人生も変わる

BILANC17「バイリンガル」神林先生 英語インストラクター・英語学習コーチ
神林 サリー氏(かんばやし・サリー)
大学の専門は英米文学。アメリカ留学後はモデルをしながら通訳翻訳学校でプロの英語を習得。英語ビジネスの経験を生かし、現在は個人レッスン、講演会、セミナーや執筆などに携わり、その日常をブログ「SallyのバイリンガルDiary」やTwitter(@bilingualSally)、インスタグラム(sallys_english_lesson)で配信している。『Sally先生のバイリンガル英会話学習法』(研究社)ほか著書多数。

~英語のレトリックで日本語の会話力が向上

日本で生まれ育った私が英語に興味を持ったのは9歳のとき。「好きな洋画を字幕なしで観たい!」と思ったことがきっかけでした。漢字は難しいし、字幕を追うのは大変だし、耳で聴いた英語のセリフをそのまま理解できたらいいのにと考えたのです。それから独学で英語を勉強し、16歳のときに交換留学生として初めてアメリカに行きました。
それまでは日本の中で勉強していただけでしたが、ネイティブとコミュニケーションが取れたときはうれしかったですね。アメリカ人を目の前にしてジョークを飛ばし、一緒に笑っているという、幼い頃に思い描いたイメージを実際に体験したとき、自分がバイリンガルになったことを実感しました。
「旅先や仕事で困らない」「ポジティブ思考になる」「自信がつく」など、バイリンガルのメリットはたくさんありますが、意外だったのは母親から「日本語がうまくなった」と言われたこと。それまでの私は、映画のあらすじを説明するとき、冒頭の5分間を30分かけて話すほどでしたが、いつの間にか要点をまとめ、わかりやすく伝える力がついていたのです。
それには日本語と英語で文章の構造が違うことが影響していると思います。日本語の文章は起承転結の構造で、話の途中で横道にそれたり、別の情報を挟み込んだりしても内容を理解できます。
一方、英語の文章はイントロ(序論)、ボディ(本論)、コンクリュージョン(結論)という構造で、イントロとコンクリュージョンは一致させなければならず、途中で関係のない話を挿入すると「話が下手な人」と思われてしまいます。英語を話すことで、いつの間にか英語のロジック(論法)やレトリック(修辞)のスキルまで体得していたんです。

BILANC17「バイリンガル」神林先生図表

~二重人格を楽しみ視野と発想を広げる

仕事をする中で、アイデアをひねり出さないといけない局面は誰にでもあると思います。バイリンガルであることは、そんなときにも役立ちます。例えば、頭の中を整理するときに描くマインドマップ。日本語で行き詰まったら、英語でもう一度やってみるんです。英語には、日本語にない要素やニュアンスが含まれているので、思いつきもしなかった考えやフレーズが浮かんだり、新しい発想や視点を得られたり、いろんな効果があります。単に語彙が2倍になるだけではなく、たった一つの単語から世界が広がっていくのです。
さまざまなメディアを通じて、海外から発信される情報をリアルタイムに受け取れるのも強みです。しかも、通訳や翻訳といった他者のフィルターを通さず、現地の人たちが感じたことや考えたことに直接触れることができます。
言語を習得することは、その言語の文化的背景や価値観を理解し、体得することでもあります。例えば、日本でよく使われる「お疲れさま」というあいさつ。日本人の気遣いの文化が反映された良い言葉ですが、これに代わる英語はありません。一方、英語には「I likeyour ~」「You’re nice!」など相手を褒めるフレーズが多く、しょっちゅうお互いを褒めあっています。
私が日本語を話すときは、慎重にその場の空気を読み、相手にとても気を遣いますが、英語を話すときは開放的な性格になって、感情をストレートに表現しています。バイリンガルは、言語を使い分けることで二つの人格を楽しんでいるようなところがあるのです。

~聞き流すだけの英語学習は効果が薄い

ところで、英語を習得するのに最も効果的な方法は何だと思いますか? 残念ながら、万人に通用する学習法はありません。初学者にとっては「聞き流し」も効果は薄いでしょう。何を言っているのか分からない言葉を延々と聞かされ、「英語は英語で理解しろ」と言われても、赤ちゃんに走れと言うようなものです。それより映画や音楽、マンガなど、自分の好きなこととリンクさせて、“ワクワクするやり方”を見つけてみてください。
英語はインプットとアウトプットの相互作用で上達しますが、良質なアウトプットのためには英語日記がおすすめです。私は生徒さんに、毎日必ず生活・仕事・趣味などを英語で書いてもらっています。自分が使わない単語を覚えるのは苦痛ですが、自分の日常に関わる単語であれば、覚えるのに時間がかかりません。「これは英語で何と言うのだろう?」と普段から考え、それを積み重ねることによって語彙力が飛躍的に向上します。
英語日記では、思わぬ効果もありました。ある生徒さんは、平日は遅くまで仕事をして、休日は疲れて寝てばかり。英語日記も最初は、“I slept all day.”(一日中寝ていた)としか書けなくて、思わず“That’sboring.”(それはつまらない)と言ってしまうほどでした。しかしそれではまずいと、日記のネタを探すために外に出るようになり、さまざまなイベントに参加し、半年ほどで人が変わったように面白い日記が書けるようになりました。出会いが増え、婚活がうまくいった生徒さんもいます。年齢にかかわらず、「記憶力や集中力が上がった」という声もよく聞きます。英語を学ぶことで、ふだん気づかなかった文化に気づいたり、物事を客観視する力がついたりして、世界が変わり、人生が変わっていくのです。
何より大切なことは“目標を持つこと”です。私も9歳のときに目標を見つけたからこそ、今の自分があります。バイリンガルになって何をしたいのか。イメージが具体的であればあるほど、目標は叶いやすくなります。

BILANC17「バイリンガル」神林先生図表

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