戸板女子短期大学 学生部
未来を拓く学校人Date: 2018.11.30
すべては学生の満足度のために!変革を生む"学生ファースト"
2018年度のTOITA Fes(学園祭)のプログラムを検討する学生部職員の鈴木さん(後列右)、仁田さん(同左)、大和さん(前列中)と
学生会の三本松杏弥さん(同右・食物栄養科2年)、井上春花さん(同左・国際コミュニケーション学科2年)
構成:秋山真由美
撮影:小田駿一
編集:プレジデント社
~志願者数の氷河期から復活学生部の挑戦は続く
少子化の進行や、受験生とその親の「四大志向」や「実学志向」が強まった社会的背景もあり、短期大学の多くは学生数の獲得に苦戦を強いられています。1902(明治35)年設立の戸板裁縫学校にルーツをもつ戸板女子短期大学も、例外ではありませんでした。しかし、独自のブランディングを打ち出し、学生生活を丁寧にサポートすることで今や志願倍率は1.5倍以上と、危機的状況を乗り越えるべく、チャレンジを続けています。
この流れを加速するため、本年(2018年)度から新たな改革に取り組んでいるのが、日頃から学生生活全般のサポートを行っている「学生部」です。短大事務局学生部長の鈴木俊昭さんが、その活動内容について教えてくれました。
戸板女子短期大学 学生部長 鈴木 俊昭さん 学生部の目標は 何よりもまず学生生活の 満足度を高めること |
「学生部では、学生会、部・同好会活動、学生消防団、TOITAアンバサダーの主に4つの活動をサポートしています。短期大学の2年間は、1年生の後半から就職活動が始まりますし、普段から勉強やアルバイトなどで忙しいので、自由時間がほとんどありません。その中で、“これをやりました”と就職活動で自信を持ってアピールできることを経験させ、かつ、途中で挫折しないように学生の“やる気”を維持していきたいと思ったことが、学生部を改革しようと思ったきっかけでした。ほとんどない自由時間の中で、あえて自主的に学生消防団のようなボランティア等の活動をすることは、人間的な成長と自己肯定感を高めることに役立っています。そこで、本年からTOITAアンバサダーなどボランティア活動の機会を増やしたり、活動を推進させるための試行錯誤を行ったりしているところです」
5年前より地元消防団に参加。今年度は1年生26名、2年生23名が加入(提供:戸板女子短期大学)
~課外活動を通して社会人の基礎力を養う
この試行錯誤によって大きく変わりつつあるのが学生会。学生会とは、高等学校の生徒会に相当する組織で、学園祭の実行委員会を兼ねています。
戸板女子短期大学の学園祭は、2017(平成29)年までは「学生による、学生のためのお祭り」といった色合いが濃かったそうですが、本年(2018年)度には、日頃の学びの成果を発表する場が強調されるようリニューアル。イベント名も「戸板祭」から「TOITA Fes」に改めました。ただし、楽しむという面も強調するため、学生アンケートの結果を反映し、モデルやタレントなどのスペシャルゲストを大幅に増やすなど、実験的な企画にもチャレンジしました。
学生会のサポートを担当する課長の仁田優子さんは、忙しい学生たちをサポートし、やる気を引き出す手応えと難しさを実感していると言います。
戸板女子短期大学 学生部課長 仁田 優子さん 学生会の活動を通じて 学生が成長していくのを 目の当たりにしている |
「これまで学生会のメンバーは2年生の役員8名だけでしたが、今年はTOITAFesに向け、1年生21名がサポーターという形で加わりました。本番に向けて毎日のようにミーティングを実施していますが、やはり忙しい学生が多く、SNSで会議や情報共有をすることもあります。作業チームによって進捗に差があったり、コミュニケーションが取れていないことがあったりして、フォローの方法は都度違います。学生の様子やタイミングを見計らって声をかけたり、モチベーションが下がらないように気持ちの面でサポートしたりする中で、着実に学生たちの成長を感じられることが嬉しいですね。具体的には、期日を守ること、人への伝え方を工夫すること、自分で考え自分で動くことなど、社会に出ると必要である基礎力が確実に身についていると感じます」
本年新たに発足した「TOITAアンバサダー」は、地域交流やボランティア活動を目的とした学生組織です。担当しているのは同じく学生部の大和秋帆さん。
戸板女子短期大学 学生部 大和 秋帆さん 戸板で「これをやった」と 自信を持って言える経験を 一つでも多く積んでほしい |
「学生会や学生消防団には人数枠があり、入りたくても入れない学生がいました。そこでTOITAアンバサダーは、応募すれば原則として全員が参加できる組織としてスタートしました。現在は約120名のメンバーがおり、キャンパスのある東京・港区のKissポート財団が開催するスポーツ・文化イベントの受付や設営などのボランティアを行っています。メンバーが多いと、ボランティアに対する関心の温度差や参加率の差が出てきてしまうので、学生のやる気を引き出すことを一番の課題だと感じています。私としても、まずは一人ひとりの顔と名前を覚え、向き合っていくことからスタートし、サポートの結果、最終的には12月に開催される『MINATOシティハーフマラソン 』のボランティアへの全員参加を目指しています」
~“やる気”の受け皿と居場所づくりが大事
戸板女子短期大学は以前から、「受験を検討する高校生の心を掴むのがうまい」と、定評がありました。オープンキャンパスを運営する学生広報スタッフ「Teamといたん」を結成し、学生自ら学校の魅力やキラキラした戸板女子短期大学の学生を発信することで、高校生たちから注目を集めていたのです。
「しかし、Teamといたんのスタッフになれるのは一部の学生だけ」と、鈴木さん。それ以外の新入生は「何かにチャレンジしたい」と思っても、全ての学生に、短大の2年間の短い時間で、活躍する場を提供できていなかったと言います。
そこで、部・同好会活動を活発にし、「TOITAアンバサダー」を発足することで、やる気のある学生に対してはきちんと受け皿を作り、そうではない学生に対してはしっかり働きかけをしていこうと考えたのです。
活動を周知するため、2018年度は入学式の日に「ウエルカムガイダンス」を実施。各活動について学生自身がプレゼンテーションを行い、新入生の“何かやってみたいという意欲”に働きかけました。1歳しか離れていないとは思えない先輩の見事なプレゼンに憧れて「私もあんな風になりたい」と思う新入生や、戸板のプレゼン表現力を育てる教育力に期待する保護者も多いといいます。
さらに、寄り添い、見守り、傾聴し、支援する学生部の地道な活動は続くと、鈴木さんは説明します。
「戸板だけでなく、今の学生には、友達づくりが苦手な子が少なくありません。せっかく入学しても、友達づくりがうまくいかないと学内に居場所がなくなり、退学のきっかけになりかねません。退学の防止は学校に役割があります。そこで入学式の前後には“ファーストイヤー・デイキャンプ”を開催し、グループごとにアクティビティを体験することで学生同士の交流をサポートしています」
仁田さんもこう話します。
「学生会では“ひとり暮らし交流会”という、一人暮らしの1年生と先輩の2年生が交流し、情報交換をするイベントを企画しました。親と離れて独立した生活が行えるようになるだけでなく、課外活動やボランティア活動を通じて、自分にも役割があり、ちゃんと居場所があるということを感じられたら、学生生活をより有意義に過ごしてくれるのではないかと思います」
~卒業式で「戸板最高!」と感じてもらうのが目標
学生へのフォローと信頼関係の構築に心を砕いている学生部。そこまでして学生と向き合い、サポートするのはなぜなのでしょうか。
ブランディングを考えたうえでの戦略かと思いきや、鈴木さんからは思わぬ答えが返ってきました。
「2年間は本当にあっという間で、授業とアルバイトと就活だけで卒業していってしまう学生も多いです。学生部としては、短い学生生活をどれだけ満足したものにできるかが一番の仕事だと考えています。その結果が、志願率の上昇や就職率の向上につながるのだと思いますが、最初からそこを目指しているわけではありません。極論をいえば、卒業式で“戸板に入って本当によかった”“楽しかった”と思ってもらえることが目標です。それくらい満足度の高い2年間を提供したいし、そのために地道な活動を重ねているわけです」
在学中さまざまなことにチャレンジすることで、いかに満足度の高い学生生活を送り、社会で長く活躍するための素養をどこまで身につけることができるか。その結果いかんによって、戸板女子短期大学が社会から求められる学校になり、高校生にとっての憧れの場になるのです。学生部の活動が、入口、出口双方の戦略で重要な役割を果たし、入試を担う入試広報部にも、就職に関わるキャリアセンターにも影響しているのです。
「まだまだ手探りの状態ですが、さらに学生の満足度を高めていくために、今後は他部署も巻き込んで、新しいチャレンジをしていきたいですね」
2018年のTOITA Fesには人気アーティストやモデルも出演し、華々しく開催
2018年度のTOITA Fesは10月26日、27日に開催されました。動員数は前年度の1200人から約2000人に増加。改革に挑んで初めての学園祭で成果を出せたことをはずみに、今後もさまざまな取り組みが加速されていくことでしょう。 |
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