広報活動

安田女子大学 Out of KidZania in ひろしま、おやこサマーフェス

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未来を拓く学校人

Date: 2025.12.12

専門分野を活かした「職業体験」で、次代に学びの種をまく

BILANC38安田女子大学 Out of KidZania in ひろしま、おやこサマーフェス
「Out of KidZania in ひろしま」の会場にもなった安田女子大学の1号館にて。5階まで吹き抜けで開放感たっぷり。

※2025年12月発行BILANC vol.38に掲載。インタビュイーの役職等は取材時のものです。
構成:江頭紀子 
撮影:梅田雄一 
編集:プレジデント社

~教育×仕事でつくる新しいキャリア形成支援

最寄り駅から専用エスカレーターを上がると、芝生広場を中心に、洗練された校舎が並ぶ安田女子大学。1915年に「柔やさしく剛つよく」を学園訓に創立され、2025年には女子大学として日本初の理工学部を開設しました。8学部18学科4研究科を持つ総合大学として、多彩な学びを提供しています。
同大学では、大学祭やオープンキャンパスなどを通じて、地域との交流を深めてきました。そんななか、例年以上の賑わいをみせたのが、2025年8月に本キャンパスで開催された「Out of KidZania in ひろしま」と「おやこサマーフェス」です。子どもたち向けのイベントで、参加した7学科がそれぞれの専門分野を活かした「職業体験」を提供しました。
理工学部の新設準備を進めていた企画部部長・脇田好章さんは、「Out of KidZania in ひろしま」開催の背景をこう語ります。
「理系学部は女性が少ないといわれていますが、数学が得意な女性は実は少なくないのです。しかし、高校の先生にお話を伺うと、卒業後のキャリアイメージがつきづらいために、理系進学に躊躇する女性も多いということがわかりました。そこで、本学ではエンジニアや研究者などの女性を招き、学生たちにロールモデルを提供するようなイベントを実施。その延長で、“学び”と“仕事”の面白さを子どものうちから体感できる場があればと考えたのです」
ちょうどその頃、Out of KidZaniaを知った脇田さんは、「これはいい機会かもしれない」と構想を温めていたといいます。のちに広島ホームテレビが周年事業として本イベントを検討していると聞き、共催する形で実現に至りました。

BILANC38安田女子大学 Out of KidZania in ひろしま、おやこサマーフェス 安田女子大学
企画部 部長
脇田 好章さん

企画や準備を通して
学生に「仕事の面白さ」を
感じてほしい

ただOut of KidZaniaは定員が500人と少なく事前予約が必要です。そこで、「残念ながら抽選に外れてしまった子どもたちや保護者にも楽しんでもらいたい」と、先々に企画していた「おやこサマーフェス」を同日開催することに。その中心になったのが、教育学部教授の藤原逸樹さんです。
「どうなるのだろうかと不安な気持ちで当日を迎えましたが、とてもすばらしい2日間になりました」
特に藤原さんが評価するのは「学生たちの積極的な姿勢」です。学生ボランティアを募ると、想定以上の人数が集まり、選抜するほどに。教育学部からは150人、それ以外の学部からは100人が、受付などで活躍してくれました。
「元々協力的な学生が多いのですが、初めての試みに、こんなに手を挙げてくれてうれしかったですね」

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教育学部 児童教育学科 教授
教育学部実践LABO 所長
藤原 逸樹さん

座学と実践が結びついて、
“実践知”の獲得を
促すイベントになった

~ プログラムの内容は学生主体で考案

Out of KidZaniaに出展したのは、職業に結びつきやすい理系学科や、企業連携の実績がある学科など。実務を担った、企画部主事の加藤美希さんは、本イベントの効果をこう分析します。
「該当学科の教員に声をかけたところ、オープンキャンパスの翌週だったため、『大変そう』といった慎重な反応もありました。けれども学生は非常に積極的で、定員を超えるボランティアの応募があったのです。彼女たちはキッザニア経験世代ですので、企画に共感してもらえたのではないでしょうか」
加藤さんは粘り強く学内に開催の意義を伝え、実務をサポートする一方で、子どもたちに提供する職業体験の内容は各学科に一任したといいます。
例えば、清水建設とつながりがあった建築学科では、まず同社の担当者と学生がグループワークを実施。学生の提案で、左官工事の体験や、タイルでのコースターづくりを行うことになりました。
「デザインも学生が考え、清水建設さは、とても参考になったと感心していました」(脇田さん)
一方で、「お好み焼き職人の仕事体験」は、学生からではなく、“ 広島らしい仕事” という発想から生まれたプログラムです。調理体験には衛生管理などの課題がありましたが、管理栄養学科の施設に鉄板とLPガスを持ち込むことで実現しました。
「大学内でできることと、企業さんがやりたいことのすり合わせが難しかったですね」(加藤さん)
大学設備をそのまま使えるプログラムもありました。例えば「新生児室スタッフの仕事体験」は、看護学科の沐浴設備などを活用。人形でおむつ替えや抱っこの仕方などを体験してもらいました。子ども用のユニフォームをレンタルし、参加者からは「本物みたい!」と大好評だったといいます。
「学科が単独で実施したプログラムは、当日ほぼ学生のみで子どもたちをサポート。企業と出展した学科は、事前に綿密に打ち合わせて、企業担当者との役割分担を決めていました。お子さんの安全への配慮や待ち時間の声かけなど、学生のきめ細かな対応がどの現場でも見られました」(加藤さん)

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企画部 広報課 主事
加藤 美希さん

従来の広報活動と違い
本学の“素”を
間近で体験してもらえる場に

~ 臨機応変な対応力が光る成長が実感できる機会に

同日開催の「おやこサマーフェス」では、教育学部が中心となって4つのプログラムを展開。広島県教育委員会と共催した「あそびのひろば」、元五輪強化選手を招いた「アスリートパーク」、農林水産省中国四国農政局・JA全農ひろしまとの共催「おいしい!広島コーナー」、そして安田女子中学高等学校科学部の協力を得た「サイエンスラボ」です。
教育学部では毎年11月の大学祭でも子ども向け企画を行っていますが、今回のおやこサマーフェスは各領域の専門家の協力を得たもので、大学祭とはまた違った内容だったことも、好評を得た一因でした。大学祭の学部展来場者は例年約1,500人であるのに対して、両イベントの来場者は約5,000人でしたので、いかに盛況だったかがわかります。
「準備期間が短く、当日の動き方や留意点などを短い時間で学生にレクチャーしなくてはなりませんでした。ですが、さすが教育学部と感心するほど学生の対応は見事。自由に参加できるイベントなので、参加する子どもたちの年齢は幅広く、いろんなタイプの子がいます。学生は、そうした参加者に臨機応変に接していました。1 年生のボランティアは実習未経験ですが、現場での学びを通して成長を実感できたと思います。上級生も下級生に声をかけ合いながら、互いに学び合う姿が印象的でした」(藤原さん)
おやこサマーフェスのプログラムは、企画部職員と教員が協力して考案。今後は企画段階から学生が関わる形に発展していきたいと藤原さんは話します。

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生物科学科の教員・学生がサポートメンバーとして参加した、「微生物研究者の仕事体験」の様子。

~ 地元で働く魅力を発信していきたい

2 日間のイベントは、安田女子大学に大きな成果をもたらしました。藤原さんは学生への影響についてこう語ります。
「普段の授業に加えて、“イベント”という実践の場が加わり、学生にとっては『実践知』が得られたと思います。現場で臨機応変に対応した経験は、自信になったはずです。今回参加した学生は『またやってみたい』という気持ちになり、次の挑戦への意欲を高めてくれるといいですね。そうした学生が、友人にも楽しさを伝え、参加の輪が自然と広がっていくのではと期待しています」
脇田さんも学生の対応力に評価の声が多数あったことに加え、広報としても得たものは大きかったと続けます。
「多くの方に、安田女子大学を知ってもらうきっかけになったことが、何よりの収穫です。近隣に住んでいながらも初めて訪れたという方も多く、オープンキャンパスとは異なる形で、地域との接点を持つことができました。本学は幼稚園から大学院まで擁しているので、未就学児や小学生の保護者の方々に大学の存在を早い段階で知っていただくことは、学園全体のPRにもなります。イベントに参加した保護者の方々から、『安田女子大学さんの教育はすてきですね』という声をいただけたのも大きな成果でした」
学生や教職員が楽しみながら参加するのを、多くの方に見ていただけたのも良かったと加藤さんは言います。
「今回のイベントは単なる広報とは違い、構えない“素”の本学を知ってもらえるいい機会になりました。学生も教職員も楽しみながら関わっていたことは、大きなインパクトがあったと思います。学生や参加した子どもたちにとっても、忘れられない思い出になったのではないでしょうか」
広島県は全国でも人口流出が多い地域であり、若者が県外に出て行く一因に就職先の問題があります。そうした状況のなかで開催された本イベントは、学生にとっても、地域にとっても、地元企業を知る貴重な機会となりました。大学と企業が連携し合うことは、新たな化学反応を生み出す契機にもなります。
「広島には、優れた技術や独自の強みを持つ企業が数多くあります。地元企業との企画や準備を通して、学生に仕事の面白さや地元で働く面白さを感じてもらえるような場を増やしていくことが、地域に貢献できる大学の姿だと思います。今後は対象を広げるなど、いろんな展開を考えていきたいですね」(脇田さん)
地域を元気にするために“種をまく”こと―、それも、大学の大切な役割です。そうした使命を果たす大学が、地域と人材を育てていくのでしょう。

※ 私立大学退職金財団では、教職員の皆様にスポットをあてた「未来を拓く学校人」の情報を募集しています。掲載をご希望の維持会員は、当財団までご連絡ください。

学校散歩
「アイデアを“形”にできるものづくりセンター」
グラフィック、プロダクト、IoTの3領域を同時に学べる造形デザイン学科には、ものづくりセンターがあります。3Dプリンターや、木材やアクリルといった材質の板を自由にカッティングできるレザーカッター、スチール・動画撮影スタジオも完備。常駐教員に相談しながら、授業時間以外でも、自由に作品づくりに挑戦できます。学生の創作意欲を刺激する場にもなっています。

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国内外のコンペ入賞作品がずらりと並ぶ一角には、特許を取得したり製品化されたりした作品も。

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