広報活動

愛知学院大学 社会・地域連携活動(シャチ活)

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未来を拓く学校人

Date: 2024.11.29

坐禅会、中・大連携、朝活……。
“最高学府”が挑む価値創造

BILANC35愛知学院大学 社会・地域連携活動(シャチ活)

※2024年11月発行BILANC vol.35に掲載。インタビュイーの役職等は取材時のものです。
構成:布施 恵 
撮影:川島英嗣 
編集:プレジデント社

~ニーズとリソースを融合し新しい“何か”を生み出す

2026年に創立150周年を迎える愛知学院大学。前身は曹洞宗専門学支校で、建学の精神「行学一体・報恩感謝」に基づき、学びの成果を社会や地域に還元し貢献する活動に力を入れています。そして2014(平成26)年、名古屋の都市部に開設したのが、名城公園キャンパスです。
名城公園キャンパスはもともと国家公務員の宿舎があった場所。用地取得の条件に「社会に貢献できる取り組みを行うこと」が含まれ、これを機に立ち上げたのが社会連携センターでした。以来およそ10 年にわたって、大学と社会をつなぎ、新たなことに挑戦したい人々を多角的にサポートするべく、社会・地域連携活動に取り組んでいます。2022(令和4)年には社会活動の「シャ」、地域連携や知の「チ」を合わせた「シャチ活」の愛称を命名。名古屋のシンボルでもある金のしゃちほこをイメージしたロゴマークを掲げて、社会・地域とつながる活動を展開するようになりました。
センターの役割は、「イノベーション・価値創造」「文化や歴史の発展・継承」「リスキング・生涯学習」「知と人材のハブ」「実践教育の推進」の5つ。自治体、企業、NPOなど多様な地域コミュニティと社会課題を共有し、大学が持つ資源や知恵を結集することで、学生活動による課題解決に応えています。
「愛知学院大学のシャチ活を代表する取り組みの一つが『禅と法話の会 放光』です。より多くの方に禅に触れていただくことを目的として、名城公園キャンパス内の坐禅室『放光台』にて、毎月1 回開催しています。およそ1 時間のうち、前半で坐禅、後半で禅や仏教に関する話を聴くスタイルで、椅子坐禅を基本としているので、初めての方でも気軽にご参加いただけます」
そう話すのは、教養部教授で禅研究所・所長の河合泰弘さんです。

BILANC35愛知学院大学 社会・地域連携活動(シャチ活) 愛知学院大学
教養部教授、禅研究所所長
河合 泰弘さん

身・息・心の調和を図り
自分の心と向き合う
禅体験をもっと気軽に

~自分の心と向き合う禅の世界観を体験

同学の日進キャンパスでは、1980(昭和55)年に坐禅堂が開かれて以来、毎月1回の「火曜参禅会」を開催してきました。その流れを汲むかたちで、名城公園キャンパスでも2015年より坐禅の会を開催。その際参考にしたのが、横浜・鶴見にある曹洞宗の大本山總持寺の門前にあるカフェで、そのスタイルを独自にアレンジしました。開催当初は「禅・茶話の会」と題してお茶とお菓子の提供を行っていましたが、人員の都合のためお茶は各自用意してもらい、開催時間を早めるなどの改善を重ねて現在に至ります。
「開催当初のコンセプトとして社会人も対象にしていたため、18時半から行っていました。しかし研究所スタッフの減少や時間的な負担が大きく、現在の形で活動を継続しています。社会人もいらっしゃいますがご年配の方の参加が多く、特に女性が目立ちます。参加動機については、坐禅の本来の目的とは少し違うのかもしれませんが、『心を落ちつけたい』などいろいろとあるようです。法話では禅問答の解説や禅僧の逸話、座談会など主に曹洞宗の僧籍を持つ先生が担当し、伝統的な禅の精神を守りながら、アルファベットの「ZEN」をイメージした都心のキャンパスならではのモダンな空間で、静かに自分の心と向き合っていただければと思います」(河合さん)

BILANC35愛知学院大学 社会・地域連携活動(シャチ活)
学内にはモダンな坐禅室「放光台」があり、シャチ活にも活用されています。

~中・大の連携を強化しキャリア教育をサポート

シャチ活では同学を活用し、大学の魅力や知る喜びを得て、学ぶ楽しさを感じてもらいたいとの思いから、中学校のキャリア教育を担う「中学校向け体験教育」も実施。開始した2022年度は5校193名、23年度は9校461名を受け入れ、24年度は19校961名を受け入れ予定(10 月現在)と、参加中学校は年々増加しています。社会連携センターの加藤亮一さんは、次のように説明します。
「現在、名古屋市は、中学生が自分らしい生き方を実現する力を身につける時間をキャリアタイムと名付け、キャリア教育の充実を図っており、このキャリアタイムに協力する企業、団体、大学のマッチング支援などを行っているほか、キャリアコンサルタントの国家資格を有する専門家をキャリアナビゲーターとして、すべての公立中学校に常勤で配置しています。本学でも、中学生のキャリア教育やSDGs 教育の一環として教員を派遣したり、大学キャンパスを教材とした学びを展開しています」

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研究推進・社会連携部 研究推進・社会連携課 係長
加藤 亮一さん

社会連携センターが
架け橋となり大学と
社会の連携をサポート

プログラムの特徴は、カスタマイズが自由であること。環境に配慮した“エコキャンパス”ならではの地下空間を利用した「クールアンドヒートピット」での地熱効果の体験、模擬法廷での模擬裁判など、時間や内容は中学校の要望に応じて実施しています。
「参加した中学生からは『大学生活がイメージできた』『今からしっかり勉強をして大学で研究したい』という声があり、先生方からも感謝の声が届いています。大学として大切にしていることは『学びの機会の創出』。学生がアシスタントとなって自らの学びを体系化して中学生に解説することで学修を深める場となっており、学生にとって教育効果も高いと感じています」(加藤さん)

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名城公園キャンパスにある模擬法廷

~コミュニティをつなぐ未来の学びのかたち

同学ではほかにもさまざまなシャチ活に取り組んでいます。歴史が古いのが、学識者や専門家を招いて毎月1回開催する「モーニングセミナー」。名古屋市千種区の楠元学舎で朝の7~8時に行われ、これまで東京大学名誉教授の上野千鶴子氏やジャーナリストの池上彰氏らが登壇してきました。「元FBI捜査官による違法薬物の実態」など、特徴的なテーマ設定も魅力です。これまでの開催回数は223回(24年10月現在)。多いときで300人を集客し、有意義な一日を過ごす朝活としての人気ぶりがうかがえます。
また税理士を多く輩出する同学では税理士限定の「資産税務プロフェッショナルプログラム」を開催。名古屋市税理士会と意見交換をしながら、資産税務など学び直しの要望が多かった分野に特化したプログラム内容になっています。学内に対しては、フィールドワーク(地域提携学)、プロジェクト(課題解決型演習)ボランティア(サービスラーニング演習)を3本柱に実践的な活動を行っています。これらの中でシャチ活の特徴がよくわかるのがフィールドワーク。愛知学院理事・名城公園キャンパス事務局長の山田義丈さんは、こう話します。
「フィールドワークの目的は対象地域を体感すること。そのうえで、課題解決に取り組んでいきます。ここでの取り組みの一つに、北海道南西部の厚沢部町で行う『厚沢部町アウトキャンパス事業』があります。厚沢部町は『世界一素敵な過疎のまち』を名乗る土地。ここでジャガイモの収穫体験を行い、ニーズや要望を共有して、学部で協力する体制づくりを進めているのです。ほかにも『名古屋城三の丸地区の賑わいづくりワークショップ』や『原発事故避難からの復興をめざす福島県川俣町山木屋地区フィールドワーク』といった取り組みを展開中。シャチ活での経験は、SDGsを推進する企業が多い中で、学生の就職活動において親和性が高いと思います」
同大学ではさらなる連携強化のため、体制のブラッシュアップも継続中。「社会や学生のニーズに一つでも多く応えていきたい」と、山田さんは新たな未来を描いています。

BILANC35愛知学院大学 社会・地域連携活動(シャチ活) 愛知学院理事
愛知学院大学名城公園キャンパス 事務局長
山田 義丈さん

シャチ活を通じて
社会課題に向けた
「知の実践」を

~学びだけで終わらない知の実践で社会に貢献

「中学校向け体験教育プログラムではこれまで多くの中学校と意見交換を重ねて、環境配慮型エコキャンパス学習やSDGs 食材メニューによる学食体験、学生参画の模擬講義、大学職員とのグループディスカッション、教職員へのインタビューなど多彩な内容を実施し、中・大連携を強化してきました。中学生がこのプログラムを通じて大学での学びを体験し、参加した中学生が今度は本学の学生として中学生に学ぶことの楽しさを教えるといったサイクルも生まれるといいですね」(山田さん)

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2022年から実施している中学校向け体験教育ではキャンパス見学をはじめ、オリジナルの授業を行う。

冒頭で紹介した禅に関しては、アップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏をはじめ世界の著名人に影響を与えたことでも知られています。そのため、今後は禅に関するプログラムも充実していきたいと山田さんは語っています。
「25年夏、名城公園キャンパスの向かいに愛知県新体育館がオープンする予定です。新体育館は大相撲名古屋場所の会場になるのですが、それもあって旅行会社から、大相撲観戦ツアーに付随したインバウンド向けの坐禅体験の依頼が届いています。これを機に、禅を通じ、学生たちの国際交流につなげていきたいですね。本学の建学の精神である“行学一体”は“知的な理解のみに満足せず、人間的な成長を目指す”というもの。禅は宗教というだけではなく、行動、自分を養うためのツールであり、触れることで知る姿勢になります。この考え方は課題解決をしようという姿勢であり、子どものころからボランティアを経験したり、社会貢献について学んできたりしている最近の学生に、それらを実学で体現してもらうことも本学のテーマだと考えています。時代を動かす未来の学びのかたちを共創するために、これからの大学と社会連携のあり方を、社会連携センターが架け橋となって追求し続けていきます」

※ 私立大学退職金財団では、教職員の皆様にスポットをあてた「未来を拓く学校人」の情報を募集しています。掲載をご希望の維持会員は、当財団までご連絡ください。

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