目指せ「ムダゼロ」。整理術で働き方改革
特集企画Date: 2021.08.03
構成:熨斗秀信
写真:千葉 諭
資料:オダギリ展子
編集:プレジデント社
「散らかった仕事場を見て見ぬふり」がミスを誘う!
事務効率化コンサルタント オダギリ 展子氏(おだぎり・のぶこ) 事務効率化コンサルタント。特許事務所で事務業務のリスクヘッジや効率化のノウハウを身につける。その後に携わった貿易事務で業務の効率化と質の向上を追究し、過去の担当者の月100時間超の残業をゼロにした。現在は、講演やセミナーなどでも活躍中。著書に『事務ミスがない人の図解整理術〔書類・メモ・データ〕』(三笠書房)、『図解デスクワーク整理術』(三笠書房)など、多数あり。 |
~乱雑なデスクに業務効率化の未来なし
皆さんの仕事場は、きちんと整理整頓されているでしょうか。なぜこのような質問をするかというと、デスク周りの環境を整えることで、業務効率を上げ、生活の質まで向上させることが可能だからです。私自身、多いときには残業が月100時間超となる業務を引き継いだことがありますが、この残業をゼロにすることができました。
これは前述したように、デスク周りの整理整頓を徹底したことが大きかったと思います。
つまり、デスク周りをマネジメントできると、業務が効率的に行われ、結果としてワークライフバランスも整えられるのです。
仕事場が散らかっていると、業務を進める上でさまざまなデメリットが発生します。以下、代表的なモノを3つ挙げてみましょう。
まず、必要なモノを取り出す際に探すというムダな時間と労力が発生し、当然この間は業務が滞ります。こういった小さな積み重ねが大きなタイムロスとなるのです。
2つめに、ミスが起こりやすくなります。重要な書類、参考資料、USBメモリなどを紛失するリスクも高まります。また、作業しにくい環境だと、照合などの確認作業も疎かになり、大きなミスにつながる可能性もあるでしょう。
3つめに、多くのモノが視界に入ると集中力や思考力が削がれ、業務効率が下がります。散らかった環境下では、無意識のうちにストレスが溜まり、仕事に悪影響を及ぼしても不思議はないでしょう。
デスク周りをスッキリさせ、これらのデメリットをなくすことで業務をスムーズに進めたいものです。
~整理整頓を促す3つの鉄則
では、今後どのように仕事場を整えていけば良いかということになりますが、そのための鉄則を3つご紹介します。
1つめは、「不要なモノを撤去すること」。これは、自分の業務に「必要か否か」という視点で判断するに尽きます。
2つめは、業務で必要なモノを「カテゴリーごとに分類すること」ですが、まずは、デスク周りのどこに置くかを決める必要があります。PCやマウスなどのように置き場所が決まっているモノ以外は、使用頻度が高い順に「デスク上」「引き出しの中」「デスク下」と振り分けていけば良いでしょう。各配置先では、使用頻度が高いモノほど手前に置くのがおすすめです。左右の配置は、使う手側にすると手の持ち替えが起こらずスムーズに。書類に関しては、作業や管理がしやすくなるように、「作業段階と同じ数のボックスファイルを机上に置いて、該当する段階のボックスファイルに収納・保管」、「プロジェクトごとにボックスファイルやトレイに収納・保管」など、自分の業務内容に合うやり方を考えてみてはいかがでしょうか。
3 つめに、「使ったら元の場所に戻すこと」。「つい」という気持ちや元に戻そうとしたときに電話が鳴ったり、来客があったりして、「タイミングを逸した」など、さまざまな理由があると思いますが、これがきちんとできないとデスク周りはますます荒れてしまうのです。この3つの鉄則は、仕事場に限らず、台所や居間など、あらゆる場所の片づけに当てはまりますので、ご自宅などでもおすすめです。
身近なグッズにひと工夫加えるだけで、整理整頓ツールに大変身
~手軽なツールで身の周りがすっきり
次に、気軽に手作り・アレンジできる整理整頓ツールをご紹介。まずは、ペン立てに廃品をプラスして使いやすくするアイデアです(写真①参照)。
用意するのは円柱型のペン立てとキッチンペーパーの芯を適宜カットしたもの。ペン立ては透明の樹脂製がベストですが、綿棒の空容器、お手持ちのペン立てでも問題ないです。ペン立ての中央に前述の芯を立てて入れると、芯の外周にペンが1本程入るスペースができます。
この隙間には「よく使うペン」、芯の内側には「蛍光ペンのみ」、また「ハサミや定規などペン以外のモノ」など、自分の使い勝手が良いようにルール化すると目的のモノを探して取り出すまでがスムーズになり、時短につながります。簡単ですぐできる割にリターンも大きいので、おすすめです。次は、デスク周りの整理にも応用できる100円ショップのラインナップからのご紹介です(写真②参照)。
中でもおすすめなのは、スプーンやフォークなどを収納する「カトラリー入れ」を「文具を収納するトレイ」として使うこと。ちなみに、細々した文具の収納には、お菓子の空箱などを再利用して仕切りにするという手も。「ファスナー付きのビニール製ケース」は、パンチで穴を開けてリングファイルに綴じると、携帯にも便利な「小物入れ」に変身。忘れたくない筆記具やメモなどを収納するグッズとして重宝します。
また、在宅勤務の方で、仕事中に目が行くと気が散ってしまうスペースや整理しきれない箇所、来客時などに他人に見られたくない部分などがある方は、100円ショップで購入できる「突っ張り棒」と目隠し用の「カフェカーテン」や「布」などで一時的に隠してしまうのも一案です。このアイデアは、書籍の日焼け防止にも有効です。
業務の効率化というと堅苦しく大層なことと思われがちですが、こうしたことも含まれますので、積極的にやってみましょう。
~仕事に取り組むための“心の整理術”にも注目
身の周りのモノを整理できたら、「心の整理術」にも着手してみます。仕事に取り組む姿勢作りとして、自分の心を整えるのは大事なことです。例えば、気持ちのオンオフを切り替えるために、仕事を始める前の「ルーティン」を設けてみてはいかがでしょうか。
これは、ごく簡単なことで良く、机を拭いたり、「さてと!」などと声に出してみたりするだけでも、その効果を感じるでしょう。
働く場所が、どのような環境であっても、仕事場はいわば「自分だけのお城」のようなもの。その場所を極力居心地をよくすることで、さらに仕事への前向きな気持ちを作っていくことは、業務を円滑に進める上でのコツとも言えるでしょう。