修文大学では、病院で実習を行う医療系の学生を対象に、患者に関する個人情報の適切な取り扱いについてまとめたガイドブック『臨地実習における情報モラルガイド』を作成しました。これは、学生への聞き取りを基に、実際におきた実習中の情報漏えいトラブルなどの事例と、その法的な問題点を、マンガ形式で解説したものです。医療系の学生だけではなく、一般の学校や企業からの問い合わせもあり、これまでに広く活用していただいています。
このガイドブック作成の背景には、スマートフォンやSNSの普及とともに育ってきた学生たちの情報モラルに対する危機感がありました。学生は、病院での実習の際、個人情報保護に関する誓約書を交わします。しかし、「これくらいならば大丈夫だろう」と実習記録を撮影して共有してしまう、鍵付き(非公開)のSNSアカウントで患者の情報を発信してしまうなど、守秘義務に対する意識の低さで引き起こされるトラブルが散見されました。
医療職になれば、必然的に守秘義務が法律で示されますが、無資格のため法律の適用外であっても、医療系学生であるからにはモラルと自覚を十分にもつことが重要です。学生には、「なぜ問題なのか」を法律の観点から理解させる必要があるという考えで、ガイドブックの制作に至りました。どのような形式の教材が適切かを考えるにあたり、学生へのインタビューを実施して、実態調査を行いました。 その結果、学生のSNSでの行動の基盤には「過去トラブルになった経験」「教育された経験」があるのにもかかわらず、法律ではなく、みんながやっているなら大丈夫という根拠のない「マイルール」を基準にする傾向がありました。また、実際に起きた事件とその結末への関心が高いことから、問題が起きた後の行為に対する“法的な結果”を、学生にとってリアルな事例を通して伝える方向性に定まりました。SNSに関する事件や、看護関連のトラブル事例を用いて「なぜ正しいのか・なぜ誤りなのか」を根拠づけて考えることができる構成となっています。
内容についてのアンケートによると、最も興味・関心が高かった項目として、「マンガでの事例紹介」が挙げられ、90%以上の方から好評を得ました。小手先の教育ではなく、法律面を土台にした“ものの見方や対策”について伝えることが達成できたと受け止めています。
この情報モラルガイドは、本学のホームページでダウンロードによる提供を行ってきました。また、活用をしてくださっている学校の教員の方から、映像化のご希望も多くあり、自費でDVD作成もしました。 このような活動が多くの方の目に留まり、看護系出版社のメヂカルフレンド社から、より充実した内容と最新の情報を取り入れた改訂版として、今年の3月より販売しております。事例に基づいたDVDも販売していますので、ぜひ併せて、実習前のオリエンテーションなどでお使いください。
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「マンガでわかる 臨地実習の前に!知ってきたい情報モラル」
マンガ形式で読みやすいと、学生たちから好評だ。
取材に応じてくださった
修文大学 看護学部看護学科 学部長 相撲 佐希子教授
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