片柳学園:産学連携事業で社会貢献につながる学びを
維持会員通信Date: 2024.03.18
2023年11・12月、東京工科大学デザイン学部は観光庁による観光再始動事業の一環として、地元大田区の老舗銭湯「改正湯」でプロジェクションマッピング体験ツアーを企画しました。これは株式会社日本旅行と連携した取り組みで、ツアー客は足湯を楽しみながら学生のつくったコンテンツを鑑賞します。学生が自由な発想で解釈した日本文化のモチーフを盛り込み、日本の魅力を感じてもらうことを狙いとしました。
学部では、学年が進むにつれ「視覚デザイン」「情報デザイン」「工業デザイン」「空間デザイン」の4つのコースに分かれて課題制作を行います。今回は、コースを横断して学生を集めた共創型のプロジェクトでした。空間演出や映像制作だけでなく、手拭いをはじめとするグッズ、ツアー客をもてなすおみくじなど“銭湯で過ごす1時間の体験”を、それぞれの立場からデザイン・実践することができました。大田区の地域資源である銭湯(黒湯)を活かした取り組みは事業者にも大変喜ばれ、社会貢献にもつながったと考えています。
本プロジェクトは、産学連携事業として限られた予算と期日までにコンテンツを納める必要がありました。学修課題の延長ではなく、実際の仕事として、着実に進め完成させるための意識づけを行うことに注意を払いました。さらに、授業の課題では自分の思うままに制作できますが、実際のクライアントワークは違います。要望やリスクを勘案しながら何度も検討を重ねると、当然デザインの直しも多くなるため、根気強く取り組むように励ましながら進めました。
学生からは「お客さんの反応を直接見ることができ、普段の課題では得られない経験だった」「みんなでこれだけのものを作り上げたことへの達成感や充実感が大きく、終わるのが寂しい」「国内外のお客さんとコミュニケーションをとり、各国のリアクションの違いが見られた。作り手としての手応えを感じられた」といったポジティブな声が多く集まりました。
教員にとっても初めての取り組みで、手探りの部分も多かったのですが、学生のもつポテンシャルを改めて認識することができる貴重な機会でした。
このような産学連携事業は、技術的にも予算的にも、慎重な検討が必要となりますが、学部の教育や研究の可能性を拡げる大きな可能性を秘めています。今後も継続的に取り組む予定です。
2024年度からの新カリキュラムでは、大田区が抱える課題を、学生と区役所と連携してアイデアを出し合うことで解決を目指す授業を設置します。これからも、デザインの学びを社会のなかで活かし、大学の学びの根幹である“実学主義教育”を実践していきます。
照射実験で意見を交わす学生たち。
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日本のモチーフを活かしたコンテンツを、学生たちで企画・制作した。
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