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名城大学 PLAT(社会連携センター)

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未来を拓く学校人

Date: 2023.03.24

Win-Winなら絶対続く!それが、「社会連携」の本丸

BILANC30名城大学「PLAT(社会連携センター)」

構成:江頭紀子 
撮影:山口典利 
編集:プレジデント社

~「地域に根ざした大学」ゆえの発想と行動力

名城大学は3つのキャンパス(天白、ナゴヤドーム前、八事)に10学部9研究科を擁し、約1万5000人の学生が学んでいます。多彩な学びのコンテンツを提供し、社会のニーズを捉えた教育・研究を展開する同学に、ブランド力強化につながる組織が新設されたのは2017(平成29)年のことでした。それが「名城大学と社会の資源をつなぐ。」をミッションに、学生、教職員、企業、自治体、NPOの活動をつなぐコーディネート組織「社会連携センター」、通称PLAT(プラット)です。
社会連携センター長でもある農学部の加藤雅士教授は、こう語ります。
「本学の学生の7、8割は中部圏の出身で、約20万人いる卒業生の多くも中部圏で就職しています。モノづくりが盛んなエリアなので、製造業の経営者として活躍している卒業生もたくさんいます。加えて産官学連携による研究、各種ボランティア活動、公開講座の実施など、これまでも地域に根ざした大学として、教育や研究だけでなく社会とのつながりを重視してきました」

BILANC30名城大学「PLAT(社会連携センター)」 名城大学
社会連携センター長、農学部教授
加藤 雅士さん

学習意欲をくすぐるのは
社会や起業家とのコラボ。
ここなら、それができる!

こうした土壌がある大学にPLATができた背景には、複数の要素があります。
大学の知を活用して地方創生を推進しようとする社会的な動きが活発化したこと。理系学部が主力の名城大学では、従来オープンイノベーションが盛んで、産業界からさらなる連携が求められたこと。そして中期事業計画(※)において、「教育」「研究」とともに「社会貢献」がミッションに据えられたこと。PLAT はこの事業計画を具現化する活動の1つに位置づけられています。これによって、これまでどこに相談してよいかわからなかった大学との連携相談窓口を大学として明確にする狙いもありました。

※開校100年にあたる2026年を目標年とする戦略プラン「MS-26」(Meijo Strategy-2026)。この中で「生涯学びを楽しむ」という価値観のもと、「教育」「研究」「社会貢献」の3つをミッションに掲げている。

~「外からの依頼」には「学生の学び」が必須

ブランディング、連携の場づくり、公開講座、アントレプレナーシップ人材育成プログラムの提供など、PLATの活動は実に多彩。職員の皆さんはどのような点に注力しているのか、社会連携センター課長の才木亮嗣さんに聞きました。
「私たちの使命は、1つには、従来の社会連携事業の継承です。学外からの連携ニーズを受け付け、大学が何を求められているのかを確認し、教員や学生団体とスムーズかつ、組織的・継続的にマッチングしていきます。その際大切にしているのは、対話により連携を進めること。学外からのリクエストを機械的に割り振るのではなく、対話しながら、双方にとっていいものにしていくことに心を砕いています。そうしてできたイベントやプログラムを足掛かりに、学生には次のつながり、さらにその次のつながり……と、つながりを深めて成長していってもらいたいと思っています」

BILANC30名城大学「PLAT(社会連携センター)」 名城大学
社会連携センター課長
才木 亮嗣さん

「下請け」の発想は捨てる。
対話を通じ、社会と本学
双方の最適解を導き出す

2021(令和3)年度に学内外から舞い込んだ連携の相談は、実に160件。2020(令和2)年度からの継承事業を含め200件を超える規模になりました。連携事業を生み出すため、PLATが柱にしているのが「相談窓口」「交流・活動の場の提供」「連携事業を生み出す仕組みづくり」の3つです。
相談窓口では、「単なる協力依頼」を「学生の学びの機会」に翻訳していることが特徴。社会連携センター社会連携アドバイザーの宮原知沙さんは、「大学への相談は、学生へのイベント協力や会場提供、学生のアイデア募集など多様ですが、本学では相談先の実現したいことと合わせて、学生のよりよい学びになる、あるいは専門分野の実践教育や研究につながることを重要視しています。相談をいただいたときは、その点を大切にしてコーディネートしています」と話します。
例えば、名古屋市から「ホストタウン事業の一環で、カナダの車いすバスケットボールの事前キャンプ会場として体育館を使用したい」と相談があったときには、場所の提供だけではなく、学生の実践機会につなげました。名城大学にはエアライン業界の研究をしている学生の自主的なグループM-Line(エムライン)があります。そのメンバーが選手を空港で出迎え、気持ちよく、快適にキャンプしていただけるための案内やサポートの仕方などを考える機会にしたのです。双方とも満足度の高い活動となりました。

BILANC30名城大学「PLAT(社会連携センター)」
連携事業では学生の実践機会として、カナダの車いすバスケットボールの選手を学生がアテンドした。

~共創空間では、子どもが進行役のイベントも開催

2つ目の柱は「交流・活動の場の提供」。
その1つがナゴヤドーム前キャンパスにある共創空間「社会連携ゾーンshake(シェイク)」。複雑な社会問題の解決に向け、行政、企業、NPO、大学などが垣根を越えて交流する機会を創出し、多様な人の交流を通じて社会課題に取り組むプロジェクトの発生をねらう場として設置されました。
shakeを一緒に盛り上げてくれるパートナーシップ団体は152(2023(令和5)年2月時点)。NPOや行政、社会人・学生団体などさまざまなセクターから相談があり、コロナ禍前は年間400件を超える活動が実施されました。「相談を聞いて、学生の学びになると感じたら連携事業につなげてきました。shakeがたくさんの縁をつないでくれました」と、宮原さんは話します。

BILANC30名城大学「PLAT(社会連携センター)」 名城大学
社会連携センター 社会連携アドバイザー
宮原 知沙さん

4限が終わると、学生が
M-STUDIOに集まる。
新たな動線ができた

shakeの象徴的な活動の1つが、地域の人たちと社会連携センター職員とで立ち上げた「名古屋フューチャーセンター」です。発足は、shakeができてすぐの2016(平成28)年8月。さまざまなセクターで働く社会人有志や学生が、仕事や学校の後に得意分野を生かし、日替わりで講座を実施するというものです。親子での参加も多く、子どもが「自分もやりたい」と、子どもファシリテーターも誕生。セクターや世代を超えたコミュニティの輪が広がりました。

BILANC30名城大学「PLAT(社会連携センター)」
ナゴヤドーム前キャンパスの「社会連携ゾーンshake」は、2016 年の開設以来さまざまなイベント・活動の舞台となっている。海外のスタートアップ向けガイドブック『STARTUP GUIDE NAGOYA』(2021年初版)でも紹介された。

~大人数から少人数まで多彩な学びの場を用意

3つ目の柱「連携事業を生み出す仕組みづくり」も多彩です。例えば「社会連携フォーラム」は年1回、最新の共創事業や共創を生み出す事例を学ぶ機会を提供するもので、数百人規模が参加します。対して少人数で対話を深める「PLATラボ」は、学生、教職員、そして企業や自治体などが同じテーブルにつき、対等かつ主体的に議論をしながらアイデアを出し合い、問いに対する解決策を見出していきます。
そのほか、学生が「何かしたい」という思いを言葉にし、社会で活躍されているメンターにアドバイスをもらい、アイデアの実践に挑戦する3カ月間のアクセラレーションプログラム「DRAFT(ドラフト)」や、コロナ禍には大学教員による「オンライン公開講座」を実施しました。オンライン公開講座は少人数対話型で、講師による講演を聞いた後、グループワークを行い、そこで出た意見を全体でシェア。講師も参加者も共に学びあう場としました。もともとはビジネスパーソン向けでしたが、参加制限はないため、県外の社会人や卒業生、高校生の参加もありました。これからの時代に合わせた公開講座の開催方法はずっと課題となっていましたが、コロナ禍を機に実践できた取り組みでした。

~2022年、新たなモノづくり空間が誕生

2022(令和4)年3月に新たに加わったのが、アイデアを形にする起業活動拠点としてのモノづくり空間「M-STUDIO(エムスタジオ)」です。開設のきっかけは、名古屋大学を中心とした東海発起業家育成プロジェクト「Tongali(トンガリ)」への参画。同プロジェクトにおける起業活動拠点の1 つとして、天白キャンパスに誕生したのがM-STUDIOです。
室内には3Dプリンターやレーザーカッターなどの機械がそろい、試作ができるうえ、交流できるのもポイント。現在約250人が登録し、1日平均20人ほどが利用しています。
イベントも週1、2 回開催中。起業家のトークイベントや、AIやIoTをテーマにしたセミナーなどで、参加者を20人程度に絞っているのも特徴です。
「イベントなどは大規模というよりは小規模で開催。少人数でも興味関心の高い学生が集まり、友達になり、コミュニティとなっていくという流れをつくりたいと思っています。ナゴヤドーム前キャンパスの学生も、シャトルバスでM-STUDIOに来てくれます。文理融合型の総合大学として、ものづくりやIoTなどの基礎知識をつけ、分野を超えて共創できる土壌づくりになればと考えています」(宮原さん)
M-STUDIOの開設後、早くも2つの学生グループがここを拠点に活動を始め、ビジネスプランコンテストへの出場支援やアプリ開発、XR技術といった独自の勉強会を開催するなど、コミュニティの活性化にもつながっています。
起業家人材育成に向けては、ほかに「EXPLORER(エクスプローラー)」という同学独自のプログラムも用意しています。講師は中部電力の新規事業室の社員をメインに、産業界で活躍中の起業家が務めます。体系的にアイデア創出から事業化までの各種ノウハウやマインドセットを学ぶ内容で、半年間のスケジュールで事業計画を練るまでの「ベーシック」と、前後期で年間を通じて事業をブラッシュアップする「アドバンスト」の2コースがあります。起業するかどうかにかかわらず、社会で求められる「課題設定をして解決できる力」が身につきそうです。

BILANC30名城大学「PLAT(社会連携センター)」
M-STUDIOでは学生独自の勉強会や活動が定期的に開催されている。

~継続のコツは、手間を惜しまないこと

実は、ここまでに紹介した各種プログラムは課外活動に位置づけられ、単位にはなりません。しかし、これらのほかに教員と連携し、授業やゼミ活動とコラボレーションするパターンもあります。PLAT側が勧めるだけでなく、教員側から「マインド醸成のために適切なゲストはいないか」「ゼミで商店街をフィールドに課題設定をしたい」などといった相談が寄せられ、コーディネートすることもあるそうです。
センター長の加藤教授は、PLATでつながりができた学外講師や食品関連の起業家を授業に招き、アントレプレナーシップ講座を実施しました。土曜午後に集中講義として、マーケティングやビジネスプランについて講師がレクチャー、学生がプレゼンテーションをするという内容です。
「農学部なので本来、経営の授業はほとんどありません。それでも、経営の知識をつけておくことは、企画を練る際などに役立つと考え実施しました。学生の関心も高かったですよ」(加藤教授)
加藤教授によると、この授業を受けた学生がPLATのプログラムに参加するようになるなど、好循環が生まれているそうです。さらに加藤教授はコンビニエンスストアの商品開発にも参画。東海エリアの発酵文化を広く発信するもので、学生も試食会に参加しました。学生は地元の食文化や商品開発のプロセスを学ぶことができ、Win-Winの関係を実現しました。
このように多彩な連携活動が継続できる秘訣について、社会連携センター事務部長の北堀由美さんは「無理とは言わずに学びに転換させる職員のマインドと実行力」と分析し、こう続けます。
「大学は知と人材の集積拠点。国も産官学の連携強化に注力する中、『大学に声をかければ何かできるのでは』という問い合わせが殺到しています。そのときに『それは難しい』と断るのではなく、なんとか期待に応えたい』というマインドがあるかどうか。名城大学はそのマインドをもって、常に窓口を開いてきました。一方的な活動ではなく、連携パートナーと対話しながら、学生、教員、連携パートナー、社会にとっても価値がある連携事業に変換することを大切にしています」

BILANC30名城大学「PLAT(社会連携センター)」 名城大学
社会連携センター事務部長
北堀 由美さん

「名城に頼めば何とかなる」
その思いに応え続ける。
やがてそれが、文化になる

才木さんも、対話の大切さを次のように強調します。
「私たちにも思いがあるからこそ、企業側の考えと異なってくる部分もあります。しかし、対話を通じて、お互いにプラスとなる部分を常に模索しています。手間や時間はかかりますが、そこを惜しむと継続は難しいのではないでしょうか」
大学を取り巻く皆がWin-Winとなる名城大学の取り組み。そのうねりが中部エリア、さらには日本の成長につながっていくことに期待したいものです。

※ 私立大学退職金財団では、教職員の皆様にスポットをあてた「未来を拓く学校人」の情報を募集しています。掲載をご希望の維持会員は、当財団までご連絡ください。

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