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福岡工業大学:大量に漂着した「軽石」は減圧処理で海に沈める!

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Date: 2022.12.09

法人名 福岡工業大学
大学名 福岡工業大学

小笠原諸島の海底火山が噴火した影響で、沖縄県を中心に軽石が流れ着き、深刻な問題になっています。福岡工業大学生命環境化学科の久保研究室(久保裕也准教授・下條光浩講師)では、漂着した軽石について、「減圧容器に入れて海水より重くする処理を行い、自然に海中に沈める」という新しい処理方法を発明しました(特許出願済)。
軽石の問題は「浮く」ことです。本来は海水より比重が重い鉱物ですが、マグマが凝集する際に発生した気体の経路などに微細な気体を含むため、見かけ比重が海水よりも軽くなって浮遊します。このため漁業や観光業など、地元産業に大きな影響を与えています。
陸上に回収した後の処理・処分・利活用についても、いまだ課題があります。内部に含まれる塩を除去できないと、埋め立てても土壌塩害の懸念があります。鉄骨や建物材料の腐食を起こす可能性もあり、セメントや砂への利用も難しいのが現状です。処理方法としては、真水での洗浄などが考えられますが、漂着している軽石は膨大な量で、輸送や処理にかかるコストや労力の面で課題があります。
今回、久保研究室が考案した手法は次のようなものです。
まず、軽石を砕いて減圧容器に入れ、真空に近い状態にし、そのまま5分間静置します。これにより内部の微細な気体を抜き、海水が侵入する経路をつくります。その後、減圧状態のまま、5分かけて容器内に海水を入れ、大気圧に戻します。すると軽石内部に急速に水が浸透します。海水が侵入した軽石は比重が重くなり、海に沈むのです。軽石をさまざまな大きさに砕いて実験したところ、直径2ミリ前後に砕いた軽石の場合、この手法で70~80%が沈下することがわかりました。軽石の気体の入り方には個体差がありますが、久保研究室で検証したところ、条件(径の大きさ)によって40%~99%の軽石を沈められることが実証済みです。
この処理方法は、軽石の浮遊性をなくして海洋投棄を可能にするもので、環境負荷が低く、実現可能性が高い解決手段であると考えています。
海岸に漂着した軽石に処理を施すには、まず、大型の減圧容器を備えた処理船を外洋で航行させます。そこに軽石を運び、場所を変えながら処理した軽石を海底に投棄するというルートが想定できます。この手法が社会課題解決の第一歩につながればと考えています。

久保研究室では、軽石から空気を抜き海に沈める処理方法を開発
軽石から空気を抜き海に沈める処理方法を開発(久保研究室)
沖縄の海岸に漂着した軽石。
沖縄の海岸に漂着した軽石
減圧容器に入れて海水より重くする処理を行い、自然に海中に沈める
減圧容器に入れて海水より重くする処理を行い、自然に海中に沈める
減圧前の水に浮く軽石
減圧前の水に浮く軽石
減圧処理後、ほぼ全て沈下した軽石
減圧処理後、ほぼ全て沈下した軽石

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