広報活動

明治学院大学 総合企画室 広報課

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Date: 2019.11.28

明学の“今”を伝えて50年学生と大学をつなぐ広報誌

明治学院大学白金通信
『白金通信』を運営する広報課の職員と学生広報委員。手にしているのは会報誌『白金通信』

構成:秋山真由美 
撮影:石橋素幸 
編集:プレジデント社

~激動の時代に創刊した大学と学生の言論の場

明治学院大学は、1863年にJ.C.ヘボン博士が創設した英学塾「ヘボン塾」を起源とし、1887(明治20)年に東京・白金の地に開設された文系総合大学です。その大学の広報誌『白金通信』が、2019(令和元)年7月1日発行の夏号で通算500号を達成し、50周年を迎えました。これほど長く続く広報誌は日本全国の大学広報誌の中でもあまり類を見ませんが、どのような経緯で誕生したのでしょうか。

BILANC20明治学院大学白金通信
『白金通信』第1号と、この秋に発行された最新号(501号)。
現在に至るまでの歴史を感じ取ることができる。


「1969(昭和44)年の創刊当時、日本は学生運動の真っ只中にあり、明治学院大学も例外ではありませんでした。そんな中、大学と学生のオープンなコミュニケーションから、より良い関係を築いていこうと『白金通信』は創刊されたと聞いています。激動の時代、開かれた言論の場、両者の意見交換の場として用いられ、抗議や要望のやり取りも誌面には見られました」
そう話すのは、明治学院大学広報課・主任として『白金通信』の編集に携わる圓道弘子さん。バックナンバーを紐解くと、創刊号に「新しい大学の創造を志向し、相たずさえて建設のため前進する」と記されており、時代の流れと広報誌の役割の変化を実感したと言います。
現在の編集方針について、小室和子さん(広報課課長)は、「学生に大学を好きになってもらいたいという思いは今も昔も変わりません。明治学院大学の教育理念である“Do for Others(他者への貢献)”を感じてもらえるよう、満足度の高い冊子を届けたいと思っています。私自身も学生時代、『白金通信』の読者の一人だったので、今こういった立場で携われることに喜びを感じながら、大学・学生のことを第一に考えて取り組んでいます」と答えてくれました。

BILANC20明治学院大学白金通信 明治学院大学
総合企画室 広報課 課長
小室 和子さん

根底にあるのは、
大学と学生の相互理解と
“Do for Others”

~職員と学生が一体となり大学の魅力を発信

当初はタブロイド版月刊紙だった『白金通信』は、2007(平成19)年4月に季刊化し、雑誌版にリニューアルされました。1万8500部を印刷し、毎号、在学生と保証人(保護者)、教職員に配布しています(学外の希望者は年間購読することも可能)。
「年に1回のアンケートでは、おおむね好評をいただいています。『知っている学生が出ていた』『自分が取り上げられて嬉しかった』などという感想が多く寄せられます。活躍している学生を取り上げることで大学に興味や親近感を持ってもらえるのはすごくいいことだと思います」(圓道さん)
現在の『白金通信』の制作を担っているのは、広報課の職員2名と学生広報委員と呼ばれる学生たち。どのような分野に興味のある学生たちが、何名ほど集まっているのでしょうか。
「学生広報委員は、毎年4月に募集し、今年は計62名が登録しました。情報発信に興味がある人、マスコミ関係に就職を希望している人など、積極的な学生が多いですね。毎号、企画ごとに担当する学生が企画会議を開いてどんなテーマにするかなどを決めています」
そう教えてくれたのは、主に学生企画のページを担当する広報課の濱口尚子さんです。
「基本的に、学生たちが主体的に取り組むページと、職員が制作するページとで分け、学生企画と呼ばれる特集ページや授業・ゼミ・サークル紹介、データベースなどを学生が担当します。デザインと表紙撮影は明治学院のブランディングを熟知してくれている外部のデザイン会社とカメラマンに依頼していますが、基本的にすべての工程を学内で担っていることも、他大学の広報誌にはあまりない特色かもしれません」

~学生の意見を尊重しつつ制作の鍵を握る職員

企画会議では学生の意見ややりたいことを尊重していると言います。「大学広報誌」という媒体の性質を踏まえた上で、一体どのような視点を持って判断しているのでしょうか。

BILANC20明治学院大学白金通信 明治学院大学
総合企画室 広報課 主任
圓道 弘子さん

明治学院大学の
今一番大事なことを
正確に伝えていきたい

「例えば、おいしいお店を紹介したい場合、スマートフォンで探せばすぐに見つかるような情報を誌面に掲載しても大学広報誌としての特色に欠けてしまいます。どんなテーマでも、キャンパスのある地域とのつながりを大事にするとか、自分の足で調べてみるとか、明治学院の学生の声を拾うということを念頭に置いて企画を進めてほしいと伝えています。トレンドを盛り込みつつも、単なる宣伝に終始することなく、どうしたら明治学院の学生にとって有益かつ面白いページにできるか、私たちも学生も常に考えています」
学生の意見や自主性を尊重するために、学生とのコミュニケーションも欠かせないと話します。
「学生は授業やサークル活動、就職活動などで忙しいため、スケジュール管理にはいつも苦労していると思います。もちろん、こちらの締め切りも厳守しなくてはなりませんが、日頃からコミュニケーションをとって状況を把握するよう心がけ、相談しやすい関係を築くことを何よりも大切にしています」

~普段の学生を知るためのコミュニケーションツール

苦労のかいあってか、『白金通信』は大学と学生の「今」を切り取り、学生に寄り添う広報誌として定着。また、デザイン性に優れた雑誌を紹介する書籍のなかで、唯一、大学広報誌として取り上げられたこともあります。そうやって次第に学外からの評価も得られるようになり、思いがけず注目を集める機会もあったそうです。
「特に反響が大きかったのは、477号(2014(平成26)年12月発行)で学生が企画した『明学生が考えたSNSのための5つの合言葉』。新聞社から取材依頼があったり、高校の教材にしたいという要望を受けたりしました」(圓道さん)

BILANC20明治学院大学白金通信
大きな反響を呼んだ学生企画「明学生が考えたSNSのための5つの合言葉」。
かわいらしいイラストと、分かりやすい合言葉で、広報誌とは思えぬ仕上がりに。

「受験生からの人気も高いですね。オープンキャンパスでも、多くの方が持ち帰ってくださっています。学生生活のリアルな情報を得られる重要なツールとして見ていただけていると思います。キャンパスライフについては大学案内にも載せていますが、『白金通信』は“より普段の学生の様子や取り組みが分かる情報誌”です。これを見て明治学院に入学し、学生広報委員になった学生もいます。最初は不慣れだった学生が一人で取材も執筆もこなせるようになったり、企画会議の中で学生同士が意見をまとめることができたり、学生の成長を実感できるのが職員のやりがいです。また、学生にとっては、授業やサークル活動とは違う活動の場があることで、多様な交流や自己成長の機会につながっています」(濱口さん)

BILANC20明治学院大学白金通信 明治学院大学
総合企画室 広報課
濱口 尚子さん

トレンドを盛り込みつつ
学生にとって
有益となる誌面づくりを

「正直なところ、新入生の中には、明治学院は第一志望ではなかったという学生もある程度います。最初は期待せずに入学してきた学生が4年間を過ごし、卒業する頃には“いい大学だった”と思えるように貢献していきたいと思っています」(小室さん)

~紙媒体のメリットを生かし50年先の未来へ

WebやSNSの需要が高まり、情報のスピードが求められている昨今、効果や効率性を考えて、紙からWebに移行する広報誌も少なくありません。この動きは、商業誌でも同じく起きていることであり、数々の雑誌などが休刊に追い込まれたり、Webへの移行を余儀なくされたりしています。
また、より速さや身近さ、受け取る側の気軽さを意識してTwitterやInstagramなどのSNSに重点を置く大学や、企業も増えてきました。この先を見据えたとき、広報誌そのもののあり方も見直される時期に来ています。
「紙はWebサイトと違って、どのページがどのくらい見られているのかわかりませんし、情報の速報性という点でも圧倒的に負けてしまいます。紙とWebの連動、情報の住み分け、発信頻度の問題など、現在も試行錯誤の最中です。ただ、私たちがそうだったように、50年後の学生や職員が今の『白金通信』を読んで、この時代はこうだったんだと知る手掛かりになるかもしれない。その時のためにも、明治学院大学の“今一番大事なこと”を“正確に伝えること”に心を砕いていきたいと思います」(圓道さん)
「願わくは、学生が卒業して10年くらい経ったある日、本棚に残っていた『白金通信』をふと見つけて読み返してほしい。そして、何かほんわかした温かい気持ちになってもらえたらうれしいです」(小室さん)
ソーシャルメディアが台頭する時代においても、紙媒体のメリットをうまく生かしている明治学院大学。50年もの長い間、『白金通信』が続いている理由には、さらに50年後の教職員・学生に向けた想いがありました。
広報媒体という枠に収まることなく、大学の“今”を切り取り、歴史を記録する役目を果たす。これからも、大学の今を後世に伝えていく開拓者であり続けてほしいとの願いを込めて、『白金通信』の今後の動向に注目です。

※私立大学退職金財団では、教職員の皆様にスポットをあてた「未来を拓く学校人」の情報を募集しています。掲載をご希望の維持会員は、当財団までご連絡ください。

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