広報活動

中央大学 父母連絡会事務局

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Date: 2019.08.05

保護者の「熱意」をカタチにして現役生に還元する

中央大学父母連絡会事務局
父母連絡会と大学を結ぶ事務局は、スタッフ4名で運営されている。左から武地紫さん、折原つが子さん、鈴木都子さん、内布諒さん。
手にしているのは会報誌『草のみどり』

構成:秋山真由美 
撮影:加々美義人 
編集:プレジデント社

~独自の予算で実現させた「ご当地丼フェア」

学生たちが集うカフェテリアで、ひと際目を引く「食育支援企画」のポスター。全国ご当地丼フェアの一環として、「大分鶏天丼」「帯広豚丼」「台湾鶏肉飯」「岡山デミかつ丼」などのおいしそうなメニューが並びます。
「販売開始は11時30分。教職員は注文できない『学生限定メニュー』ですが、昼休みが始まる12時30分までに売り切れることがほとんどです」と教えてくれたのは、この企画を主催している中央大学父母連絡会事務局の武地紫さん(学事部学事・社会連携課課長)。中央大学は、多摩キャンパスに4階建ての「学食棟」(正式名はヒルトップ’78)をもつなど、学食が話題になることもしばしばですが、父母連絡会が食育支援を企画したのには何か理由があるのでしょうか?
「中央大学は、約3割の学生が地方出身者です。一人暮らしで朝食をとらないという学生も多く、栄養のあるものを安く提供したいという親心と、全国の特産品を使ったご当地グルメについて知って食への関心を高めてほしいという思いから、この企画は生まれました」(武地さん)
こうして2018(平成30)年に、父母連絡会の主催イベントとして「食育支援企画」を実施。2年目の今回は、日本全国に設置されている父母連絡会の支部の中から特色を生かした限定メニューを用意しました。1日限定80食ですが、ボリューム満点のメニューが300円~400円で食べられるとあって、学生たちから大人気だそうです。「ここまで低価格で提供できるのは、食事代の一部を父母連絡会が負担しているからです」と、事務局の内布諒さん(学事部学事・社会連携課)。
「2019(令和元)年5月1日現在、父母連絡会には学部生2万4873名全員の親御さんが加入していて、年会費の5000円は、学費などと一緒に収めていただいています。大学主導で何かをやろうと思ったら、通常は意思決定までにすごく時間がかかりますが、父母連絡会の場合は独自の予算で動いているので、企画から実行までが非常にスピーディー。保護者の思いを学生たちにしっかり還元できることも強みです」(内布さん)

BILANC19中央大学父母連絡会事務局
全国のご当地グルメを味わえる人気の「食育支援企画」。
写真は2019年7月の北海道ジンギスカン定食

~キャンパスの最新情報が定期的に自宅に届く

もともとは保護者と大学との情報交換を行う恒常的な組織を目指して、1983(昭和58)年に設置されたという「中央大学父母連絡会」。当初は任意加入でしたが、会員による全国的な支部づくりが活性化し、学内外から父母連絡会の充実を求める声が高まったため、1988(昭和63)年から学部在学生の父母全員が加入することになりました。大学内に設置された「父母連絡会事務局」では、武地さん、内布さんのほか、専任職員の折原つが子さんと、パートタイム職員の鈴木都子さんを加えた計4名が、父母連絡会の円滑な運営と、全国54支部との連絡・調整などの事務処理を行っています。
「主な活動内容としては、父母懇談会の開催、キャンパスライフ体験会の開催、スポーツの応援、機関誌の発行などがあります。よく高校のPTA活動の延長なのではないかと聞かれるのですが、それとは違います。保護者に大学の近況や学生生活の様子をお伝えすることは当然ですが、中央大学に通う子を持つ親同士のコミュニケーションの場として活用していただけたらと考えています」(武地さん)

BILANC19中央大学父母連絡会事務局 中央大学
学事部学事・社会連携課 課長
武地 紫さん

事務局は「父母」「学生」
「教員」の結節点だからこそ、
家族的情味を醸成できる

これらの活動のうち核となるのが、6月から7月にかけて支部ごとに行われる父母懇談会です。教職員が、大学の近況や学生生活、進路就職情報について伝える機会で、閉会後には父母同士で交流を深める懇親会も開催しています。
キャンパスライフ体験会は、毎年秋の大学祭と連動して開催。内容は、キャンパスをめぐるツアーや、就職に関する講演会などです。前回(2018年)は、多摩と後楽園の2キャンパス合わせて、実に1900名の父母が参加しました。
広報活動では、大学と学生の近況を伝えるための父母向け機関誌『草のみどり』を、なんと年6回も発行しています。「2015(平成27)年度までは年10回発行していたんです。B5判の白黒でしたが、もっと見やすくしようと、A4判のカラーにフルリニューアルして、2016(平成28)年度から現在の形となりました。大学の情報はホームページで確認することができますが、保護者の方は、大学の様子や最新の就職情報などが定期的にご自宅に届くことに意義を感じてくださっているようです。お子様が卒業した後も購読したいという声も多くいただいています」(内布さん)

~保護者一人ひとりが中大応援団の一員

各支部は、最低限のルール以外は、活動内容や目的、役員数などが任されていて、それぞれ独自のやり方で積極的に活動しています。
「事務局が運動部の試合スケジュールを提供すると、支部役員の方がそれを見て、『みんなで応援に行こう』と自主的に動いてくれます。他の支部と連携して、合同でスポーツ応援などに行くこともあります。例えば箱根駅伝の予選会には、北は北海道、南は熊本から、OB・OGの数をはるかに上回る父母連絡会の支部の方々が応援に駆けつけてくれます。最近はLINEなどのSNSツールも充実しているので、やりとりがさらに活発化している印象です」(内布さん)

BILANC19中央大学父母連絡会事務局 中央大学
学事部学事・社会連携課
内布 諒さん

父母が楽しみながら
学生を応援できる機会を
今後も提供し続けたい

スポーツ応援のほかにも、音楽サークルの鑑賞会や学術講演会に参加したり、父母同士の親睦を深めるための懇親会を開催したり。聞けば、すでに子どもが中央大学を卒業していて、孫もいるという親御さん同士が、父母連絡会のOBとして、今でも年に一度旅行に行っているというエピソードもあるそうです。
「親も中大卒」というのならまだしも、熱心に活動する方のなかに、自らも中央大学で学んだという方はほとんどいません。「子どもを同じ大学に通わせている」という共通点のみによって、保護者同士がコミュニティを形成し、主体的に活動しているのです。そのモチベーションについて、学事部学事・社会連携課副課長の折原さんは、「学生との距離感の近さが、親御さんを中大ファンにさせているのでは」と言います。
「父母懇談会などでは、学生の応援団や音楽サークルが招待され、日ごろの練習の成果を披露することもあります。彼らの一生懸命な演技や演奏を見ると、そのなかにわが子がいなくても、『この子たちを応援したい!』『そのためにも父母が連携しなくては』と思ってくれるようです」(折原さん)
武地さんはこうも指摘します。「私も子を持つ親なので気持ちがわかるのですが、子どもが大きくなり、巣立っていくことはうれしい半面、寂しい気持ちにもなります。地方在住で、子どもを送り出した親御さんにとってはなおさらです。まずは親同士が仲良くなって楽しんでほしい。私たちは、そのきっかけとなる“場”を提供させてもらっているのです」

BILANC19中央大学父母連絡会事務局
父母連絡会は全国に54の支部があり、それぞれで独自の活動を行っている。父母どうしの関係が密で、有志による「運動部の応援ツアー」なども盛んに企画されている。写真は愛知県支部によるアメリカンフットボール部応援

~交流の“場”をつくり親子3代で中大ファンに

近年、保護者と大学の関係は密になっています。かつては、大学の入学式や卒業式に出席する親は少数派でしたが、最近はそうとは言い切れません。また、成績や就職先に関する問い合わせも増えるなど、大学に対する保護者の関心は年々高まるばかり。
その一方で、“うちの子は大学や将来のことを話してくれない”と悩む保護者も増えています。「保護者と大学」「保護者と子ども」「保護者同士」と、それぞれにおけるコミュニケーションを円滑にするためにも、父母連絡会に求められる役割は今後も広がっていきそうです。
「本学の特徴を示す言葉に、『家族的情味』というのがあります。一人ひとりの顔が見える親身な教育を通じて、教員と学生、保護者を加えた三者が親しみと信頼関係を築くという意味なのですが、私たちはそれを具現化したいと考えています。保護者の方に、大学を中心としたお子様の生活を伝えるのがわれわれの使命。動画を活用するなど、手段は変わっていくかもしれませんが、これからも思いは変えずにやっていきたいと思います」(武地さん)
保護者自身が楽しみながら子どもの通う大学のイベントに参加し、保護者同士の交流や大学への理解を深めていく。そうして大学自体のファンになれば、子どもが大学を卒業した後も、さらには孫の代までも、中央大学を応援し続けてくれるのかもしれません。

※私立大学退職金財団では、教職員の皆様にスポットをあてた「未来を拓く学校人」の情報を募集しています。掲載をご希望の維持会員は、当財団までご連絡ください。

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