勤続年数で退職資金はどう変わる?知っておきたい「交付率」のしくみ
特集企画Date: 2026.08.03
7月10日に公開した「「退職資金」と「退職金」、混同していませんか?つまずきやすい退職資金交付事業の基本」では、退職資金交付事業の基本として、「退職資金」と「退職金」の違いや、交付額の決まり方をご紹介しました。 今回のテーマは、その交付額を決定する二つの要素のうちの一つの「交付率」です。同じ俸給月額の教職員でも勤続年数で退職資金の額が変わるのは、この交付率のためです。担当者が迷いやすいしくみや種類、選び方をわかりやすく整理します。
この記事でわかること
・退職資金と退職金の額が違う理由
・交付率はどう決められている?
・3種類ある交付率、その違いとは
・交付率を決める際の大切な視点
まずはおさらい。退職資金の額は、退職金と同じとは限らない
前回の記事で、退職資金と退職金は別物だとご説明しました。実は、その金額も必ずしも一致しません。まずはそのしくみを簡単におさらいします。金額が異なる理由は、財団が規定に基づいて算出した「退職資金計算額」と、加入法人が実際に支払った「退職金支給額」を比べ、低いほうの額を交付するしくみになっているためです。この「退職資金計算額」は、次の式で求めます。
退職時の標準俸給月額×在職年数に応じた交付率=退職資金計算額
計算式に登場する「交付率」は、教職員の在職期間(財団への登録期間のうち、掛金を納入した期間)が長くなるほど高くなります。そのため、標準俸給月額が同じでも、在職期間が長い教職員ほど退職資金計算額は大きくなるのです。また、在職期間は年単位で計算し、12か月に満たない端数は切り捨てます。
例)在職期間10年11か月 ⇒ 交付率5.658(在職期間10年として参照)
前回はここまでをご説明しました。今回は、この「交付率」そのものを掘り下げていきます。
そもそも交付率は、何を基準に決まる?
財団の設立趣旨は、私立大学等の教職員が、国公立大学等の教職員と均衡のとれた退職金給付を受けられるようにするものです。これを踏まえ、交付率は国家公務員退職手当法における自己都合退職の支給水準と同等になるよう設定しています。
国家公務員が自己都合で退職する場合に適用される支給率などに着目して交付率を定めています。したがって、国の支給率が見直されれば、財団の交付率も見直しています。
2012年の国家公務員退職手当法の改正により退職手当の支給水準が引き下げられ、国家公務員の支給率が下がりました。
これを受けて財団は、交付率の引き下げを検討しましたが、支給水準は13%引下げとなる予定でした。そこで、それまで交付率に反映していなかった国家公務員退職手当の「調整額」を、在職期間ごとの交付率に換算して加算することにしました(自己都合退職の場合、在職期間10年以上の退職者に限り調整額が適用されます)。調整額を加算したことで、在職期間10年以上の退職については、引き下げ幅を2.4%にとどめこれにより国家公務員の支給水準と同等の水準を保ち、2016年度から適用しています。
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<参考>国家公務員退職手当の「調整額」とは?
2006年4月施行の国家公務員退職手当法改正で導入された制度です。民間企業の退職金制度で広がっていたポイント制などの貢献度を重視する仕組みを踏まえ、在職期間中の貢献度をより的確に反映できるようにするために設けられました。
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3つの交付率:基準交付率、特例交付率、従前交付率
現在、財団の退職資金の交付率は3種類あります。2015年度までの財団の交付率は1つでした。なぜ1つだったものが3つに増えたのか、その経緯を追うと違いが見えてきます。
きっかけは、2016年度の交付率引き下げです。これまで通り国家公務員の自己都合退職の水準に合わせ適用した交付率を「基準交付率」と名付け、さらに2つの交付率を新たに設定しました。これにより、加入法人は年度ごとに3つの交付率から選べるようになりました。
1つめが「特例交付率」です。国家公務員は在職期間10年未満の退職者に「調整額」を適用しないため、基準交付率の在職期間が10年未満の退職者は、改正前と比較して交付率の引き下げ幅が大きくなります。そこで、在職期間10年未満の退職者にも調整額相当分を加算した交付率を別に設けることとしました。
そして2つめが「従前交付率」です。交付率の引き下げに伴い、加入法人が希望すれば、引き下げ前の2015年度の交付率を引き続き適用できるよう残したものです。
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3つの交付率 ひとくちメモ
・基準交付率:国家公務員の自己都合退職の支給水準に合わせた率
(自己都合退職の支給率+在職10年以上の退職者は調整額を換算した率) *現在の交付率は、2022年4月から適用。 ・特例交付率:在職期間10年未満の退職者は、基準交付率に調整額相当分を加えた率
・従前交付率:2015年度(2016年3月31日)に適用していた率(13%引下げ前の国家公務員の自己都合退職の支給水準にあたる)
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交付率のイメージ図
交付率を選択する際の考え方
3つの交付率から、どれを選べば良いのでしょうか。判断のポイントは「掛金とのバランス」です。
財団の制度では、1年間に交付する退職資金に必要な額を、掛金として納入いただくのが基本です。掛金の計算には、掛金率を設定しています。
特例交付率や従前交付率は、基準交付率よりも交付額の水準が高いぶん、掛金率も高くなります。 つまり、交付率の選択は単純な損得の話ではなく、加入法人の退職金制度や資金計画に合わせて検討すべきものだといえます。
なお、交付率を変更する場合は前年度の8月末までに申し出が必要です。申し出がなければ、前年度と同じ交付率が引き続き適用されます。
