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人事評価の「納得感」を高めるAI活用法:「人事・労務」を変えるAI活用最前線【第5回】

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特集企画

Date: 2026.06.19

BILANC Online “人事評価の「納得感」を高めるAI活用法

構成:八色祐次 
撮影:神出 暁 
編集:プレジデント社

人事評価の「納得感」を高めるAI活用法

連載第5回のテーマは、「人事評価」です。「自分の人事評価は、本当に正しいのだろうか」。組織で働く人なら、そう感じた経験が誰しもあるのではないでしょうか。評価する側の上長もまた、限られた記憶と時間の中で難しい判断を迫られています。この長年の課題に、AIはどう寄与できるのか。人事図書館の館長である吉田洋介氏に伺いました。

前回の記事はこちらからご覧いただけます。
AIに任せていい仕事、そうでない仕事 :「人事・労務」を変えるAI活用最前線【第4回】

人事図書館 館長 吉田洋介
2007年立命館大学大学院政策科学研究科卒業。新卒で、リクルートマネジメントソリューションズに入社。
国内外500社以上の採用、人材開発、組織開発、人事制度等に関わり、支社長・事業責任者等を歴任。
2021年に独立し、株式会社Trustyyleを設立。
2024年4月に東京・人形町に1,000冊以上の人事関連書籍を備えた「人事図書館」をオープン。

人事評価の公平性にAIが貢献する?

本連載の第3回 で、採用における選考基準のバラつきについて触れました。面接官によって評価が分かれてしまう、という課題です。

実は同じことが「人事評価」にもいえます。大学職員も含め、組織に所属して働く人なら、ほとんどが自分の仕事ぶりを上長に評価された経験があるはず。そして、その評価に納得がいっていない人もいるのではないでしょうか。

「自分より成果を出していない人が、高く評価されている」「前年より成果を出したのに、正当に評価してもらえなかった」「努力が認められた前年とは違い、今年はそうではなかった」——。中には、「評価が低いのは、自分のことが嫌いだからではないか」とまで感じてしまう人もいます。

人事評価にAIを活用することで、こうした不満を減らすことができます。実際、AIを導入した企業では、「理不尽な評価が減り、納得感が増した」という社員の声が多く聞かれます。

では、人間が評価するのと何が違うのか。もっとも大きな違いは、“客観性”です。

客観的な視点が「納得感」を底上げする

人間が評価する限り、どうしても評価者の主観が入ります。組織が変わらない限り、上司との信頼関係に評価は影響を受けます。それが一概に悪いわけではありませんが、上長の力量によって評価の正当性にバラつきが生まれるのは、仕方のない面があります。

たとえば、期初の頃の部下の言動や成果は、どうしても記憶が薄れがちです。評価の時期に近い出来事ほど印象に残りやすく、直近に大きな失敗があれば、評価もそちらに引きずられてしまいます。

部下の人数が多くなれば、なおさらです。全員が一年間にどんな仕事をして、どんな成果を出したのか。そのすべてを把握するのは難しく、漏らさず評価に反映しようとすれば、上長の負荷は大きくなります。忙しい上長なら、評価の時間を十分に確保できないこともあるでしょう。

そもそも、部下一人ひとりの行動を通年で把握したうえで評価を行っている上長は多くないでしょう。しかし、こうした評価にまつわる諸事情を、AIによって解決できるというわけです。上司が把握しきれていない、部下の業務内容まで可視化されるため、マネジメント層の新たな気付きや学びにもつながります。

BILANC Online “人事評価の「納得感」を高めるAI活用法

(写真:Noin90650/shutterstock)

AIを活用した人事評価プロセス

では、どのようにAIを活用するのか。ある企業を例に紹介しましょう。

まず、評価の判断基準をAIに読み込ませます。会社のミッションやビジョン、バリュー、行動指針といった大切にしている考え方、人事制度で設計した等級定義、評価項目や評価段階(S/A/B/C/Dなど)の定義、仕事の定義など。いわば、AIに「評価のものさし」を教えるイメージです。

次に、被評価者の情報を読み込ませます。日々の業務内容や行動を記録したログ、期初に設定した目標、目標達成のための取り組みや工夫、直面した課題とその対策など。業務日誌を義務化し、年間を通じて情報を蓄積しておくことがポイントです。

さらに、設定した目標に対する成果も読み込ませます。数値や達成率といった定量的な情報と、目標を目指す過程で得た学びなどの定性的な情報。その両方が、AIが評価するうえで重要になります。

加えて上長は、被評価者の強みや特性、組織の重点方針と本人の取り組みがどう関連していたか、本人に期待していたポイントなどを入力します。
これらの情報をもとに、AIは部下一人ひとりの評価と、その根拠をアウトプットとして提示してくれます。

BILANC Online “人事評価の「納得感」を高めるAI活用法

忘れてはならない「AI評価」の落とし穴

ただし、注意点があります。AIが提示した評価を、そのまま鵜呑みにしてはいけません。あくまで参考情報として扱い、最終的な評価は上長自身が、自分の責任のもとで確定させることが重要です。

フィードバックの際、部下から「どうしてこの評価なのか説明してほしい」と言われたとき、「AIがこう評価したから」と答えたのでは、部下は納得できません。

AIは、期初の言動や成果もあますことなく評価の参考にしてくれますし、「なぜB評価なのか」という根拠も示してくれます。ただ、それはあくまで客観的な評価を行うための参考にとどめる。最終的な評価は、上長が自分の言葉で説明できるようにしておく。それが、部下との信頼関係を築くうえでも大切になります。

AIの登場によりマネージャーの役割が変わるのです。これまでセンスに頼っていた領域に「ロジック」が持ち込まれ、上司の質が問われるようになります。今後は事実ベースのフィードバックと、部下のセルフマネジメントを促すかかわり方が基本になります。

事実、この企業に限らず、人事評価にAIを活用している企業で、AIの評価をそのまま採用しているところは私の知る限りありません。最終的な評価は、必ず上長など人間が行うようにしましょう。

 

次の記事はこちらからご覧いただけます。
実は経営層こそ、AIに向き合うべき理由:「人事・労務」を変えるAI活用最前線【第6回】

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