“人とAIの融合”で、採用はどう変わる? :「人事・労務」を変えるAI活用最前線【第3回】
特集企画Date: 2026.05.29
(写真:Garun.Prdt/shutterstock)
構成:八色祐次
編集:プレジデント社
“人とAIの融合”で、採用はどう変わる?
連載第3回となる今回のテーマは、「採用×AI」です。学生にエントリーしてもらう段階から書類選考、面接、合否通知まで——大学の採用業務は、ステップごとにさまざまな作業が積み重なっています。そのどこをAIに任せ、どこを人が担うべきか。判断のポイントを、人事図書館の館長である吉田洋介氏に伺いました。
前回の記事はこちらからご覧いただけます。
「AI迷い人」にこそ知ってほしい、生成AI入門 :「人事・労務」を変えるAI活用最前線【第2回】
|
人事図書館 館長 吉田洋介
2007年立命館大学大学院政策科学研究科卒業。新卒で、リクルートマネジメントソリューションズに入社。
国内外500社以上の採用、人材開発、組織開発、人事制度等に関わり、支社長・事業責任者等を歴任。 2021年に独立し、株式会社Trustyyleを設立。 2024年4月に東京・人形町に1,000冊以上の人事関連書籍を備えた「人事図書館」をオープン。 |
どこまで人の手で担うべきか
採用活動は、大学の魅力を応募者に向けて発信するところから始まり、エントリー、書類選考、面接と段階を踏みながら進んでいきます。従来であれば、そのすべての業務を採用担当者が行っていました。それが、AIの発達によって、その一部を代替できるようになっています。
そこで問題になるのが、何をAIに任せて、どこを人間が担うべきかという判断です。
第1回でも少し触れましたが、書類選考からその合否通知、面接スケジュールの調整までは自動化が可能です。最近では、面接そのものをAIが行うケースも出始めています。
ただ、私の意見としては、「外部との接点がある業務は人間が行い、それ以外をAIに任せる」のがいいと感じています。
スカウトメールには「ひと手間」加える
具体例として、応募者を集める「スカウト機能」を考えてみましょう。採用したい人材に直接メールでアプローチし、面接へと誘引する便利な機能の一つです。
ただ、多くの人にスカウトメールを送る場合、1通ずつ文章を考えて書いていくのは楽ではありません。そこで、AIに文面のひな型を作成してもらえば、負荷はかなり軽減できます。
ただし、宛名だけ変えてひな型の文章をそのまま送るのは、おすすめできません。AIによって生成された文章であることは相手に伝わるもので、それを察した相手は、無機的な作業感のようなものを感じてしまう恐れがあるからです。また、期待と違うアウトプットが来るときは、指示があいまいである可能性があります。これは、部下への指示と同じです。
スカウトメールにAIを活用する場合でも、最後に採用担当者が応募者のことを思って一言添えたり、ひと手間を加えたりする。それが、現場で多く見られる工夫です。
|
【Before】
○○大学 △△様
突然のご連絡失礼いたします。 貴殿のご経歴を拝見し、当大学が募集する事務職員のポジションにご興味をお持ちいただけないかと思い、ご連絡いたしました。 ↓ 【After(ex.具体的な要素を盛り込む)】 ○○大学 △△様 突然のご連絡失礼いたします。 貴殿が前職で取り組まれた「学生支援システムの改修プロジェクト」について拝読し、その視点と進め方に大変興味を持ちました。 当大学でも今年度から学生サービスのDX化を進めており、ぜひ△△様のご経験をお聞かせいただきたく、ご連絡いたしました。 |
「AI面接」が浸透しない理由
面接そのものをAIが行う「AI面接」にも、利点はあります。時間に縛られることなく応募者が好きな時間に受けられること、人を相手にすると緊張する応募者にとって、AIのほうが気楽に受けられること。こうしたメリットは確かにあります。実際、最近では「AIとの面接の方が緊張しない」という学生も増えてきました。
しかし現状では、AIが面接官を務めることに対して、血の通っていない“冷たさ”のようなものや、機械に自分を判断されることへの抵抗感を抱く人がまだ多いように感じます。
そのため、面接日のスケジュール調整まではAIで自動化しているものの、面接そのものは人が対応している大学・企業が多いというのが実情です。
採用の目的は、“人を採る”こと。いかに「ここに入りたい」と動機づけできるかが重要になります。そう考えると、書類選考や面接などと業務を大括りにして、そのすべてをAIで自動化しようとするのは、適切ではありません。
業務を細分化して、人間が担う部分とAIに任せる部分を見極めること。AIを導入するときは、業務フローをAIが活きる形に変える(再構築)必要があります。これが、AIを上手に活用するコツといえます。

(写真:Zoey106/shutterstock))
AIが選考基準の公平さに寄与する側面も
業務を細分化してAIに任せる部分を考える、とはどういうことか。再度面接を例に説明しましょう。
「面接は人がしたほうがいい」と考える企業がまだ多いと話しましたが、そういった企業においてもAIに任せたほうがいい部分もあります。それが、選考基準を具体化する部分です。
面接は、一次、二次、最終のように複数回行うケースが多いでしょう。選考が進むごとに面接官も変わっていきます。応募者がどのような人物なのかを多角的に判断するには適した方法ですが、同時に、面接官によって選考基準にバラつきが生まれやすいというデメリットもあります。中には、「面接時に話が盛り上がったから」といった主観で合否を決めてしまう面接官もいるものです。
そこで、AIによって選考基準を具体化しておけば、このようなバラつきを抑えることができます。
採用活動の際には、「素直さ」「論理的思考力」「主体性」「協調性」など、求める人物像をある程度決めておくものです。ただ、「主体性のある人」がどのような人なのか、大学として求めている主体性とは噛み砕くとどういう人なのか——その判断を各面接官に任せてしまうと、バラつきが生じます。
そこで、自校で活躍している職員がどのような場面で、どういった主体性を発揮しているのか。「自校らしい主体性」とは何かをAIと壁打ちしていくことで、選考基準を具体化していくことが可能になります。
応募者をより深く理解するための活用法
選考基準の具体化以外にも、AIの活用方法はあります。
ある企業は、応募者の職務経歴書を匿名化しAIに分析させることで、求人ポジションとのマッチ度を算出できるようにしています。客観的な基準で応募者を評価するための方法の一つです。
ほかにも、面接のやりとりを文字起こししてAIに読み込ませ、応募書類の情報と統合することで、応募者をより深く理解する。1次面接、2次面接の情報を加え、最終的な意思決定の精度を高める——こうした使い方もあります。
ただ、AIでここまで分析するには専門知識も必要になります。まずは、選考基準の具体化からAIを活用してみてはいかがでしょうか。
前回までの記事はこちらからご覧いただけます。
なぜ、今私立大学等にAIが必要なのか?:「人事・労務」を変えるAI活用最前線【第1回】
「AI迷い人」にこそ知ってほしい、生成AI入門 :「人事・労務」を変えるAI活用最前線【第2回】
