「AI迷い人」にこそ知ってほしい、生成AI入門 :「人事・労務」を変えるAI活用最前線【第2回】
特集企画Date: 2026.05.22
(写真:pearlinheart/shutterstock)
構成:八色祐次
撮影:神出 暁
編集:プレジデント社
結局どれを選ぶべき?「AI迷い人」にこそ知ってほしい、生成AI入門
連載第2回となる今回のテーマは、「生成AIの基本」です。ChatGPT、Gemini、Claude——名前は聞いたことがあっても、「どれを選べばいいのか」「何ができるのか」がピンとこない方も多いのではないでしょうか。本記事では、人事図書館の館長である吉田洋介氏に、代表的なツールの特徴と選び方、そしてAI活用によって生まれる変化について伺いました。
前回の記事はこちらからご覧いただけます。
なぜ、今私立大学等にAIが必要なのか?:「人事・労務」を変えるAI活用最前線【第1回】
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人事図書館 館長 吉田洋介
2007年立命館大学大学院政策科学研究科卒業。新卒で、リクルートマネジメントソリューションズに入社。
国内外500社以上の採用、人材開発、組織開発、人事制度等に関わり、支社長・事業責任者等を歴任。 2021年に独立し、株式会社Trustyyleを設立。 2024年4月に東京・人形町に1,000冊以上の人事関連書籍を備えた「人事図書館」をオープン。 |
把握しておきたい主要ツール
人事・労務業務に生成AIを取り入れようと思ったとき、最初に検討すべきツールは「3+1」あります。代表的な3つが、OpenAIの「ChatGPT(チャットジーピーティー)」、Googleの「Gemini(ジェミニ)」、Anthropicの「Claude(クロード)」。そして「+1」が、Microsoftの「Copilot(コパイロット)」です。
「Copilot」は「Microsoft365」など同じMicrosoft製品との相互連携が強みで、Microsoft環境を中心に業務を進めている職場では、ほぼ一択といえる存在です。
ただし、文章作成や要約、検索、画像・動画解析、長文処理といった基本性能では、先の3ツールがやや先を行っています。そのため、「Microsoft環境ならCopilot」という前提のもとで、「+1」という位置づけにしています。
ChatGPT、Gemini、Claude――それぞれの得意分野
では、3つのうちのどれを選ぶべきか。
結論から言えば、基本性能に大きな差はありません。この3つのAIツールが上位で切磋琢磨しており、数カ月ごとにトップが入れ替わるような状況です。ここから紹介する違いは、あくまで些細なものと理解した上で読み進めてください。
まず、学内で「Google Workspace」や「Gmail」を使っているのであれば、親和性の高い「Gemini」が使いやすいでしょう。たとえば、Gmailの「返信の提案」機能を使えば、ビジネスメールのトーンに合わせた下書きを自動で生成してくれます。
そして、「ChatGPT」はリサーチや仮説検証に強いといわれており、企画書の作成、アイデア出しや壁打ちにも向いています。また、「Claude」が得意とするのは長文処理。契約書や論文の読解・要約、論理的な文章作成といった業務に向いています。

専門知識がなくてもシステムが構築できる時代に
ちなみに、昨今注目を集めているのが「Claude Code(クロードコード)」です。これは「Claude」を開発用に拡張したツールで、自然な言葉で指示を出すだけで、システム構築が可能です。
たとえば、「私立大学内で使う事務職員向けの目標管理システムをつくりたい」とか、「企業内で使われている目標管理システムの機能構成を参考にしてください」と入力するだけで、わずか数分で基本機能を備えたシステムが立ち上がります。あとは自学の事情に合わせて修正を加えていけば、数時間で「自学オリジナルの目標管理システム」が完成してしまいます。
ほんの数年前まで、システム開発といえば外部のベンダーに発注し、数カ月かけて要件定義から進めていくのが当たり前でした。それが、自分の机の上で数時間のうちに動くものができてしまう。AIがもたらした変化の大きさを、もっとも実感できる場面のひとつかもしれません。

人事図書館館長の吉田洋介氏
AI活用で期待できる、2つの成果
それでは、あらためてAIを使うことで何が変わるのか。それは、大きく2つあります。
1つ目は、「業務効率化」です。データ分析が瞬時にできるようになり、PowerPointのプレゼンシートも簡単に作成できるようになる。動画の生成も可能です。これまで専門家に依頼し、数日かけてつくっていたものが、ほんの数分で完成します。
2つ目は、「業務プロセスの再構築」です。一部をAIが担うことで、人間が行う業務プロセスが変わります。これは業務の時間が短くなる“時短”とは根本的に違うものです。
例として、採用活動を考えてみましょう。通常、採用は「エントリー情報の取りまとめ→書類選考→応募者への連絡→面接日の調整→面接→合格者の決定」というプロセスで進みます。このうち、面接日の調整までの業務は、ほぼAIで自動化が可能です。
判断基準となる情報をAIに指示しておけば、書類選考の合否に応じて、面接の日程調整メールや落選メールが自動で送信されます。日程調整も、アルバイトのシフト調整のようなもの。応募者に希望日時を入力してもらい、それを割り振るだけなので、AIにとって難しい作業ではありません。
人間がすべての応募書類に目を通すだけでも膨大な時間がかかりますが、AIに任せれば、人間が関わるのは面接以降だけになります。つまり、業務プロセスが根本から変わるのです。
AIを使いこなすための「たったひとつのコツ」
AIを上手に活用すれば、人事・労務業務も大きく効率化できるはずです。ただし、効果を出すにはコツがあります。それは、目的を明確にすることです。
AI活用に失敗するケースの多くは、「AIを使って何ができるか」から考え始めてしまっています。AIはあくまで、目的を実現するための道具。「AIを使うこと」が目的になってしまっては意味がありません。
まずは周りを見渡し、何が課題になっているのかを洗い出す。その中から、AIによって簡単に解決できそうなものを選び出しましょう。この手順さえ間違えなければ、高い確率でAIを効果的に活用できるはずです。
そして、まだAIを本格活用していない法人やその担当者は、まず一人“AI習熟者”をつくりましょう。“AI習熟者”は、幅広く業務に習熟している人や業務を推進できる方がよいでしょう。
その育成に、さほど時間は必要としません。詳しい人なら1週間ほどで完了します。大事なことはまず“一人”がAIを極めることと、責任者クラスがやること。そして、どの仕事を人間に残すのかを決められる人がやること。反対にチームやメンバーでやっても進みにくいです。習熟の方法は、本人の「やる気があればできる」レベルまで世間の環境はできています。
次回は、こうしたAI活用の中でも、多くの大学で関心が高い「採用業務」を取り上げます。書類選考から面接まで、どの工程をAIに任せ、どこを人間が担うべきか。実践的な切り分け方について、具体的にお伝えしていきます。
前回の記事はこちらからご覧いただけます。
なぜ、今私立大学等にAIが必要なのか?:「人事・労務」を変えるAI活用最前線【第1回】
