専門家に聞く!私立大学等と企業の継続雇用制度の取り扱い
復習講座Date: 2026.05.11
~退職金等に関する実態調査から~
私立大学退職金財団が実施する「退職金等に関する実態調査」では、退職金制度や人事制度等について、加入法人の実態を調査しています。今年度も9月から10月に実施する予定です。加入法人の皆さまにはご協力いただきますようよろしくお願いします。
本記事では、2025年度の調査項目のうち「定年年齢」「継続雇用制度」について、調査結果をご紹介します。また、両項目について、経営コンサルタントである株式会社タナベコンサルティングの藤田奈緒氏にコメントをいただきました。
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株式会社タナベコンサルティング HRコンサルティング事業部 エグゼクティブパートナー 藤田 奈緒 氏(ふじた・なお) 人事制度や教育制度の構築支援、企業内講師育成支援、セミナー講師・運営など、人材育成の現場 に幅広く携わる。階層別・テーマ別の教育カリキュラム策定から企業内講師育成・研修運用までを 支援し、中堅・中規模企業の人材育成内製化を実現した経験を多数持つ。人材育成(アカデミー) 研究会のサブリーダーを務め、「業績に直結する教育の効果的な運用」を研究している。 |
教員の定年は65歳が主流に──20年間の推移を振り返る
日本の定年制は、あらかじめ就業規則に定められた年齢に到達したことを理由に、労働者の意思にかかわらず雇用関係が終了する制度です。定年退職の日を本人の誕生日とするか、または年度末など年度単位で統一するかについては、法人ごとの就業規則の定めによります。
2006年に施行された「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」により、60歳未満の定年を設けることは認められていません。少子高齢化に伴う労働力不足への対応や、高齢者の生活の安定を目的としたこの法律では、事業主に対し、定年年齢の引き上げ(例:60歳→65歳)、継続雇用制度の導入(再雇用・勤務延長)、または定年制の廃止のいずれかにより、希望する従業員全員を65歳まで雇用する措置を講じることが義務づけられています。
定年年齢の推移(会員数の割合)

財団の調査では、65歳未満を定年年齢としている加入法人の割合について、2004年の調査開始以降、大きな変化は見られませんでした。こうした法人の多くが、定年年齢の引き上げや定年制の廃止ではなく、継続雇用制度を選択していることがわかります。
この調査結果を受けて、一般企業と比較して際立った傾向があるのか、株式会社タナベコンサルティングの藤田奈緒氏に聞きました。
「労政時報の調査※によると、一般企業の98.8%が定年制を導入しており、規模や業種によっても異なりますが、70%以上が定年年齢を60歳としています。これらと比較すると、財団加入法人の定年年齢は、十分に配慮された水準にあるといえるでしょう」
(以下、「 」はすべて藤田氏)
※出典:労政時報第4104号「退職金・年金制度の最新実態」。一般企業の数値は以下同様
継続雇用制度の導入割合は横ばいが続く
定年退職後の継続雇用制度の有無(会員数の割合)

教職員全員に対し「定年退職後の継続雇用制度」を設けている加入法人は、教員では376会員(64.1%)、職員では438会員(74.6%)でした。
一方、継続雇用後に退職金を支給していない会員は、教員300会員(51.1%)、職員366会員(62.4%)と過半数を占めています。定年年齢までの期間で退職金を計算し、継続雇用期間については別の処遇で対応している法人が多いことがわかります。
このほか、教職員全体に一律で適用するのではなく、実績に応じた個別契約で継続雇用する制度を持つ法人も若干ありました。なお、この項目は2012年度から継続して調査していますが、傾向に大きな変化はありません。
「一般企業でも継続雇用制度を選択するところが約90%に上ります。 継続雇用期間は退職金を支給しない、すなわち定年年齢の到達時点で一度退職金を支給したうえで再雇用する制度は従業員ごとに個別の雇用契約を柔軟に結べるため、多くの企業がこの方式を採用しています。
一方、定年年齢の引き上げについては、全員の定年を一律に引き上げた場合、すべての従業員が従来と同等のパフォーマンスを発揮できるかという懸念があります。
現在はあらゆる業種が人材不足ですし、とりわけ知識や経験が求められる職種では、定年にさしかかる年代の人材が重宝される傾向にあります。今後、継続雇用制度の導入や変更を検討する際には、待遇の設定次第で人材流出につながるリスクがある点に注意が必要です」
継続雇用の方法は「再雇用」が9割超
継続雇用制度の種類(会員数の割合)

加入法人の継続雇用制度の種類は、教職員ともに、定年で一度退職とした後に再び雇用する「再雇用制度」が大多数を占めました。教員では340会員(90.4%)、職員では408会員(93.2%)が採用しています。
なお、定年後も労働条件や役職を変更せずに雇用を継続する「勤務延長制度」や、勤務延長と再雇用の両制度を併用しているとの回答もありました。
「勤務延長制度は退職させずにそのまま雇用契約を延長する制度であるのに対し、再雇用制度は一度退職したうえで、給与額や勤務形態などの条件を改めて定めて再び雇用する制度です。
定年後の働き方に対する希望は人それぞれです。定年前と同様にフルタイムで働きたい人もいれば、勤務日数を減らしたい人もいます。こうした個人差に柔軟に対応できることから、一般企業でも約90%が再雇用制度を選択しています。
制度の内容は、企業によって異なりますが、いくつかのポイントがあります。本人の意向や期待値に応じて雇用条件を複数のパターンに分け、各人が選べるようにしている企業も多く見られます。職責を軽くすることと同時に、本人が受給する年金額を考慮して給与を下げるケースもあります。ただし、同一労働同一賃金の観点から、職務内容は変わらないにも関わらず、給与が著しく下がったり賞与や手当に不合理な差を設けたりすると、対象者のモチベーション低下を招いてしまうだけでなく、違法となる可能性もあるので注意が必要です」

定年65歳以上でも、約半数が継続雇用制度を整備
教員の定年年齢別の継続雇用制度(会員数の割合)

2021年に施行された改正高年齢者雇用安定法では、65歳までの雇用義務に加え、70歳までの就労機会の確保が努力義務とされています。
財団の調査では、教職員の定年年齢が65歳以上であっても、さらに継続雇用制度を設けて就労機会を確保している加入法人が約半数となっています。
「一般企業で高齢者の就業機会を手厚くしているのは、建設業や製造業など熟練した技術が重要となる中小企業に多い印象です。定年年齢を66歳以上に設定したうえで継続雇用制度も設けている学校法人は、単に高齢者の待遇が手厚いだけでなく、高い知見と専門性を持つ優秀な人材の確保に積極的に取り組んでいると考えられます」
高年齢者雇用安定法についての特集はこちらからご覧いただけます。
>> 働き方の多様化に応じた人事制度を -高年齢者雇用安定法改正への対応-
退職金制度の改善と充実のための調査・研究事業
退職金は、私立大学等の財政面においても、教職員一人ひとりの人生設計においても、重要な位置を占めています。賃金の後払い的性格と生活保障的性格を併せ持つ制度として、退職という節目における経済基盤の安定を支えるものです。所属する私立大学等がその役割を担い、当財団が退職資金の交付という形で支援しています。
私立大学退職金財団では、退職金等に関する実態調査を通じて私立学校全体の退職金制度の改善と充実に寄与し、「未来のために、私学とともに」歩むという使命を着実に果たしてまいります。
今後ともご協力を賜りますようよろしくお願いいたします。
(参考)私立大学の退職金制度の情報を収集する「退職金等に関する実態調査」について
財団は、学校法人が支給する退職金の適正な水準を確立するために必要な調査研究として、維持会員を対象に実態調査を実施しています。
調査項目は、教職員の定年年齢、退職金の算定方法・算定基礎額・支給率の基準や支給に必要な勤続年数のほか退職給与引当金など継続している項目による経年変化をみているものに加え、人事・給与制度等についてその時々の社会情勢や法制度改正を踏まえたタイムリーな内容を盛り込んでいます。また、経営者層が関心を持つと考えられる点として、退職金の加算制度、選択定年制度、早期退職優遇制度、非正規教職員への退職金の支給状況についてお伺いしました。
調査開始以来、毎年度全ての加入法人から回答を得ており、結果をまとめた調査報告書は、当財団のWebサイトに掲載し、公開しています。
22年間の退職金等に関する実態調査報告書はこちらからご覧いただけます。
>> 実態調査報告書
年度別の調査項目一覧



