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「人事・労務」を変えるAI活用最前線【第1回】(全6回)

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特集企画

Date: 2026.04.30

BILANC Online なぜ、今私立大学等にAIが必要なのか?

構成:八色祐次 
撮影:神出 暁 
編集:プレジデント社

なぜ、今私立大学等にAIが必要なのか?

近年、あらゆる業界で「生成AI」の波が押し寄せています。しかし、私立大学等ではイマイチ活用できていないという事務現場もあることでしょう。本連載では人事図書館の館長である吉田洋介氏に「AI×人事業務」の活用法を伺いました。第1回は、大学経営における「人事・労務」などの業務で特にAIが求められる理由をご紹介します。

人事図書館 館長 吉田洋介
2007年立命館大学大学院政策科学研究科卒業。新卒で、リクルートマネジメントソリューションズに入社。
国内外500社以上の採用、人材開発、組織開発、人事制度等に関わり、支社長・事業責任者等を歴任。
2021年に独立し、株式会社Trustyyleを設立。
2024年4月に東京・人形町に1,000冊以上の人事関連書籍を備えた「人事図書館」をオープン。

DX導入への足かせとは?

「AIという単語を目に、耳にしたとき、あなたはどのようなイメージを持ちますか?便利なもの、最近気になっているもの、よくわからないもの、怖いもの……。AIに対するイメージや距離感は人それぞれでしょう。ただ、「興味はあるけれどよくわからないし、覚えるのも難しそう」といったように、一定以上の距離をとっている人が多い印象を受けます。その結果、新しい技術をキャッチアップすることに積極的な人やそうでない人、組織の間で差が生まれてしまっているのが現状です。

でも、このようなDX(デジタルトランスフォーメーション。デジタル技術を使って、仕事のやり方やビジネスそのものをより良く変えていくこと)が進まない理由は、パソコンやインターネットなど、過去の技術革新が起こるたびに繰り返されてきたことでもあります。時間が経った現在、パソコンやインターネットを使わない人は少数派になっているように、AIもそう遠くない日に“活用するのが当たり前”になっていくのではないでしょうか。ただ、そうなってから使い始めるのでは、早くから積極的に取り組んでいた層との差を埋めるのは容易なことではないでしょう。

とはいえ、職種や組織によって、新しい技術のキャッチアップが早いところ、遅くなりがちなところというものはあります。特に、公的な組織はその傾向が強いでしょう。理由は、“誰も取りこぼさない”ことが大切であるため、現状を変えたことで誰かが不利益を被ってしまうことに対して非常に慎重にならざるを得ないからです。

多少の不利益には目をつむる、進んでいくことはできますが、簡単ではありません。新しい技術には、必ず一定数嫌悪感を持つ人がいます。かつての「インターネットで調べず辞書や関連書籍を確認しろ」という価値観はかなり薄まってきたとは思いますが、効率だけを優先すると反発を招き、物事が円滑に進まないこともあります。

しかし、こうした周囲のケアへ過度にリソースを割けば、作業負荷が増大し、本来の目的達成が難しくなることもあるのではないのでしょうか。

変更によって誰かがデメリットを受けることを極力避けるために、以前の運用を保持したまま新たな運用を構築したりしてしまう。ある団体の例では、電話での受付からはじまりファクス、メール、LINEと受付窓口を広げていった結果、コストが莫大なものになってしまった。そう苦しんだ組織も見てきました。このように、誰も切り捨てない、迷惑をかけないといった考え方が足かせになり、DXが遅れがちになるというケースがまま見られます。私立大学等をはじめとした教育機関もその一つでしょう。

BILANC Online なぜ、今私立大学等にAIが必要なのか?
人事図書館館長の吉田洋介氏

人事業務こそ、AIとの相性が抜群なワケ

ただ、人口減少が進み大学経営の厳しさが増していく中で、学生や教職員のベネフィットをより高めていくには、時間の使い方や業務内容を組み替えていく必要があります。無駄を削減したり、良いところをより一層伸ばしていったりすることで、学生から選んでもらえる学校、教職員の仕事に対するモチベーションが上がる学校というものを目指していくことが求められていくのではないでしょうか。

それを実現するためのツールとして、AIは有用だといえるでしょう。たとえば、ある大学では学校の魅力をアピールするためにAIを活用しています。
学部や学科、学べる分野といった基本的な情報から大学の歴史、これまで行ってきた行事、学生の卒業後の進路など大学に関するあらゆる情報をAIに入力して“自校ならではの魅力”をさまざまな角度から提案してもらっているのです。
理系の学生向けにアプローチする際の要点や、文系学生が魅力的に感じるアピール案、「開かれた先進的な技術やビジネスに貢献していく」、「学術における貢献」など大学が掲げているビジョンに即したアピール方法など、AIに方向性を指示することで今まで着目していなかった角度からのアイデアを提示してもらい、効果的なPRをすることができるようになったという声があります。

同様の作業を担当者自ら行おうとすれば、大学に関する情報に目を通すだけで数週間かかる可能性があるでしょう。加えて、思いもよらなかった角度からのアイデアが出てくることはほぼありません。外部のPR会社に依頼すれば、多額のコストがかかってしまう。それが、AIならツールの利用料だけで、スピーディーにアイデアが出てくるだけでなく、その内容の吟味やブラッシュアップにも活用できます。企画の段階でつまづくことも減るでしょうし、ここで削減できた時間を、アイデアを実現するために使うことができるわけです。

実は、“人事・労務”は多種多様にある業務の中でもAIとの相性がいいものの一つ。たとえば、就業規則に関する問い合わせ対応をするために取り掛かっていた仕事を中断しなければならなかったり、同じような問い合わせに何度も対応しなければならなかったりした経験はありませんか。
「就業規則のどこそこに書いてあります」と伝えても、自分のケースがその項目に当てはまっているのか判断できず、結局人事に聞きにくる人が少なくないのではないでしょうか。こういったケースも、AIに就業規則など大学で定めた規則やルールを入力しておくことでAIが答えてくれます。最近のAIは進歩が目覚ましく、人に話しかけるような自然な日本語で質問しても意図を理解して回答してくれます。質問に対する直接的な答えだけでなく、その質問をした人は、こんなことも知りたがっているかもしれないと先回りして補足情報も示してくれたりするのです。

しかしAIだと、「温かみがない」「人と直接話したい」というような不満が出ることがあります。一般企業だとコスト削減を大義名分に導入を進められますが、公的要素のある機関ではステークホルダーへの配慮から導入に慎重な判断が求められ、停滞する傾向にあります。
しかし、「対外的な接点があるものはハードルが高い」というのは思い込みで、「実際にはそこまで求めている人は全体の1-2%だった」という場合もあるので、本当に雇用維持や対外的な関係性に影響するのか確かめながら、課題解決に向けて具体的に舵を切るべきではないでしょうか。

就業規則の問い合わせ対応というのは、ほんの一例にすぎません。評価などの場合では最終的なチェック・決断は人の仕事ということも大事なポイントです。
そこで、全6回にわたって、人事・労務×AI活用というテーマで実践的なAI活用方法や事例を紹介していきたいと思います。
 

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