広島経済大学 興動館教育プログラム(後編)
未来を拓く学校人Date: 2026.04.06
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多様な学生の可能性を育てる教育 [第1回](後編)
学年の垣根を越えた“実践”が、大きな自信に!

2013年に実施したカンボジア国際交流プロジェクトの様子
※インタビュイーの役職等は取材時のものです。
構成:江頭紀子
撮影:梅田雄一
編集:プレジデント社
「 前編 」では、広島経済大学が定義する「人間力」や興動館科目の仕組みについて伺いました。後編では、約750人の学生が自発的に取り組む「興動館プロジェクト」の活動内容と、教育的成果の可視化という今後の挑戦について迫ります。
~ 企画から予算立案まで。20年続くプロジェクトも
「興動館プロジェクト」は、チームで社会課題の解決に取り組む実践型プログラム。単位にはならないものの、現在約750人が参加しています。
学生たちは主体的に社会課題の整理・選定からはじめ、目的や目標を設定。活動内容を事業計画に落とし込み、予算を含む申請書を作成します。3月の学内審査会で承認されると、大学から予算が支給され、4月から 12 月まで活動します。
興動館課長の柏谷紘計さんは、次のように説明します。
「企業におけるプロジェクトと異なるのは、解散の期限を設けていないこと。多くのプロジェクトは先輩から後輩へ引き継がれ、少しずつ成功を積み上げながらPDCAサイクルを回しています。活動を通じて学生たちに自信を持ってもらえれば嬉しいですね」
本プロジェクトには、大学主催のものに加え、参加人数に応じて「入門」「準公認」「公認B」「公認A」の4種類があります。大学からの支援金額も、最高5万円から最高1,000万円までと、区分によって幅があるのが特徴です。
「入門は、3人以上集まれば1年間いつでも申請できます。挑戦のハードルを下げるため、後から追加した仕組みで、賛同者を集めて人数が増えたら公認AやBに昇格することも可能です。また1年次には、『興動人入門ゼミ』を必修科目にし、模擬的にプロジェクトの企画体験を用意しています。これは少人数のグループで社会課題を見つけてプロジェクトを考案し、最終授業でその成果を発表するもの。実際に立ち上げたいという学生は、そのまま『入門』プロジェクトとして申請することができます」(柏谷さん)
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広島経済大学 興動館課長 柏谷 紘計さん 先輩から後輩へ。 積み上がった“成功”が 学生の自走する力に |
現在は14プロジェクトが活動しており、中には20 年間継続しているものもあるそう。
一例が「インドネシア国際貢献プロジェクト」です。20年前はジャワ島中部地震被害への復興支援活動から始まりましたが、今は現地の伝統工芸品の布を用いた商品開発・販売へと発展。現地の人たちが、自立的に回していけるような活動にシフトチェンジしつつあります。
さらにユニークなのは、“興動館”というプロジェクトの活動拠点があること。シャワーなども備わり、申請すれば24時間使用可能だと石田さんは言います。
「地域の方が訪れやすく、また学生が社会と接点を持ちやすい場所にとの思いから、興動館はキャンパス内ではなく、あえて『学校外』に設置しました」
参加学生へのフォローとして、プロジェクトリーダーを対象に、毎月1回情報共有をしたり、合宿形式のチームマネジメント研修を行ったりしているのも、活動が活性化するポイントだと石田さん。 「悩みを共有することで横のつながりが生まれ、モチベーションも向上します。学年問わず多彩なメンバーで語り合う経験が、その後の思考や行動につながっていくと思うので、プロジェクトの目的達成以上に、人間力開発プログラムの意義は大きいと感じています」
~ 成果の“見える化”が課題。成長を可視化できる仕組みを
一方で、興動館教育プログラムには課題もあります。
「主体性や企画力、行動力が伸びている実感はありますが、それをどう評価し、可視化するかが課題です」と濵田さん。
現在、興動館プロジェクトでは、活動開始時と修了時に自身の学びや気づきを記録する「プログレスシート」を入力し、どの「人間力」が獲得できたかをチームで振り返っているそう。興動館科目は、プログレスシートから「人間力チェックシート」へと評価を刷新。初回の授業で獲得したい人間力を設定し、中間、最終と2回の振り返りと学生同士の共有を行うことで、自身の強みや今後伸ばしていきたい力を理解していく評価方法です。
「興動館科目は評価が非常に高い一方、履修者をさらに増やすことも課題です。各科目のノウハウを共有し、内容をブラッシュアップしていきたいですね」(濵田さん)
柏谷さんは、プロジェクトにおける課題として、目的設定の甘さを挙げます。
「イベント開催がゴールにならないよう、常に目的を意識して活動することを伝えています。目的を設定するためには、まず社会にどのような課題があるのか、メンバー全員で深く掘り下げて考えることが重要だと思います」
石田さんは、今後の方向性をこう話します。
「質の向上と、学生へのアプローチ。この2点が今後の大きなテーマです。就職活動の早期化なども踏まえ、学生がPDCAサイクルを意識しながら参加しやすいプロジェクト年間スケジュールの見直しや、科目の魅力を伝える機会を増やすことで履修の促進を図っていきたいです。これまでもプログラムの改革・改善を重ねてきましたが、今後も止まらず、高校生向けの広報にもより一層力を入れていきたいと思っています」
卒業後、地域の子どもたちを見守る活動に携わっていた学生が警察官になるなど、プロジェクトに関連したキャリアを歩む学生もいます。どの道に進んでも、ここで培った「人間力」は活かされていくことでしょう。
前編はこちら
○ 「ゼロから立ち上げる」力を培い、未来を拓く ~広島経済大学・興動館教育プログラム前編~
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