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私立大学等の今を聞く「変革期にあるべき教職員の姿」

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日本の高等教育を取り巻く環境は、常にめまぐるしく変貌しております。
そこで今回、私学の高等教育機関を支える私学団体の皆様に、教職員の能力開発などの研修制度をはじめとしたSD(スタッフ・ディベロップメント)について話し合っていただきました。

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写真左から
・ 日本私立大学協会 事務局次長 岡田 誠氏
・ 日本私立大学連盟 教学支援課長 相坂 太郎氏
・ 日本私立高等専門学校協会 日本私立大学協会高専担当 佐藤 恵子氏
・ 日本私立短期大学協会 事業課長 中澤 美惠氏
・ (司会)私立大学退職金財団 主査 德田 隆信


德田(私立大学退職金財団) 本日はお集まりくださり、ありがとうございます。まずは設立年順に各団体のご紹介をお願いします。

岡田(日本私立大学協会) 日本私立大学協会が発足したのは1946(昭和21)年です。背景には、「平和で民主的・文化的な国家を建設するためには、自由と創意工夫を本領とする私立大学が原動力にならなくてはならない」という決意がありました。現在でも私立大学の70%近くが加盟し、全国に7つの支部・連絡協議会を設け、地域ごとの課題や要望をまとめながら、全国組織として活動しています。

中澤(日本私立短期大学協会) 日本私立短期大学協会は1950(昭和25)年、短期大学制度の発足と同時に設立されました。各短期大学の特色を保ちながら、会員相互の協力によって自主性と公共性を高め、健全な発展に寄与することを活動目的とし、現在、学生募集停止校を除くすべての私立短期大学が加盟しています。

相坂(日本私立大学連盟) 1951(昭和26)年、日本私立大学協会から独立してできたのが日本私立大学連盟です。 発足時、加盟校は24校でしたが、その後数を増やし、現在では日本の私立大学の約20%が加盟するまでになりました。各校の「建学の精神」を尊重し、それぞれの独自性と多様性を保証しながら、未来に貢献する人材育成の基盤強化に努めています。

佐藤(日本私立高等専門学校協会) 実践的・創造的技術者の養成を行う高等専門学校は全国に57校。そのうち私立は3校です。この高専固有の共通課題に対応するのが、1962(昭和37)年設立の日本私立高等専門学校協会です。

~ 中央との格差を埋めるには

德田 18歳人口が減少する2018年を迎えましたが、加盟校の学校経営や活動の状況をお聞かせください。

相坂 学部・学科を新設しても、志願者増に結びつくのは最初の数年だけで、厳しい経営状況は変わらない大学もあると聞きます。当連盟の加盟法人に限らず、法人全体の健全な経営を考える中で、他の法人との合併、あるいは4年制大学の学生募集を停止・閉校という最終的な選択肢も視野に検討される学校法人もあると聞いています。

岡田 当協会の加盟校も同じく、学生募集に苦心している状況です。特に、東京をはじめ大都市への人口集中等もあり、地方の中小規模大学では、社会構造的な問題としてより厳しい状況となっています。そこで各大学では、地元地方都市の活性化や発展に尽力すべく、地域のニーズに沿った有為な人材を養成するため、教育・研究の充実や財政力強化に取り組みつつ、大学改革を推進しているところです。

中澤 短期大学は修業年限が短く、学生の経済的負担が少ないことが特徴の一つです。地方の中小都市にも多く設置され、その地域の要請に応じた人材育成を通し地方創生に大きな役割を果たしています。それだけに、中央との格差拡大で地方が元気を失うと、短大にも影響がおよび、学校運営という点では厳しいものがあります。
佐藤 私どもの組織は3校で構成されています。昭和30~40年代には多くの私立高専で、建学の精神に基づくユニークな教育を行い、専門性の高い中堅技術者を世に送り出してきました。しかし、私立高専の運営は構造的に財源確保の点で厳しいものがあり、昭和50年代以降、大学に移行するところが増え、現在に至っています。

~ 研修で得る人脈こそ財産

德田 大学、短大、高専ともに、大きな変革期にあるということですね。こうした状況で求められるのが、組織の未来を担う人材の育成かと思われますが、先ほどは私立大学連盟の相坂さんから「人材育成の基盤強化に努めている」というお話がありました。具体的にはどのようなことでしょうか

bilanc15特集記事 相坂 私たちが人材育成で掲げる目標は「次代を担うアドミニストレーター養成」で、対象者別に大きく分けて3タイプの研修を行っています。
1つがアドミニストレーター(大学経営に関わる幅広い知識を備え、実践するプロフェッショナル)の養成を目的とした4研修。
課題発見・解決能力、プレゼンテーション能力、企画力、実践力などを養うトレーニングの場として、個々の大学のみならず、日本の高等教育全体に目を向けた人材育成をめざしています。
2つ目が基盤能力養成を目的とした3研修。探索学習能力や、PDCAサイクルの構築手法・思考法などを修得させ、大学アドミニストレーターに必要な基盤的能力を身につけます。
3つ目が管理職向けの1研修で、管理職に必要なマネジメント能力や、部下育成・メンタルヘルス管理などに関する基礎知識・技能の修得と向上を目標にしています。

德田 反響はいかがですか?

相坂 課題図書、レポート等、盛り沢山でハードだが、大変勉強になるという感想をいただいています。また、研修を通じて得た人的ネットワークが何 よりの宝物であるとも聞いております。

德田 ネットワークづくりのコツは?

相坂 夜の懇親会を「全員参加」としています。地方開催時には、「久しぶりに故郷に帰ったのだし、昔の同級生と一杯やりたい」と思う参加者もいるかもしれませんが、夜の時間も含めて「研修」と捉えているので、「そこは我慢してください」とお願いしています。

德田 それは面白い手法ですね。私立大学協会ではどうでしょうか?

bilanc15特集記事 岡田 年に一度、2泊3日程度の宿泊型研修会を実施しています。具体的には「学生生活指導主務者研修会」をはじめとして、事務局長、大学教務、大学経理、就職の5つ。
特徴は、加盟大学から推薦・派遣された約20名の委員が企画・運営している点です。なかでも、少人数に分かれて行う班別研修では、大学個別の課題に対して助言や提案が出され、他大学の事例から自大学の長所・短所を客観的に認識できる効果を得られています。研修会後も連絡を取り合い、勉強会を定期的に開催するというネットワークが生まれることもあります。

~ 情報共有の場としても有効

德田 実務者のレベルアップになっているのですね。一方、学校運営という観点での研修はいかがですか?

岡田 毎年開催する理事長や学長を対象にした協議会が、「1日開催の研修会」という位置づけになっています。また、時局課題に応じたテーマによる協議会も開催しており、たとえば2013(平成25)年には改正労働契約法に関する協議会を行うなど、加盟大学への情報提供などに努めています。

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中澤 短大協会でも、入試広報、就職、教務、経理、学生生活の5つの研修会を実施しています。
業務に就いて間もない教職員の参加が比較的多く、基礎的な業務内容の理解とスキルアップにつながっています。特に1グループ20人以下の分科会では、参加者同士で密な意見交換や課題の共有が行われています。

岡田 国の政策等の情報を共有する全体研修も重要ですし、各大学固有の話や参加者同士で会話ができる班別研修も大事ですね。

中澤 私立短期大学には専門職養成学科が多く設置されています。そこで例えば、就職担当者の研修では、企業の採用ルールとは異なる幼稚園教諭や保育士の就職に特化したグループを設けることで、参加者同士がそれぞれ抱えている課題、強み弱み等を共有し、積極的に情報交換を行っています。それぞれの参加大学に適した方策を探る手がかりを得ることができると思います。

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佐藤 私たちは学生主事、教務主事、進路指導主事など、担当別に直面する課題解決のための研修会を行っています。
研修会では各高専から検討課題をいただき、当日は発表と意見交換を行います。これにより各高専の課題解決の一助になることと、情報共有が進められることを目的としています。

德田 担当別の研修会では、具体的な提案が生まれそうですね。

佐藤 国際交流等の課題など、参加者が聞いてみたい内容を共有、確認できます。やはり参加者同士でネットワークができるのは、課題解決に大いに役立つと思います。

~ 大学のSD元年を迎えて

德田 今後、人材育成の重要性はますます高まるのでしょうか。

相坂 昨年、大学はSD義務化元年を迎えました。私たちはかねてより、SDの重要性を訴えてきましたが、今後、大学経営の一翼を職員が担うのは明白です。もっと言えば、プロフェッショナル集団としての大学職員の力量によって、その大学の未来が左右される時代となってきています。職員の人材育成は一朝一夕にはできませんので、待ったなしでの着手が求められています。

岡田 多くの大学を拝見して思うのは、コミュニケーションが活発な大学ほど、改革が進んでいる傾向にあるということです。理事会や教員組織、職員組織が一体となって「大学の未来」を議論し、建学の精神を実現する仲間、同志として、それぞれの役割を果たしていることが大事であると考えています。私どもとしては、大学の現状と将来像を共に考究する契機となるような研修の設計・展開が喫緊の今日的課題と思います。

中澤 小規模校が多い短期大学では、教職員数も限られており、一人ひとりの力がより重要になります。外部の研修に参加することは、教職員の意識改革だけでなく、学内の組織力向上にもつながると思います。積極的に研修会に参加できる環境を整えることはとても大切なことではないでしょうか。

佐藤 最近は、総会と同日開催し、国の文教政策の動向も文部科学省から直に聞く機会を設けています。100%に近い就職率の高専ですが、教職員一体の運営を目指す高専には、教職員の質の向上に必要不可欠な場と考えています。

德田 私どもの広報誌「BILANC」では、「未来を拓く学校人」として、活躍している職員をご紹介しております。これに関連して、今回は職員の能力開発、研修の重要性について、お話を伺いました。また、本日ご参加いただいた皆様から「私学振興を目的としている私学団体の担当者が一堂に会し、研修制度等について座談できたことは、新鮮で有意義だった」というご感想もいただきましたので、各団体の活動や私学の課題等については、またお話をいただける機会を設けられたら幸いです。本日はありがとうございました。