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嫌われずに人を動かす最初のひと言、締めのひと言

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部下に仕事を任せるとき、「上から目線」が過ぎると相手のモチベーションをそいでしまうし、かといって遠慮がちに頼んでも、後回しにされるだけ......。指示内容も明確でないと揚げ足を取られかねないし、何より部下に嫌われないか心配になります。「やる気」になって仕事に取り組んでもらうためには、どうしたらいいのでしょうか?相手を前向きにさせる、ちょっとしたお願いのコツを伝授してもらいましょう。

構成:八色祐次 撮影:石橋素幸 編集:プレジデント社

「一緒にやろう」「困ったときは相談してね」
というアプローチが人を動かす最短ルート

BILANC14「会話術」髙城先生 ㈱セレブレイン代表取締役社長
髙城 幸司氏(たかぎ・こうじ)
同志社大学卒業後リクルートに入社。通信・ネット関連の営業で6年連続トップセールスを達成。独立・起業情報誌『アントレ』創刊にも携わる一方で、全国の行政機関・大学で「創業支援の経団連起業フォーラム」の委員を務める。2005年より人材コンサルティング企業の㈱セレブレインに経営参加。著書に『無茶振りの技術』『入社5年目から差がつく「優秀社員」の法則』(ともに日本経済新聞出版社)など

~"社内は身内"という考えがすれ違いのもと

仕事上のお客様や協力会社の人など、社外の人とコミュニケーションをとるときは、ほとんどの人が気を遣っているはずです。では、社内の人に対してはいかがですか。「身内だから」と、ぞんざいになっていませんか。あくまでも私の感覚ですが、社外の人に接するときと同じくらい、言葉遣いに気をつけている人は、それほど多くないという印象です。
しかし、それは大きな勘違いです。社内の人は家族ではありません。社外の人と同じく「ソト」の人なのです。「ソトにいながら、比較的ウチに近い」といえば、より正確でしょうか。まずこのことをしっかりと認識してください。コミュニケーションをとるときの心構えが変わるはずです。

BILANC14「会話術」髙城先生図表

次に理解すべきは、「自分の言いたいことは簡単に伝わらない」という現実。「アレ、どうなってるの?」と聞いても、何の件について知りたいのか、相手には伝わりません。主語や目的語は明確に伝えるべきです。最近はメールによるコミュニケーションが増え、短い文章で意図を簡潔に伝えるよう訓練されています。だからといって、相手に「前後の文脈や言葉の端々から、いわんとしていることをくみ取れ」と求めるのは酷です。
また、人によって価値観が異なることも忘れてはいけません。「適当な時間に帰っていいよ」と言われたとき、あなたは何時に帰ろうと判断しますか? 「30分後」と考える人もいれば、「2時間後」だったり、なかには「残業はしないで明日やればOK」と受け取る人がいても不思議ではありません。同じ職場にいても、わかってもらえるとは限らないのです。
ここまでが前提として理解しておくべきことです。では、次から人を動かすコミュニケーションについて実践的な話をしましょう。

~相手に興味を持てば会話はうまくいく

社外の人と会話するときは、アイスブレイクから始めると思います。これを社内の人と接する際も実践すべきです。なぜなら、ソトの人は、基本的にあなたに興味などないからです。気持ちよく動いてもらうには、まず、話を聞く態勢にさせること。そのため、「私はあなたに興味を持っているんですよ」と伝えることです。この作業がアイスブレイクだと考えてください。
気をつけたいのは、話題の選び方。たとえば女性に対して「今日の服、似合っているね」というのは考えものです。「昨日は似合っていなかったのか」と思われるかもしれませんし、実は朝寝坊して目についた服を着てきただけで、本人は納得いっていない場合だって考えられます。「◯◯さんと喧嘩したんだって?」など、嫌なことを蒸し返す話題も避けるべきですし、「目がきれいだね」など容姿に言及するとセクハラになります。
アイスブレイクの話題は、当たり障りのない範囲で、お互いが自分ごとと思えるものを選びましょう。趣味のこと、食事のこと、興味関心事など、日頃から共通の話題を見つけておくといいでしょう。それほど接点がない場合は、「○○さんの部署は最近、活気があるね」など、仕事内容に触れるのが無難かもしれません。

~相手に「やります」と言わせる言い方

相手を動かしたいとき、肝心なのは締めの言葉ですが、そこに至る会話でも気をつけるべきことがあります。それは、「相手に仲間意識を持たせる」ということです。
人に何かを頼むとき、「やっといて、お願いね」などとボールを投げるだけの人がいますが、言われたほうは、「何で私が......」と、心のどこかで釈然としないものを感じてしまうものです。そこで、「一緒に仕事をしたい」「○○さんの力が欲しい」など、結論を言うまでに「私はあなたに近づきたいのだ」という意思を伝え、一体感を醸成するのです。会話中、「2人で」「我々で」「この組織で」など、「I」ではなく「We」表現を使い、「私たちは仲間だ」という意識を持たせておくと効果的です。
ここまで準備してからコミットメントを取ります。相手が自ら「この件については私がやります」と言うよう、その気にさせるのです。「君のためになる」「君が最適だ」「君なら成果が出せる」など、その気にさせるセリフは何でもかまいません。そのうえで、誰がやるべきなのかを聞くといいでしょう。重要なのは「やるの? やらないの?」といった二者択一(クローズド・クエスチョン)ではなく、「誰がやるのがいいと思う?」といった自由回答の質問(オープン・クエスチョン)を投げて、「私がやる」と言わせることです。すでに本人はやる気になっていますから、初めから選択肢はかなり限定されています。いわば、限りなく閉じられたオープン・クエスチョンというわけです。
コミットメントを取れたら、こう締めの言葉を投げかけましょう。「何かあったら、いつでも言ってくれ。力になるから」と。言わんとしているところは、「やってね」と相手にボールを投げているだけなのですが、「いつでも相談して」と言うことで一体感を醸成しています。このため相手は「この人のためにも頑張ろう」と、前向きに動いてくれることでしょう。

BILANC14「会話術」髙城先生図表


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